ぼっちの韜晦
初めて投稿します。
間違いなども多いと思いますが、何卒お手柔らかにお願い致します。
春になると、憂鬱になる。
厳しい冬を超え、全生物が活発になる今日この頃になると、なんだか落ち着かない衝動に押しつぶされるように、泣きたくなるような感覚に苛まれるように、少しだけの高揚感の後、どうしようもない感覚に落ち込むことが多い。
こんな感覚になるのは、きっと、春という陽気な季節の中で、自分以外が、希望に溢れ前に突き進んでいるという恐怖だろう。
自立しながら突き進める、名前も知らない奴に対して、知らず知らずの内に焦っていて、その焦っているということすら漠然としたまま、抗うこともできずに、ただただ怯えるように自己防衛ですらない韜晦の中にいる。
今日も今日とて、つい先日、友人達とのささやかな別れを経験したはずの、新しいクラスメイト達が、もうすでに何人かのグループを形成している。
なんでそんなすぐに仲良くなれるのだろうか? 多分、自分には一生の疑問のような気がする。高校生にもなって、そんなことを……とは思わない。おそらく、大人になっても言ってそうな気もする。
このクラスだと、いつもは朝から賑やか空気に当てられて、少し憂鬱になるものだが、今日は春にしては気温も低く、雨も降っているせいか教室はいつもよりも静まり返っていて落ち着いた雰囲気をしている。
この感じが少しでも長く続いてほしいと思いながらも、俺は持っていた推理小説に目を落とす。
その小説が、犯人との対決に差し掛かる頃に、教室のドアが勢いよく開けられ、無邪気な声と、春の賑やかさが雪崩込んできた。
「こんな日だからこそ、朝から元気にしないと」とは、このクラスでも一番明るくて、人気のある、氷室 澪だ。見てくれも良く、街なかですれ違えば、誰しもが目で追ってしまうレベルだろう。こんな捻くれた俺でも名前まで覚えてしまっている。
「澪はいつも元気だろ」氷室に答えたのは、このクラスでも一二を争うイケメンといわれている、武藤 大和だ。先日、所属する運動部の部長に内定が出たとか。
天というのは、人に二物も三物も与えるものなのかね。
二人とも仲が良く、よく付き合っているという噂を聞くが、本人は否定しているとかなんとか。自分には一切関係がないことなので、興味など微塵もないのだが、幾分話題に上がりやすく、嫌でも耳にタコができそうだ。
そんな二人はというと、教室の端まで届きそうな挨拶をした後に、自分達が仲良くしているグループへ合流していく。
そうして、教室全体の空気も水を得た魚の様に活気が出てきて、話し声も大きくなり、そこら中が笑顔に彩られる。その中で俺は、推理小説を閉じると、机に突っ伏す。
眠くはないが、一人でいるには少し本だけでは心許なかった。
それでも、負け惜しみのような感情が一言だけ、口を突いて出る。
「リア充爆発しろ…」
万感の思いは込めたが、声量は一切籠もっていないので、誰にも拾われることもなく、賑やかな教室に霧散していった。
授業が始まるまでの後十分を微睡みの中に落としていく。