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97話 華奢

夜着の上にガウンを羽織ったエリザベスは寝る前に軽くシャンパンを飲んでいた


今日の昼間にあった事は面倒くさいわね、程度にしか気にしていない

ソファに座りながらシャンパンを飲み、エリザベスは別の事を考えていた


そこへ風呂上がりのレジナルドがバスローブを着て部屋に入って来た

「私にも一杯貰えるかな?」

「ええ、いいわよ」


エリザベスは自分のグラスを置き、新しいグラスにシャンパンを注ぐとレジナルドのもとへ持って行った

「はい」

「ありがとう」

レジナルドはシャンパンを受け取るとくいっと飲んだ

風呂上がりの火照った身体に冷えたシャンパンが美味しい

ついゴクゴクと飲んでいると、エリザベスがじっと見つめている事に気が付いた

「ベス?」


レジナルドが声を掛けてもエリザベスは腕を組み、左手は頬を押さえて考え込んでいる

「ベス?どうしたんだい?」

レジナルドがもう一度声を掛けると、エリザベスはようやく腕を解いた


エリザベスがレジナルドに近づくと、抱きしめる事が出来るくらいにまで接近してきた

レジナルドは飲み干したグラスを窓際に置き、エリザベスを抱きしめ…

ようとした時に、突然エリザベスがレジナルドのバスローブの襟を両手で鷲掴みにした


ん?


レジナルドがそう思った次の瞬間、エリザベスはバスローブの襟を掴んだまま、両腕を大きく広げた

レジナルドのバスローブは大きく(はだ)け、逞しい胸が露わになってしまった

「べ…ベス?」


何が起きたのかわからないレジナルドをよそにエリザベスはまじまじとレジナルドの胸を見つめている


「ど、どうしたんだい?ベス」

レジナルドに聞かれ、エリザベスはレジナルドのバスローブを広げたまま顔を上げた


「あのドロレスとかいう魔法使いが貴方の胸が逞しいって言っていたから…」

「ドロレス嬢が?」


ドロレスがエリザベスに変な事を吹き込んでエリザベスにあらぬ誤解を与えたのではないかと、レジナルドは焦ってしまった


「ベス、変な誤解はしないでくれ

私は君以外の女性に…」

「貴方に比べたらヴァルは随分、華奢(きゃしゃ)よね」

「………ん?」


エリザベスは再びレジナルドの胸を見つめた

「あの子ったら背ばかり伸びて身体は華奢なんだから…

もっと食べさせた方がいいのかしら?」

「………」


エリザベスに変な誤解をされるのは嫌だが、少しくらいヤキモチを焼いてくれてもいいのに…


レジナルドは少々がっくりしてしまった

そんなレジナルドに気づかないエリザベスはまだブツブツと呟いている


まったく、この姉弟は…


レジナルドはやれやれとため息をついた

「私がヴァルくらいの年頃の時はヴァルのように華奢だったよ」

「そうなの?」

エリザベスは驚き、顔を上げた


「ヴァルはまだ子供なんだよ

もう少しすれば筋肉も付き、逞しくなるよ」

「本当に?」

エリザベスの顔は少し安心したような表情になった


レジナルドは苦笑いしてしまった


長い長い時間、エリザベスとヴァレンタインは共に過ごしている

この姉弟の絆はとても深いのだろう


レジナルドはエリザベスの腰に手を回すと、エリザベスを抱きかかえた

「それを言うならベスだって随分華奢だよ」

「私はいいのよ」

エリザベスは抱えられながら、レジナルドの両肩に手を乗せた


「ここにいる間は美味しい物を食べてゆっくりと過ごすといいよ」

「私を太らせたいの?」

エリザベスはむすっとした


そんなエリザベスが可笑しくて、レジナルドは思わず笑ってしまった 

「そうではないよ

私はベスの楽しそうに食事をしている姿が大好きなんだ」


エリザベスはキョトンとしてからニッコリ微笑むと、レジナルドの頬に両手を添えた

「それじゃあ私の好きな柔らかいお肉をいっぱい用意して」

「仰せのままに」

レジナルドがそう言うと、エリザベスはそっとレジナルドに口づけをした


  ♪♫♬  ♬♫♪


翌朝、朝食を取るためにエリザベスとレジナルドは二人で2階の食堂へとやって来た


食堂ではすでにクリスとヴァレンタインが朝食を取っていた

「おはようございます、レジナルド様

おはよう、ベス」

クリスが明るく挨拶をすると、レジナルドとエリザベスは椅子に座りながら挨拶をした

「おはよう」

「おはよう、クリス」


ローズマリーの指示で侍女達は手際よく朝食をレジナルドとエリザベスの前に並べた

オレンジジュースをもらったエリザベスは一口飲み、一気に飲み干したレジナルドはお代わりをもらっていた


ちなみにヴァレンタインはぶどうジュースでクリスはミルクだ


「そうだ、クリス

ユニコーン達の居場所がわかったよ」

「本当ですか!」

クリスは持っていたフォークを置いて、嬉しそうに叫んだ


「ここから南東の方にある湖にいるようだ」

「遠いのですか?」

「それ程でもないよ

ユニコーン達にこちらに来てもらうと2日程かかるかな?」

「それは遠いって言うんだ」

サラダを食べながらヴァレンタインが口を挟んだ


「ローズ、ヴァルにウインナーをもっとあげて」

「はい」

エリザベスの謎の指示にヴァレンタインは「?」となった


「私も視察があるから、これからその湖に皆で行かないかい?」

「わあっ、いいんですか!?」

「それはいい案ね」

クリスとエリザベスは大喜びだ


ヴァレンタインはお皿にウインナーが追加され、不思議に思いながらパクパク食べた


「では朝食が終わったら準備して、湖に向かおうか」

「はい!」

クリスは返事をすると急いで朝食を食べ始めた


「クリス、そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ」

「え、でも…?」

「心配ないよ」

レジナルドはニッコリと微笑んだ


レジナルドはスコットを呼ぶと

「ドロレス嬢達には気付かれないように準備するんだぞ」

と小声で指示をした

「はい、畏まりました」

スコットはお任せ下さいと言わんばかりの顔で返事をした


「クリスもヴァルもゆっくり食べて大丈夫だからね」

「ああ」

「はい」

レジナルドは返事をしたヴァレンタインをじっと見つめた

「ヴァルはもっと食べた方がいいな

ローズ、ベーコンを」

「はい」


「おい何なんだよ、さっきから」

ヴァレンタインは次々と朝食を追加するエリザベスとレジナルドに困惑してしまうのだった



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