表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と僕がみている世界の色は ~あやかしと共に生きる者たちの物語~  作者: かなたつむぐ
【第零部 そらいろ ~天色事変~】
28/40

人妖奇譚

 其の昔。とある都で姫君や若い女たちが神隠しに遭うという騒動が起きていた。それは酒呑童子たち鬼たちによる仕業であった。酒呑童子と高位の鬼たちは若く美しい男に化け、女たちを誘惑し騙して攫っていたのだ。


 人間たちが事件を解決しようと試行錯誤をするものの解決に至らなかった。そこで三大天上人さんだいてんじょうじんと呼ばれる言一族の言音(ことね)、音一族の和音(あいね)、香一族の香絃(かいと)の三人の人間と大天狗のヨナ、天女のハノイ、紅紫(こうし)一族のリンが、妖かしモノを束ねる竜神族の長、(れい)の元に招集された。その場には零の息子の(はじめ)(ふた)、二が拾い育てた人間のシンも同席していた。


 招集された六人でそれぞれの軍が結成され、酒天童子の鬼軍と人間と妖怪の混合軍とで戦いとなった。



 これは後に『人妖奇譚(じんようきたん)』と呼ばれるものとなる。



 陸の鬼ヶ島とも呼ばれる鬼たちの棲家には簡単に入ることは出来なかった。先ず、妖かし者たちが鬼たちと交流しようと試みるが、鬼たちは鬼以外の者を受け入れることに警戒し拒んでいた。


 しかし、鬼たちは人間のフリをして生活をしていた。鬼は人を喰うことがあるだけで人間が作る料理や酒の方に興味を持っていた。そのため料理が得意な者、新鮮な食べ物を届けてくれる者、美味しい酒を作る者などは簡単に出入り出来るようになった。


 それでも若い女たちの神隠しという名の人攫いは数を減らすことが出来たが、無くなることはなかった。出入りする人間たちが攫われた者たちを探してみたものの見つけることが出来なかった。


 それから人間たちは鬼ヶ島に通い続けながら少量の毒を仕込んでいった。それが頃合いになったところで妖かしモノたちが鬼ヶ島を包囲し、一斉にのり込んだのだ。


 いざ戦いが始まると、生き延びたいと思う弱い鬼たちは逃げ出していった。鬼も人間と同じで集団行動を取る習性があるらしく、その場にいれば楽しく暮らせるという理由で集まっていた。要するに怠け者の集まりであり、大半が弱い鬼たちだったのだ。


 天女を束ねるハノイ軍は羽衣を使い、鬼ヶ島に結界を張り、桃源郷にある鬼島へ繋がる門を開き、結界を通り抜けようとする鬼たちを桃源郷へと返していく。結界の外ではリンと治癒能力を持つ者たちが怪我をした者たちの補助をしていた。同じく結界の外では竜神族の(はじめ)(ふた)、シンが警護と補助要因として待機していた。


 残った鬼たちは妖怪の中でも能力や妖力が高い者たちだったが、一対十となると塵も積もればなんとやらで太刀打ちできずに後退していった。



 そんな中、酒呑童子と茨木童子、ヨナと言音が対峙する。

 

「酒呑童子様、我らが劣勢です」

「仕方がない。アイツを召喚する」と酒天童子は印を組み、陣が現れそこに肌色の大きな物体が召喚される。肌色の物体は人肉の塊が団子状に重なり合った丸い形をしており、複数の手足がニョロニョロと生えている。頭部は見当たらないが「あ゛―」というたくさんの人の声が聞こえてくる。この物体は人間の死体で死臭が漂い、大量のハエたちも群がっている。


 酒天童子が若い女たちを攫っていた理由は、食すのに美味だからという理由ではなく若い女が持つ嫉妬という感情に目をつけたからだ。この時代の女性たちの扱いは酷いものであった。男性より女性の負の感情が生まれやすい環境だった。


 酒天童子はそれに目をつけ、人の屍と人の欲の感情を合わせた怪物をつくる研究をしていたのだ。最終的な完成図がどのようなものだったか今となっては不明のままだが、怨念という心を持った肉団子が出来上がった。


 その肉団子はヨナと言音を敵と認識し、襲いかかっていく。


 ハナは風を使い肉団子の足を止めようとするが、肉団子は風に抗いながらも少しずつ進んでいる。炎で焼こうとすると高速で回転し炎を消し去ってしまう。一方、言音は動き止める言の葉を唱えるが動きを止めることが出来ない。


 そこに琴の音色と共に大量の桜の花びらを纏った辻風が吹き、シンが現れる。腰に吊るしていた瓢箪を空高く投げ、両手で印を組み、パンと両手を合わせる。すると肉団子の動きが停止し、黒い煙のようなもので包まれていく。そして、再び印を組むとその煙のようなものは瓢箪の中に吸い込まれていく。


 シンの瞳が天色(あまいろ)から深紅色と黄蘗色(きはだいろ)に変化していく。シンは片手を上げ真っ直ぐに伸ばす。手を広げた瞬間に大量の氷柱のようなものが飛び出し、肉団子を突き刺していく。真夏の暑い空気が真冬の白銀の世界へと変化している。青々とした木々は枯れ果て、全ての葉が落ち。地面には雪が積もっていく。


 肉団子が氷の塊となったところをカマイタチで切り刻む。そして切り刻んだ欠片を炎で燃やし尽くす。


「何故、中立の立場である竜神族が介入する」と酒呑童子はシンを睨みつける。

「残念だ、私は人間だよ、忘れたのかい」とシンは妖艶に微笑む。



「くっそ。もういい、お前とでは勝ち目はない。茨木童子、ここは下がるぞ」

「は、はいぃぃ」

 酒呑童子と茨木童子は他の鬼たちと一緒に鬼ヶ島から退散していく。



 こうして平和な日常が取り戻された。



 竜神族は人外を治める一族であり、本来はどんな状況であっても人間にも妖かしモノたちにも干渉しないのだ。しかし、シンは元々人間でありその枠から外れた存在になる。シンは人間として生まれてきたものの生まれつき特殊な能力を持っていた……。

 その話はまた別の機会に。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