お絵描き
どんな景色がすきなのか。そう聞かれても分かんないけど、いろんな景色を見せてくれたの。
「この辺のきれいな景色はこのくらいかな。どれが良い?」
「お花畑」
「なら、それでいこうか。次の集まりの時までに、花畑を描いて。自分で景色を見なくても描けるようになっておいて。それと、いろんな音楽を聴いて。見なくても、聴かなくても、すぐに浮かぶ。それが、魔法式の次に覚える事だよ。魔法式一つだと限界があるからね」
って、宿題?を出されて、今日はお別れになったの。エレも、お外寒いから帰れってゼロが。
別れるのは別れるので寂しいけど、また会えるから我慢なの。
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お花畑の絵ってむずかしい。遠いお花と近いお花を描き分けるのとか、色とかも全部むずかしい。
「……エレシェフィール、今、目を閉じて思い浮かんだものを何も考えずに描いてみろ」
「ふにゅ」
目を閉じて、浮かぶのは……
と、とりあえず描くの。
「そういえば、今度の集まりの話なんだが、ドレス着てくれるよな?」
「やなの」
「着ろ……エレシェフィールの、綺麗な姿を見たい。フォルもそう言ってた」
「着るの」
ドレスは動きにくくて苦手だけど、そういう事なら着るの。ついでに、髪もきれいにしておくの。お化粧はできないから、そのまんまだけど。
「これがエレシェフィールが思い浮かんだものか?」
「みちゃだめなの!」
フォルが思い浮かんだなんて、恥ずかしいから、誰にも見せられないの。なのに、ゼロはまじまじ見てるの。
「……なんで花畑描いた時下手なのに、これはこんなに上手いんだよ。若干妄想入ってるが、そのまんまなんだよ。花畑は、花と分かんねぇのに。つぅか、花畑で花描けてねぇのに、なんでこれだと上手いんだよ」
「……お花とフォルなの」
上手いって言われたのが嬉しくて、恥ずかしいがちょっと消えたの。
「エレシェフィール、花畑にもう一度行こう」
前に魔力を視る時に行ったっきりなの。お花畑すきだから、行けるのは嬉しい。
だから、喜んで行くの。
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お花畑でお花畑を描いていると、上手に描けたって感じがするの。
ゼロも、上手いって言ってくれる。
ここでいっぱい描いて、見なくても描けるようになるの。
「エレシェフィール、そろそろ昼。せっかく弁当用意したんだ。ここで昼にしよう」
休憩なの。腕が疲れてきていたから、ちょうど良いの。
「エレシェフィール、明日は俺、一日一緒にいれない。りゅりゅに面倒見てもらえ」
「ふみゅ。分かったの。大人しくしてる」
「ああ。そうしてくれ」
ゼロがお弁当の準備をしながら、お話しするの。
今度集まりがあるって言っていたから、それで忙しいんだと思う。エレは、ゼロがいない時は、ゼロに心配かけないように、大人しくしているの。
「今日は、エレシェフィールが好きなものを多めにしたんだ」
「ありがと。嬉しい」
ゼロは、エレのすきなものをいっぱい知ってるの。だから、エレのすきなものいっぱいにしてくれる。
「……フォルが、休みは甘いものと紅茶だって」
「ふみゅふみゅ。なら、今度来た時はそうするの。ゼロ、紅茶の淹れ方教えて。自分で淹れるから」
「良いけど、あいつがお前にやらせる未来が見えねぇんだが。エレシェフィールがやれば火傷するかもとか言って、触らせてすらくれなさそう」
ゼロはフォルと仲良しだから、ゼロがそう言うって事は、高確率でどうなるって事だと思うの。どうしたら、エレにやらせてもらえるんだろう。
エレがしっかりしているところをちゃんと見せれば、フォルも安心して任せてくれるのかな。
エレが自分でお料理作って持っていけば、少しは安心してくれるかな。
「ゼロ、お料理教えて」
「……簡単なのだったら。明日は無理だが、明後日なら教えられる」
「ふみゅ。ありがと」
ゼロに教えてもらえば、成功間違いなしなの。ゼロはお料理得意だから。いつも、作ってくれるから。
「フォルを喜ばせるの。良い休憩をあげるの」
「頑張れー。それより、休憩終わったら、一枚描いて帰るぞ」
「ふみゅ。明日は、何も見ずに描く練習して大人しくしておくの」
「ほどほどにしろよ」
お話ししながら、お昼の休憩を楽しむ。お花畑っていう、きれいな場所だからか、いつも以上にお話が捗るの。
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お昼の休憩が終わって、残り一枚を描けた。それで帰った。とっても上手に描けたの。今までの中で、一番上手な気がする。フォルの絵を除いてだけど。
「これはとっても上手なの」
「そうだな。一日でこれって。本当に、見ていれば上手いよな」
褒められたの。でも、見ないで描くのは描けるかちょっと不安なの。
「俺、夕飯作ってくる。エレシェフィールの好きなもので」
「ありがとなの」
ゼロがいない間にりゅりゅにお話しするの。
「りゅりゅ」
「なんでしょう?」
「暇なの。明日一日面倒見るの」
「りゅりゅがエレシェフィール様の面倒を見るって事ですか?」
「ふみゅ。そうなの。だから、よろしくなの」
「分かりました。ちなみに、最近は、フォーリレアシェルス様とどうなんですか?」
ふぇ⁉︎どうして急にこんな話題振るの?
