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君と僕がみている世界の色は ~あやかしと共に生きる者たちの物語~  作者: かなたつむぐ
【第零部 そらいろ ~天色事変~】
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アメフリ

 アメフリは高い山々が連なった中にある岩山に囲まれた森の中、空からしか辿り着けない場所におり、籠っている洞窟は一目瞭然で森の中の植物が枯れ果てている場所にあった。


 洞窟に近づくと奥から泣いている声がかすかに聞こえる。

 二人は大人がギリギリ入れるくらいの穴が開いた隙間をみつけ入っていく。


 中に入ると、膝を抱え、膝の中に頭をうずめるアメフリがいた。

 アメフリはフニャフニャした液体のような流動的な生き物で真っ黒な色をしている。


「なんでそんなに泣いているの」

 タミはそっと覗き込みながら小さな声で尋ねる。


「君は誰? オイラに近づくと火傷しちゃうよ。近づかないで」


「私はタミ。私にはね、治癒能力があるの。だから大丈夫だよ」

 タミはゆっくりとアメフリに近づき、指の先でアメフリに触れる。指は火傷をするがすぐに治ってしまう。


「ね、大丈夫」

 タミは冷や汗をかきながらもヘラヘラと笑って見せる。


「ほんとだ。君すごいね」

「えへへ! ねえ、どうしてこんなところにいるの?」


「それはね……人間がね、雨にしてってお願い事をしてきたから雨を降らしたんだ。そしたら今度は晴れにしてほしいって言うんだ。毎日毎日言ってきて……。オイラは雨を降らすことしか出来ないのに……すごく悲しくなって……」

  アメフリは涙を流しながら丸く蹲ってしまう。


 アメフリは雨を降らすことが出来る妖モノ。普段は妖モノの世界にいるのだが天候に関わる妖モノや神々が集う『天色神社』というところに時々行く用事があった。通常であれば妖モノの世界と天色神社の直通のトンネル(ワームホール)のようなもので行き来するのだが人間の世界で晴れの日が続きそのトンネルが使えなくなってしまったのだ。トンネルは反射するもの、鏡や水たまりのようなものがなければ開くことができない。そのため近くにあった川を使うことで行き来していた。


 そんな時、アメフリは川で人間たちに出会った。人間の中にも稀に妖モノがみえるものがいるがほとんどの者にはみえていない。人間たちは雨が降らず川に水を汲みに来ていたのだ。そんな人間を横目にアメフリが天色神社につくと今度は人間たちが「この地に雨が降るように」と熱心に願い事をしていたのだ。そんな人間たちの姿を見たアメフリは雨を降らすことにする。しかしそれが悲劇の始まりになってしまう。


 一度雨が降り雨を願うことを覚えた人間は都合よく雨を降らすようにと願うようになる。しかし雨を願う者もいるが雨を願わない者もいる。人間たちは口喧嘩をはじめたかとおもうといつの間にかお互いを憎み合い争いはじめるようになる。人々の心が真っ黒に染まり、その負の感情が悪い妖モノたちを呼び寄せた。アメフリは人間たちの黒い心を癒そうと雨を降らし、雨の強弱で音楽を奏でてみるがその想いが届くことはなかった。雨を降らし続ければ人は外出が減り争いも減っていったが雨を降らし続けたアメフリは心身共に疲れ果てていった。そんな時、アメフリに異変が起きはじめた。


 アメフリは雨を自由に操れる妖モノだったのだが人が持つ負のオーラで雨を止めることが出来なくなってしまったのである。そのため雨が降り続いている。他の妖モノも雨を操ることが出来るが今の雨を止めることが出来ないまま月日が経った。アメフリは人の負のオーラで心までも真っ黒に染まりアメフリの居場所も不明、負のオーラによりアメフリの雨を降らす力は日に日に増していったのだ。その結果、人の世界を壊しかねない雨と巨大台風を呼び寄せてしまうこととなった。



 人間は正直というか……きっと悪気はないのだろう。我儘とかではなくただ自分の思ったことを口に出し、行動しているだけなのだろう。まさか妖モノが雨を降らしているとは思いもよらないのだから。



「私は雨が好きだよ。だって、晴れが続いたらお水がなくなっちゃうじゃない。お水がないと私たちも人間たちも生きてはいけないわ。それに……雨の時のお空の色も、雨の滴が落ちることで聴こえてくる音楽も、雨の日の匂いも大好きだよ」

 アメフリは少し顔を上げて、タミの顔をチラリとみる。


「ねぇ、晴れたお空は嫌い?」

「嫌いじゃないけど。オイラは雨しか呼べないし……」


「嫌いじゃないのね! じゃあ、雨が止んだらお手てを繋いで一緒にお散歩しましょう」

「……」


「春はね、桜の木の下でお花見をして、夏は大きな花火をみるの。秋はカラフルな葉のシャワーの中を歩いて、冬はかまくらを作って雪合戦をするの」

 ヨナは小さな水たまりを作り、タミの話したことを水芸のように表現してみせる。

「わあ、楽しそうだ」

 アメフリは泣くのを止め、目を輝かせ笑顔を見せる。


「アメフリ。雨を止めてくれる?」

「うん。やってみる」

 アメフリは丸くなり、ハリネズミのように体中に棘のようなものを出し、プルプルと振動し、バッと音を立てウニのような長く鋭い棘だらけの形に変化する。


「止んだ?」

 雨の音が少し静かになるが、止む気配はない。


「アメフリが雨を降らしているわけではないってこと?」

「どういうことだ」

 タミとヨナは顔を見合わせる。


「うぅ……」

 アメフリが苦しみだしたかと思うと、口から黒い塊が吐き出される。そして黒い塊が「ちっ。邪魔をしやがって」とタミたちを睨みつけ、アメフリの翼となり巨大な積乱雲に向かっていく。


「アメフリ!」

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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