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君と僕がみている世界の色は ~あやかしと共に生きる者たちの物語~  作者: かなたつむぐ
【第零部 そらいろ ~天色事変~】
30/40

桃源郷

* * *

 タミが生まれ五年の時が経った。


 一年中春の気候で桃の花と桜が咲き乱れ尽きることなく花びらが舞っており

 月毎に花木が色と香りを変え色とりどりの鳥や虫たちが飛び交い

 いつも空は晴天で雲があるかと思えば筋斗雲が通り過ぎていく

 どこにいても奏でる音や歌声が聴こえる

 そんな場所。


 ――桃源郷。


 ここは妖モノたちの世界。


 妖モノの世界の片隅にタミたちの家がある。

 天狗族は妖モノの世界でも尊敬される存在であるが、天女は神や人に近い存在で妖モノより人を大事にするため妖モノたちから好かれてはいなかった。そのため妖モノの世界でも目立たない場所でこっそりと暮らしていた。


 そんなタミの日課は化猫様と一緒に縁側で大の字になってお昼寝をすること。

「今日もいい天気だにゃあ」

 普通の猫の三倍の大きさのある化け猫、大福は手足を真直ぐに伸ばしてヘソ天で寝転んでいる。

「そうだね。ここは人間がいる世界と違っていつも晴れていて気持ちがいいよね。そういえば大福はヘソ天でしか寝ていないけど、普通の猫は丸くなるんじゃないの」

 タミは大福の横で大の字で寝転んでいる。


「にゃはは。それは人の勝手な思い込みというか固定概念だな。猫だって人間と一緒で好きな格好で寝たいのさ」

「へー。そうなんだ」

「勝手な印象で決めつけるとか、猫らしいとかいうのは人の傲慢だな」

 大福は大きな欠伸をしながら手足をピンと伸ばしきる。


「とはいえ、君は仕事で人間の世界で生活をしないといけないのだから、その人がいう猫らしいというのを形としてやってもらわないとなんだが」

「そうね。その人間に合わせるのが私たちのお仕事の一つなのよ」

 つむじ風が吹き、ヨナとハノイが空からゆっくりと降りてくる。


 ヨナは数日分の食料が入った袋を地面に置き「頼んだよ」と声を掛けると大福は「任せろ!」と互いに手を上げパチンっと手と手を合わせる。


「父さま! 母さま! おかえりなさい」とタミは起き上がり両親に駆け寄っていく。

「タミ、ただいま」

 フワフワと長い桜色の髪を靡かせ天色の瞳で優しく微笑むハノイは、出迎えてくれたタミをギュッと抱擁する。


 ハノイが帯に挟んでいた三つ折りにされた手紙が落ちる。タミがその手紙を拾うと手紙の中から人形(ひとがた)がスッと飛び出し、紙の剣でタミの指を切る。紙の剣ではあるが血が滲むくらいの擦り傷となってしまう。手紙はハノイに向けたものでハノイ以外の者が読もうとすると手紙を守る式神が現れる仕組みとなっていたのだ。


「いたっ」

 タミが手紙から手を放すと人形(ひとがた)は手紙の中に戻っていく。

「タミ!」と慌ててハノイがタミの手を取ると「へへ。もう平気」とタミは笑顔を見せる。

 タミは生まれつき治癒能力がある。小さな傷であれば一瞬で傷が塞がってしまうのだ。


「その手紙は言音様からのか」

「ええ、例の大仕事についての内容だから厳重になっていたのね」

 タミはハノイの着物の袖を引っ張り「またお仕事なの?」と悲しそうな顔で尋ねる。


「ごめんね」とハノイはタミの頭を優しく撫でる。

「今度のお仕事が終わったら、いつものトクベツな場所でお花見しましょうね」

「ほんと! お花見好き! 大福と良い子で待ってるね」

 ハノイはタミを抱擁し、ヨナはタミの頭を優しく撫でる。


 二人は戻ってきたかと思うとすぐにいなくなってしまう。ヨナもハノイも人間の世界でとある仕事をしている。人間の世界では人が年々増えており、その影響で妖モノたちのやることが増えて行ったのだ。


 つむじ風が吹き、ヨナとハノイが空へと上がっていく。

 タミは両親が見えなくなるまで手を振り見送る。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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