第十六話 熱願冷諦
雪女は彩同様に何者かに体を支配され操られてしまう。
顔には表情がなく、目は開いているのに瞳が真っ黒でどこを見ているかわからず、首は傾げているかのように真横を向き、足をズルズルと引きずって歩いている。
雪女が足で触れている地面は氷が張っていき、口からは冷気をはいている。
洞窟内の寒さが増していく。
「これは……チョコレート……」
「葉、今はそんなことを言っている時ではな……」
ワンタンは雪女の氷の攻撃を受け、氷漬けにされてしまう。
「ワンタン!」
「葉、危ない」
リンは葉を庇い、ワンタン同様に氷漬けにされてしまう。
「これは雪女の力じゃないぞ。葉、憑依するぞ」
「金平糖、こい!」
葉は銀色の長い髪、赤い目と大きな耳と尻尾をつけた青年に変化する。
あれは! あの時の!
「おい、化け猫。お前も彩に憑依しろ。そして時間稼ぎを頼む」と金平糖は言うと、走ってみえなくなってしまう。
「仕方がない。彩、いくにゃ」と大福が妖気を帯びはじめ二本の尻尾をはやした化け猫へと変化する。
「え? どういうこと?」
「彩、私を受け入れると心の中で思うにゃ」
「え? あ、うん。わ、わかった!」
大福さんを……受け入れる! と思った瞬間、眩しい光に包まれる。
彩はグレーに近い青色の髪に赤い目、猫の耳と二本の尻尾をつけた姿に変化する。
「ええええ! 尻尾!」と彩は尻尾を手で掴みブンブンと振る。
「少し我慢するにゃ。これはお前を守るために仕方がないんだにゃ」
「う、うん。わかった」
雪女はフワフワと歩きながら銃弾のような小さく速さがある雪玉を投げてくる。そして口からは触れたものを氷漬けにする息を吐いている。
「見えるだろう? あれを避けるにゃ」
「う、うん。わかった」
彩は雪女の雪玉の連続攻撃をまるで天井や壁を使ってぴょんぴょんと飛び跳ね、クルクルと踊っているかの様に華麗に避ける。
「やはり、お前の力はすごいにゃ。攻撃がスローモーションにみえるにゃ」
「よくわからないけど、すごいね。重力がないのかってくらい軽く動ける」
雪女は彩に攻撃が当たらず怒り狂って更に攻撃を強めるが、彩はそれを軽々と全て避けきっている。
葉は少し離れた場所で陣を描き終わると精神感応で彩に話しかける。
(彩、彩! 僕の声が聞こえる?)
(この声は、葉くん?)
(よかった! 聞こえて。彩、僕がいる場所はみえる?)
(うん、見えるよ)
(ここに雪女を連れてきてほしいんだ)
(わかった! やってみる)
彩は全速力で攻撃を避けながら、葉が描いた陣へ走っていく。彩を追いかけていく雪女。彩に執着し周りが見えなくなっている雪女は葉が描いた陣の中に入り、動けなくなる。
「足が動かんぞ」
雪女は結界を張られ、身動きが取れず暴れまくる。
「ごめんね。ちょっと、痛いかも」
葉は雷と書かれた札を出し、結界にヒュっと投げ張り付け「言色邌飛、雷」と唱えると、結界の中に雷が発生し、雪女を感電させる。
「ぎゃあああああ」と雪女は絶叫し気絶する。
葉は「このまま浄化する」と言った瞬間、目が光りはじめるが「待って!」と彩が葉と雪女の間に入り込む。
「どうしたの」
「雪女さん、きっと何かに取り憑かれているんだよね? それだけを消すことはできないの?」
「それは……」
葉は目線を下に向け、顔色が曇る。
「小娘、それは無理な話だ。こうなった以上、本体ごと浄化させるしかない」
葉くんの中にいる金平糖の焦る声が聞こえてくる。
「で、でも……雪女さんは私を殺そうとしなかったんです」
「どういうことだ?」と金平糖。
「雪女さんは私の中にある力を欲しがっていたけど、殺す方法以外を考えてくれたんです。だから私は彼女を助けたいです」
「……」
「お願いします」と彩は涙を流しながら懇願する。
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