第十四話 恐悦至極
ポチャ、ポチャと水滴が落ちる音?
音の響き方からして洞窟かな。
なんだかすごく寒い。
彩は目隠しをされ、手と体を縛れて身動きが取れない。
「あ、あの? 誰かいますか?」と彩。
「おや、やっと起きたんだね」
「えっと、ここは……」
「ここかい? ここは妖が集まる洞窟さ。普通の人間なんか入ることもできない場所さ」
「あなたは……?」
「アタシかい? 私はここの近くで封印されていた雪女だよ」
「雪女さん? 物語とかに出てくる?」
「そうさ」
「その雪女さんがなぜ私を?」
ひんやりと風がスッと通り抜けた瞬間、一気に真冬の雪の中にいるような寒さに変化する。
雪女は冷え切った冷たい手で彩の頬に触れ、耳元で囁く。
「それは、お前さんがあの能力を引き継いだと聞いたからさ。その能力さえ手に入れることが出来たらアタシは妖の中の頂点につくことができる」
「私の能力?」
「ん? 聞いていないのか? お前は衣から能力を受け継いだのだろう?」
「衣? 誰ですか?」
「はあ? お前は自分の母親の名前も知らないのかい。そうか、捨てられたんだね。そして能力のことも知らない。人間は繋がりや約束事を大事にすると聞いていたが、残念だね。可哀想だね。こんな能力を持って生まれてきたのに不幸そのものだね」
雪女は揶揄する。
そうか……妖モノから見ても私は不幸なのか。
これからずっと楽しい生活が待っているわけないよね。
もうこんな世界大嫌いだ……。
彩から煙のような黒いオーラが少しずつ溢れ出す。
「雪女さん、能力を手に入れるってどうやるの?」
彩の声のトーンが変わり、緩急のない声で尋ねる。
「そうだね、色々と方法があるけれど……」
「ねえ、私は死ぬことができるってこと?」
彩の瞳からだんだんと光が消えていく。
「お前さんは死ぬのが怖くないのか」
「怖くなんかない。死ぬことができるなんてむしろ幸せだよ」
彩が嘲り笑うと黒いオーラがモクモクと噴出し、目の中が真っ黒になり、体は別のモノに乗っ取られてしまう。
「な、なんだい。気味が悪いね」
雪女は脂汗をかきながら、一歩一歩後退していく。
彩は縛られていた縄を切り、手を伸ばす。
手を伸ばしたのと同時に影のような複数の黒い手が伸び、雪女の首を絞める。
「ぐはっ。お、お前はいったい……」
”ハヤク、コロセ。ハヤク、ハヤク”
彩から別人の声が聞こえてくる。
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