一蓮托生
ヨナは状況を理解しているがまだ幼いタミに重荷を背負わせたくないと勘案する。タミとヨナの会話を聞いていた上位の妖モノたちは精神感応で試しにとタミのいうように動くよう指示をする。多くの妖モノが集まっても止めることが出来なかった巨大台風を一瞬にして止めることが出来たタミに期待が高まりはじめていた。残念ながらタミの力は対価を払うことで大きな力が使えているということを誰も知る由もなかったのだ。もちろん父であるヨナさえもそのことを理解していなかった。
「わかった。あの積乱雲の中に入ればいいんだな」
「うん」
「おい。そこの化猫くん」
「にゃんらい? もぐもぐもぐ」
ヨナは山盛りになった饅頭を頬張っている大福に話しかける。
「こちらを拝借するよ」と言って、ヨナは化猫の毛を数本抜き取る。大福は「いたいにゃああああ」と尻尾で背中を撫でながらも饅頭を食べ続ける。
「……タミ、ヨナ様。こんな仕事、早く終わらせて帰りましょう。無事を祈っていますにゃ」
「ありがと、だーふく!」
「ああ」
ヨナは大福の毛と自分の羽を毟り取ったものを加え、糸状にし撚りをかけ頑丈な縄を作る。その縄でタミと自分の体を離れることがないようにしっかりと結ぶ。
「えへへ。父上をおんぶしているみたいになった」
タミはふにゃふにゃの笑顔で手足をバタバタとさせる。心配かけないようにと楽しそうにみせるタミの体は緊張で震えている。ヨナはタミを優しくギュッと抱きしめる。
「いくぞ」
「おー」
ヨナは翼を大きく広げ積乱雲へ向かう。
積乱雲は来るのを拒むかのように向かい風が吹き、雨粒は大きく激しくなり雷光が閃く。
“アメフリの元へ行きたいんだ!”とタミは強く想う。
タミの想いを拒むように強風が二人を押し戻す。ヨナは雨を使い球体のような壁を作り、風の抵抗を緩やかにし進んで行く。更に近づくと雷が乱雑に走り二人を襲う。ヨナの片翼に雷が落ち貫通し火傷をするが、何事もなかったように前だけを見て進んで行く。
「父上、アメフリを見つけた時のように真上からいくのはどう?」とタミ。
「そうだな」とヨナは空高く上がっていく。
高く上がっていくと空気も冷たくなっていく。空は高くなると気温が下がっていくのだ。強風が吹き荒れる中進むと太陽の日差しが見えてくる。
「父上、高いお空は晴れているわ」
「ああ」
二人が雲と雲の隙間にある明るい場所に出ようとした瞬間、ドンピシャンと大きな音がなる。目には見えないなにかが二人を襲う。雷が直撃したような衝撃とピリピリとした電気のようなものが走り抜ける。
「父上、すごくチクチクする」
「ああ、大丈夫か」
「大丈夫! こんなのすぐに治っちゃうんだから」とタミは嘘をつく。
「そうだな。これは目に見えないがなにかがいる」とヨナは小さな水球を作り様子を伺う。
水球は壁のようなものに当たり、反動で落ちる瞬間に目にはみえないなにかにより壊される。ヨナは羽を一枚毟り取り同じように飛ばしてみる。すると今度は真っ黒に焦げ粉々になり塵となる。
「こんなことが出来るのは……」とヨナがつぶやくと琴の音色と共に大量の桜の花びらを纏った辻風が吹き、シンが現れる。
「やはり……」
「私がここにいて何をしているか察したのだろう。ならこの道を諦めてくれないか」とシンは悲しげな表情を浮かべる。
嘗て人間と妖モノが共存していた時に交わした約束を守るため集結する妖モノたちと違い、竜神族は単独で行動している。そう今回の大災害には竜神族は見守るという立場をとっている。その理由は明確にはされていないが竜神族というのは中立な立場の存在と言われているからだ。中立とはどの種族にも平等ということであるが、良い噂と同じくらいに良くない噂も流れてくる。中立というより曖昧な立場というのに近いのかもしれない。今回は竜神族の何らかの策略で空が支配されているという状況である。
「お前たちは今回、違う干渉をしているということだったのか」
「すまないね。私からは何も言えない。ここに長居されると君たちを消さなくてはならなくなる。だから違う道を選んでほしい」
「わかった」とヨナは上からの道を諦めることにし、降りていく。
「ありがとう。このことは内緒ね」とシンは桜色の風を吹かせるとタミとヨナの怪我が治っていく。
* * *
なんとか積乱雲に到着し、内側に入ろうと手を触れるとヨナのもう片方の翼に二方向から同時に雷光が走り、深い傷をつける。ヨナは衝撃で落下するもすぐにバランスを整えるが、今度は脳天に雷が落ちる。そのまま意識を失ってしまい、二人は真っ逆さまに落ちて行く。
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