手紙
「みんな、先日の謎の光を知っているな。あれが我々ベルの住む土地とドロイの住む土地の間から出たらしい。そこで我々から1人、ドロイ達から1人捜査員を選出して平等に捜査をすることになった。私としては信頼できる君たちのうちからお願いしたいんだが、誰か、やりたい奴はいるか?」
沈黙が流れる。下劣で野蛮なドロイと協力して調査など誰がやりたいものか。皆が誰も手を上げないだろうと思っていたその中、一人の青年が立ち上がった。
「私やります。」
彼の名前はロア、正義感が強くまっすぐで優しい青年だった。
「あぁロア、君ならそう言ってくれると思っていたよ。明日、フィリアランドでドロイ側の調査員と会う予定だ。部屋に戻り準備をしてくれ。君なら大丈夫だろうが、十分気をつけてくれ。」
フィリアランド。それはこの世界に生きるすべての人間の始まりの土地だ。人はまずフィリアランドで生まれ、15歳になるとマザーによってベルになるかドロイになるかを決められる。たとえ望んでいなくとも、マザーの決定は絶対であり、逆らうことなど不可能だった。そしてそれぞれの道に進んだ後、ベルとドロイが自主的に関わることはない。ベルからすれば、ドロイという存在は危険でおぞましく、ドロイからすれば、ベルはお高く留まった鼻につく存在だった。それぞれの土地の間には底の見えない谷があり、そこになにがあるのか誰も知らない。そんな谷から謎の光が出たというのだから、人々は正体のわからないものに恐怖を抱いていた。
「ありがとうございます。失礼します。」
そういって部屋を出ると、彼は急いで自室に戻り、一通の手紙を書いた。
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ミゼルへ
先日の謎の光の調査員に選ばれたよ。
そっちからはどんなひとが来るんだろう?
怖い人じゃないといいんだけど…
もしこの調査で結果を出せば、上の人たちは私たちの願いを聞いてくれるかもしれない。
だから頑張るよ。私たちの夢のために。
ロアより
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