どうって、どうなんだろう。魔法教わってる?それで良いのかな?
「……魔法教わってるの」
「それだけですか?もっと他に何かないんですか?」
何かって、何を期待してるんだろう。これ以外に何かなんてないと思うんだけど。
「なら、その絵はなんなんですか?大事そうに額縁に入れて」
「ふぇ⁉︎こ、これは、エレが上手に描けたから記念になの!深い意味なんてないの!ほ、本当だよ?嘘じゃないの」
一番上手に描けたフォルの絵を額縁に入れてこっそり飾ろうとしてたの。バレた。
ちょっと、毎日見れたら、寂しくならないかなとか思ったけど、それ以上は、本当にないの。
「りゅりゅ、これは内緒なの。ゼロにも言っちゃだめなの」
「分かりましたー。誰にも言いませーん」
「ふみゅ。りゅりゅ、暇だから、りゅりゅの事教えて」
エレは、りゅりゅのご主人様だけど、りゅりゅの事は、あんまり知らないの。
りゅりゅは、普段から、自分の事はお話してくれないから。エレが聞かないからっていうのもあるんだと思うけど。
「りゅりゅは、エレシェフィール様と世界様によって生み出された、小型龍です。りゅりゅのような存在を生み出す事は、愛姫のお力の一つです。王達との親交を深めれば、愛が溜まって、新しい小型龍が生まれるです」
「それは、愛姫の役目でもあるの?」
「そうです。愛姫の役割の一つです。ですが、順番なんて関係ないので、まずは、ゼーシェミロアール様から狙ってみては?」
狙ってとか言われても、どうやれば良いのか分かんないよ。その説明がないのかな。
じっと見つめていれば説明してくれるかな。
「……その人を良く知る事です。小型龍は愛の証です。愛と言っても、友愛とかで良いです。互いに愛があれば、小型龍はできます」
愛って、分かんないのに。
「お待たせ。エレシェフィールの大好きを揃えてみた」
「ふみゅ。ありがと……ゼロ、すき?エレの事」
ちょうど良くゼロが戻ってきた。だから、聞いてみる事にする。ゼロがそう思っているのかって。まずは、そこからなの。そこから、愛がどんな感じなのか、詳しく教えてもらうの。
「好き」
「愛?」
「……そうだな。恋愛感情とは違うんだろうが、愛ではあるんだろうな。エレシェフィールの事は、妹のようにしか見えねぇから」
「……兄妹愛っていうのなの……すきと愛はむずかしいの」
違いが分かんない。なんとなく感覚で分かるものだと思っているけど。エレにはむずかしいみたい。
「今日は早めに寝ろよ」
「ふみゅ。早めに寝るの」
「りゅりゅ、明日はエレシェフィールの事頼む」
「分かりました」
ゼロと小動物……なんか良いの。可愛さがある。
この自然な笑顔とか。
「……仲良くなれば、できる気がするの」
もう考えるの疲れた。きっとなんとかなる。そう思って、何も考えない事にするの。




