第二十一話 九死一生
誰でもいい……私に力を貸して!
“そんなに力が欲しいのか”とどこからか声が聞こえてくる。
みんなを助ける力が今すぐほしい!
“お前が望む力をくれてやる。そしてこいつら全員助けてやる。だから全てが終わったらお前自身をよこせ”
わかった。それでいい。
“そうか。それで交渉成立だ”
彩を包む黒いものがどんどんと大きくなっていく。そこに一筋の光が差し込んだかと思うと彩を包んでいた黒いものを消し去ってしまう。
“ダメよ! 彩!”と女性の声が聞こえてくる。
いつもの声の人?
”私が力を貸してあげる。目を閉じて、もう一度色を探して”
“衣め、邪魔をするな”
”お前なんかに二度と彩を渡すものか!”
集中、集中。
魂色は……ドコ?
彩は泳ぐように手や足を広げ、手探りでドロドロの中をかきまわす。
ん? 少し硬い? 他のところと感触が違う……きっとここだ!
彩はギュッと目を閉じ、その感触が違う場所に手を触れ、魂色を探す。
すると、真っ黒で歪な形をした塊がみえる。
あった? これは魂色が……三つ?
”彩、見つけたわね。そう、その個体は魂色が三つあるの。三つの魂色が重なり合って真っ黒に見えているの”
そうか! だから三人の声がしたのか!
この黒の色を取ればいいのね? でも……黒色をとればいいってこと?
それとも重なり合った色を一つずつ取り除く必要があるってこと?
”黒色を取ると彼ら自身の心全てを奪うことになるの。別にそれでもかまわないのだけど、あなたはそれを望まないでしょ? その場合は一つずつ色を取る必要があるのだけど、重なり合った色を取るのには時間がかかりすぎる。だから私の力を使って色を上塗りするわ”
上塗り?
”そう、本来そのモノが持っている世界を違う世界にしてしまうの。彩はただ魂色に力を注ぐイメージだけしてくれればいいから”
はい! わかりました!
“彩、力を貸して”
みんなを助けたい、助けるんだ!
衣は彩に力を注ぎこみ、魂色の色を変化させていく。
色が全て変化すると眩しい光に包まれる。
そして、蛇の時のようにドロドロたちの記憶が流れ込んでくる。
彼らは普通の人が使用する物だった。人間に大切に使われ付喪神になり、その後不用品となり人間たちに捨てられてしまう。恨み辛みが集まり、異形のモノに変化していく様子がみえてくる。異形のモノになっても独りは嫌だという思いからの集団で重なり合い、慰め合うかのような塊。
一人一人の記憶、その記憶は吐き気がするほどの目を閉じたくなるほどの痛く重い記憶。そして蛇同様に大きな負の感情という異形のモノにのみこまれていき、妖モノの使い魔となる様子がみえてくる。
彩から涙が溢れ出す。目を閉じてもその涙を止めることが出来ない。それは記憶への感情ではなく想いの強さからの強制的な痛みと涙。彩は目をぎゅっと閉じる。
ドロドロの魂色が黒から白に近い天色に変化し、眩しく光り出す。葉たちは解放され、三体の付喪神たちは元のモノの姿に戻り、そして転がり落ちスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。
パチンと指を鳴らす音と、パーン! っという大きな音がした瞬間、突風で土石が吹き飛ばされ洞窟だった場所が平地のような状態となる。
彩が目を開けると地上の光が目に差し込む。
眩しい……。
なんかものすごく……眠い……。
彩はその場に倒れ込む。
黄金の翼を生やした妖モノが空から降りてきて、彩の頭に手をかざす。
「お嬢ちゃん! お嬢ちゃん!」
ワンタンは彩に駆け寄り何度も声をかける。
「大丈夫、彩は力を使いすぎただけだから……」
葉は骨を折られ内臓が傷ついているため声が掠れている。
「そ、そうなのか」
ワンタンは彩に寄り添って座る。
「やあ、ダイくん。また、会ったね……。助けてくれてありがとう……」
翼を生やした妖モノは微笑み、パチンと指を鳴らし雨を降らせる。そして無言で風に乗り姿を消す。
小雨から大雨になっていく。雨には妖力を弱める力と妖力の探知がしにくくなる効果がある。
「さすが、ダイくん……」
ゴホゴホ。葉は咳と共に血を吐き、そのまま気を失ってしまう。
「葉! 葉!」
「葉! 死ぬな!」
リンと金平糖は必死に声をかける。
「だ、大丈夫だよ……」と葉は聞き取れるかくらいの擦れ声で答える。
「今すぐ……」
リンが目隠しを外そうとすると葉は首を左右に振る。
葉はリンの手を握り「だ、ダメだよ……リン。一度戻ってからにしよう」と言うがリンは目隠しから手を外そうとしない。
葉は痛みをこらながらニコニコの笑顔をみせ「僕の……言うことを……聞いて……お願い」と言うと、リンは涙を流しながらウンウンと頷く。
「ほれ、みんなのった」
金平糖はみんなをのせ、葉の隠れ家に向かう。
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