第十八話 団雪之扇
雪女は淡々と昔話をはじめる。
数十年前、冬の季節だけ人の姿になり人里に降りて人の世界を楽しんでいた雪女は一人の少年と出会う。その少年は雪女が妖怪だとは知らず人間として一人の友達として接した。少年と雪女は色んな雪遊びをして毎日を過ごしていた。
ある日、少年が祖父母と喧嘩をしたと大泣きしてやってきた。雪女はどう接していいかわからず少年の為に歌を披露する。雪女の声は透明感のある美しい歌声で少年は雪女の歌声が大好きになった。
それから何年か経ち……少年は青年へと成長していった。もちろん雪女の姿は変わらず。
そんなある時、その青年は雪女に冬以外の季節も会いたいと伝える。当時の少年は冬休みの間だけこの地に来ていたが、青年になって冬以外の季節もこの地に来れるようになっていた。
そう……その青年は、彼女に恋をしていたのだ。
しかし妖力がなければ冬以外の季節を自由に歩くことができない雪女は冬以外に会うことはできないと告げる。雪女のことが好きになった青年はその次の冬もそのまた次の冬も彼女に会いに来た。二人は寄り添っては話をする。そして雪女の歌を聴く。そんな日々を過ごしていた。
とある冬の日のこと。
「ユキ、僕と結婚してくれないか」と彼は雪女にプロポーズをする。
「嬉しいわ。でも出来ないの……」
「僕のことが嫌いかい? いつも傍にいてくれたからこれからも一緒に……」
「ごめんなさい。ずっと黙っていて。実はアタシ……妖モノなの」
「ああ、知っているよ。それでも君を愛してしまったんだ。結婚という形なんかじゃなくていい。これからも傍にいさせてほしい」
雪女は青年を愛していた。しかし妖モノと人間が結ばれることは禁忌とされている。それより一番の問題は生きる長さにあった。人間の命は長くても百年。雪女は老いて命が消えていくのを若い姿のままで見届けるしかないのだ。それはお互いにとっても辛いこと。それを理解している雪女は青年に心にはない嘘の言葉を継げる。
「アタシは強くて美しい妖モノにしか興味はない。お前のような童など全く魅力を感じない。妖モノの人生は長い。だから暇つぶしに付き合ってやっただけだ。それに私のことを好きにならせてこうやって遊ぶのも楽しかった。人間の数十年を無駄にしてやった。楽しかったぞ、人間」と雪女は妖艶な微笑みをみせる。青年は笑顔をみせながらも片目から涙を流し、その場を去っていく。
また次の冬。彼は冬になっても会いに来なくなった。雪女は青年が来ないとわかっていても冬になるといつも会っていた場所で彼を待ち続けた。
そんなある日。彼が妻らしき人と子供と一緒に歩いているのを目撃してしまう。
悲しみでいっぱいになった雪女は大吹雪を巻き起こしてしまう。何日も大吹雪が続き、これを雪女の力と気づいた妖怪退治人が雪女を見つけ封印することとなる。
「人間なんて。すぐ心変わりもするし、アタシのことなんか忘れちまうんだ」
雪女は遠くを見つめ涙を流す。
私は独りが寂しくて辛いことを知っている。
だから……雪女さんの話を聞いて放っておけないって思ってしまった。
「あ、あの……私と一緒に過ごしてみませんか!」
彩は目をギュッと閉じ顔を真っ赤にして大きな声で叫ぶ。まるで告白をするかのように。
「なんだって?」
雪女は突然の提案に驚き、声が裏返ってしまう。
「彩?」
葉も彩の提案に驚き、彩を二度見する。
「え、あ、一緒に過ごすとか嫌ですよね、すみません。じゃ、じゃあ私がたまに会いに来ます! 悪いことはしないって約束を守ってくれれば封印なんかさせません」
私も彼女の気持ちがわかるから。
寂しいって気持ちがわかるから……。
封印なんかされたらもっと独りぼっちになっちゃうよ……そんなの見過ごせないよ。
「僕は反対だ」
葉は険しい顔をし、今まで聞いたことない力強い大きな声をあげる。
「お嬢ちゃん、こんな奴なんかと約束事をするなんて。守るわけがない」
座っていたワンタンも仁王立ちをし、いつもより渋面になる。
「私も封印するのがいいと……」
リンは少し悲しそうな複雑そうな表情を見せる。
「でも冬以外は表に出られないんでしょ?」と彩はみんなの顔をみる。
「そうだけど。冬は自由に動けてしまうからまた襲われるかもしれないよ」と葉が心配そうに彩を見つめる。
「そしたら私が責任もって閉じ込める。それでいいでしょ?」
彩はみんなを説得しようとするが誰も彩と顔を合わせようとしない。
雪女はこの空気を換えようとパンっと手を叩くと「わかった! お嬢さん! アタシと契約しよう」と妙案を出す。
雪女の言う”契約”とは主従関係を結ぶことであるが、従になるということは必要な時に彩の命に従うことになる訳だが、逆に従になる雪女は主である彩の力を借りることができ冬以外でも妖力を保ち動くことができことになる。
「契約?」
「そうさ! アタシはお嬢さんの力をもらう、その代わりアタシが必要な時は力を貸す。どうだい」
「うん、それでいい」
彩は雪女が封印されない方法として今はこれしかないと即決する。
「決まりだね」
「はい!」
彩と雪女はお互いの意図が異なっていることに気づきながらも同意し、了承したという意味でハイタッチをする。
「彩が決めたならもう何も言わないよ。けど、バニラアイスが彩に何かしたら容赦しないからね」と葉は雪女を睨みつける。
「わかってるよ、お前さんの能力も怖いからね。悪いことはしないさ」
葉くんの能力? そういえばどんな能力なんだろう?
「じゃあ、早速契約を……」
ドンっ!!!!!!!!
という音がきこえた瞬間に洞窟が崩れはじめる。
「危ない!」と雪女が大きな声を出す。
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