96話 撃退
「クリスティーナ様、私達同じ魔法使いですわね
今度、私の部屋へお茶を飲みにいらして下さいませ」
「ありがとうございます、ドロレス嬢」
クリスはドロレスの申し出を受ける、受けないというハッキリした返事は避けた
「私、この城にはもう5年もいますのよ
昨日今日、この城に来た者とは違いますから」
ドロレスはチラリとエリザベスを見た
エリザベスはドロレスの視線に気が付くと少々うんざりした表情になった
「ローズ」
「はい」
エリザベスが侍女長のローズマリーを呼ぶと、ローズマリーはエリザベスの側に来た
エリザベスはローズマリーにすっと手を差し出すと、ローズマリーはエリザベスの手に自分の手を乗せた
するとエリザベスの魔力が一瞬強くなり、エリザベスとローズマリーの周りでふわりと柔らかい風が起きた
ローズマリーはすっと手を離すと一歩下がり、エリザベスの後に立った
「違うわね
貴女がこの城に来たのは4年と1ヶ月前よ」
「なっ…!!」
突然エリザベスにそんな事を言われ、ドロレスは驚きを隠せなかった
「てっ、適当な事を仰らないで下さる?」
ドロレスは平静を装ってはいるが、動揺しているのがわかった
「適当じゃないわ
それに貴女はこの城の女主人だと言うけれど、何もしていない
女主人としての勤めは全てこのローズがしている」
ドロレスは怒りのあまり扇を持つ手が震えていた
「そんな事ありません!」
エリザベスはふふっと不敵に笑った
「このローズには私に代わりこの城での女主人としての勤めをさせているの」
エリザベスのすぐ側にいるローズマリーは目を伏せてエリザベスに対して畏まっている
「だから何だと言うのです?
侍女長が女主人としての仕事をしている事が何故貴女の代わりになるのですか!?」
ドロレスは扇でエリザベスを指して怒鳴った
エリザベスは後に控えるローズマリーに視線を向けると
「このローズマリーは私の使い魔
もう数百年、この城で私の代わりを勤めをさせているの」
「なっ…!」
ドロレスとニコルは驚き言葉を失った
エリザベスはローズマリーからドロレスへと視線を移した
「ローズマリーは普通の使い魔と違って私の魔力をかなり注いているわ
ほぼ私の分身と言ってもいい程よ
さっきローズマリーから前回この城に来てから今日までの記憶を読み取ったのよ
だから貴女がこの城に来た時期、この城で何をしていたかなど全て把握出来たのよ」
ドロレスの青ざめた顔には汗も流れている
エリザベスは更に続けた
「貴女は5年もここに居ると誇らしげに言ってるけど、私とレジとの付き合いは遥か昔から」
「で、でも貴女はほとんどこの城には居ないじゃない!」
ドロレスは必死にエリザベスに抵抗した
だがそんな抵抗もエリザベスには敵わない
「私達魔獣にしたら、私がこの城に居ない時間なんてほんのわずかな時間にすぎないわ
貴女が家をあけて夜会に出てるくらいの時間かしら?
それに私とレジは常に使い魔を放って連絡も取っているわ
貴女は手紙をもらった事も無いでしょう?」
エリザベスはふふんと笑った
怒りで身体が震えているドロレスの腕にニコルはそっと触れると
「ドロレス様、そろそろお戻りにならなくては…」
と声を掛けた
ドロレスはニコルの言葉にハッとして
「そ、そうでしたわね!
そろそろ戻らなくてはいけませんわね」
とニコルの機転にほっとした
ドロレスはレジナルドの前まで行くと
「皆様にご挨拶も出来たのでこれで失礼いたします」
と言い、ペコリと挨拶をした
ニコルも一緒に挨拶をすると、二人はそそくさと温室から出て行ってしまった
二人が出て行くのを見送ったエリザベスは椅子に座ると
「まったく…」
とぼやいてしまった
「すまないね、ベス」
レジナルドはエリザベスと肩を手をぽんと乗せるとエリザベスに謝った
エリザベスはレジナルドの手から顔へと視線を移した
「どうするの?」
「ああ、あまりにも度が過ぎるようなら私にも考えがある
その時はベスに協力してもらいたい」
エリザベスは「ふーっ」と一息つくと
「わかったわ」
と納得した
クリスとヴァレンタインも再び椅子に座った
「せっかくのお茶が冷めたな」
ヴァレンタインがそう言うと、ローズマリーは
「すぐに温かいお茶をお持ちします」
と言うと後にいる侍女達に目で合図を送った
侍女達はローズマリーの指示をすぐに理解し、パタパタと新しいお茶を淹れる準備を始めた
クリスはこの場の空気を何とかしなくちゃ…と考え
「レジナルド様、ユニコーン達には会えないのですか?」
と聞いた
「ユニコーン達は普段城の外で生活しているよ
会いたいなら使いを出して呼び寄せるが?」
「会いたいです
お願いしてもよろしいですか?」
「構わないよ
ユニコーン達もクリスやヴァルに会いたいだろう
今、どの辺りで群れているのかもわからないから、いつ来るかはわからないよ?」
「大丈夫です」
クリスは嬉しそうに微笑んだ
すると侍女達が新しく淹れたお茶をテーブルに置いた
「やっと一休み出来るな」
ヴァレンタインは淹れたてのお茶を早速飲んだ
エリザベスもカップを手に取ると
「いい香りだわ」
と言いながら一口飲んだ
「お気持ちをリラックスさせるハーブティでございます」
ローズマリーはお菓子を取り皿に別けながら、しれっと説明した
♪♫♬ ♬♫♪
ニコルはドロレスの後ろを歩きながら恐る恐るドロレスに声を掛けた
「ドロレス様…
昨日放った書状は明日にでも国王陛下のもとへ届くと思います
国王陛下からレジナルド様へご勧告がされれば、レジナルド様も改めますわ」
ずんずん歩くドロレスはピタリと止まると「ふーっ」と一息吐いた
「そうね…
でもあの女は本当に許せませんわ
魔獣なのだから討伐してしまいましょう」
「ですがレジナルド様が…」
ニコルは周りに誰もいないかキョロキョロ確認した
「魔獣討伐は私達には出来ません
それにレジナルド様が管理なされているのに勝手に魔獣を討伐しては、レジナルド様のお怒りをかうだけです」
頭に血が上っているドロレスだが、ニコルに言われると確かにまずいと考えた
だがどうにも苛立ちが収まらない
「まずは国王陛下のお返事を待ってはいかがでしょうか?
国王陛下にあの女の処遇もお願いされるのが適切かと思います」
確かにそれが一番簡単だ
国王はレジナルドが魔獣を率いて国家の転覆を企てたりしたら簡単に征服されてしまうのをわかっている
だからドロレスをレジナルドの正妻として送り込み、見張らせ、上手くいけば操ろうと考えたのだ
「あの女を首都で幽閉し監視する事もいいかもしれないわね」
ドロレスは我ながら名案だと、ほくそ笑んだ
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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