第十七話 安分守己
「……わかった。彩の力を信じる。きっと、彼女を助けることが出来るのは君だけだから。けど、失敗したら……」と葉は言葉をつまらせる。
「わかってます」
「葉、彩にやらせていいんだにゃ……決めたんだにゃ……」と大福は葉に問うと葉は悲しげな表情で小さく頷く。
「最初に雪女の中にいる別の奴をイメージするんだ。そいつが認識出来たら核となるようなものを見つけて」
「はい、やってみます」
少し怖い。けど助けたいんだ。助けるんだ。
私にしかできないならやるしかないんだ。
雪女に取り憑いているモノを探す……。
雪女の頭にグルグルと蛇のようなものが巻き付いているのが見える?
蛇の喉あたりが少し光っている?
「雪女さんの頭に蛇が巻き付いています」
「それだ! 核は見つかりそう?」
「多分、丸く光っているモノがそうだと思います」
「その核は個々が持つ個性という心の魂の色、魂色って言うんだ。その魂色に触れて、色を変えるんだ」
「色を変える?」
「そう。彩の力は個々が持つ魂色という世界の色を変える力を持っているんだ」
「世界の色を変える? どういうこと?」
「詳しくは後で説明するよ。とりあえず、魂色は何色かわかる?」
「深緑……色?」
「わかった。彩はその蛇をどうしたい?」
「できれば助けたいけど……またみんなを傷つけちゃうなら……」
「わかった。とりあえず、その蛇の持つ黄色のみを吸収するイメージをしてみて」
「吸収……」
緑色から黄色を取ると青が残る? 青を残すってイメージでいいのかな……。
吸収……吸い込むイメージでいいのかな?
彩は目を閉じ両手を前へ出し、念じる。
蛇の中にある黄の色よ……私の元へ……こい!
蛇の魂色が光だし、黄色の光が魂のように抜け、彩の手から体の中に流れていく。そして蛇の魂色は深緑色から天色に変化していく。
蛇の魂色の色を奪うと、うっすらと蛇の記憶が流れ込んでくる。
普通の蛇だったモノが人に悪戯をされ、その恨み辛みで妖モノになっていく様子。そして別の大きなモノにのみこまれていき、使い魔となる様子がみえてくる。
「うぎゃああああああああ」
雪女が苦しそうに藻掻くと同時に蛇が雪女から離れていく。
「ちっ」蛇は舌打ちをし、キョロキョロと周りを見渡すと、葉に目をつけ飛びつこうとする。
「葉くん!」
“彩……蛇の天色も奪いなさい……”
またこの声……。
天色? 青色もってこと? でも青色しかないってことは全て取ったら消滅するってこと?
って今はそれどころじゃない! 葉くんを助けなきゃ!
蛇の天色も私の元へ……でも全部じゃなくていい……ちょっとだけ残すイメージで……。
蛇の天色が抜けると天色が少し残った透明度の高い色に変化していく。
「ふぎゃああああああああああ。人間如きがあああああああ」と蛇は藻掻き苦しみながら人の指くらいのサイズにまで縮小していく。
「くっそ! 覚えてろよ!」と蛇は怨色をみせながらシュッと姿を晦ます。
え? どういうこと?
彩は現状を把握できず立ちすくむ。
「どうしてわかったの? 天色を取ると蛇がああなるって」
「え? 女の人の声がして……」
葉は一瞬愁い顔を見せ「そうか……。助けてくれてありがとう、彩」と作り笑顔をみせる。葉が「金平糖、ありがとう」と言うと金平糖が葉から離れ、二人とも元の姿へと戻る。
バシャっと音がきこえるのと同時にワンタンとリンの氷が溶け、無事に元の姿に戻っていた。雪女も元の姿に戻りその場に倒れこむ。
「彩さん、ありがとうございます」とリン。
「お嬢ちゃん、助かった。ありがとよ」とワンタン。
凍った中でも外の様子は見えていたらしい。
「助けてもらったわりにはなんか偉そうだにゃ、ワンコロ」と大福が煽る。
「饅頭野郎……ってお嬢ちゃん中に避難しているのか、クソだせえな」とマウントを取ろうとするワンタン。
「ちがうにゃ! 私の力を彩に貸してやってるんだにゃ」
大福は彩からフッと抜け、彩と大福は分離する。
「大福さん、力を貸してくれてありがとう。おかげで怪我もなくすんだよ」
「おう。いいってことにゃ」と大福は口角を上げウインクをする。
ワンタンは雪女の前に立ち「さて、こいつをどうするよ」と言う。
葉は悲しげな表情を浮かべ、重い口を開く。
「もう一度、封印するしか……」
「封印?」
彩は言葉の意味はわかっているが、実際に行われるということの意味に疑問符をつける。
「元々、バニラアイスは他の人間に封印されていたんだ。その封印がなんというか雑というか、適当だったから……封印を破って出てきてしまったんだ」
葉は彩の純粋な眼差しに耐え切れず目線を外し、事の成り行きを語る。
「なんで封印されていたの?」と質問を続ける彩。
「それは……アタシが話す」と雪女は意識を取り戻し話しはじめる。
「バニラライス……」と葉。
「だから、その呼び方はって……。まあいい」と言って雪女は話を続ける。
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