95話 案内
ウィルソン城は切り立った崖の上にあり、外壁は崖に沿って作られている
外壁の中に建てられた城は長方形で東西南北の棟から出来ていた
4階建てで1階と2階とは繋がっているため、ぐるっとひと回り出来る
1階は来客を迎えたり客人を通す応接室などがあり、奥には厨房や使用人の部屋などがある
2階は食堂やホールなど多目的な部屋が多い
3階からは各棟は独立しており、東棟はレジナルドが使っている
東棟3階は執務室などがあり、4階がプライベートフロアとなっていた
他の棟は3階・4階とも客間だが、ランク的には北棟、西棟・南棟とランクアップされ4階の方が立派だ
クリスとヴァレンタインは南棟の4階に滞在しているので、レジナルドにとって重要な客人だとわかる
東西南北の棟の真ん中は庭になっていて、ここもかなり広い
庭の中には寒い冬でも植物を育てる為の温室があり、ここは暖かいうえにいろいろな植物があるのでエリザベスのお気に入りの場所だった
「でもこの温室に来るまでが寒いのよ」
エリザベスは文句を言っている
レジナルドとエリザベスは腕を組んで温室へと入って行った
「では渡り廊下を作ろうか?」
「冬でも暖かい渡り廊下じゃないと嫌よ」
「はいはい」
温室の中はかなり広い
中心には噴水まであり、公園の広場のようだ
噴水の側にはテーブルと椅子が準備されていて、侍女達がお茶やお菓子を準備して待っていた
「ここで一休みしようか」
レジナルドがそう言うと使用人たちが椅子を引き、座れるように準備した
エリザベスとクリスはレジナルドとヴァレンタインにエスコートされ席に着くと、レジナルドとヴァレンタインも席に着いた
4人が座ると侍女たちは手際よくお茶の準備を始め、エリザベスは見知った顔に気が付いて声を掛けた
「ローズマリー」
ローズマリーと呼ばれた女性はすっとエリザベスの横に来た
「お久しぶりでございます、ご主人様」
「本当に
しっかりやっているようね」
「はい」
クリスはエリザベスと話しをしているこの女性が誰だかわからなかった
そんなクリスの顔を見たレジナルドは
「この城の侍女長だよ」
と教えてくれた
レジナルドに紹介された侍女長はクリスに向かうと
「初めてお目に掛ります、クリスティーナ様
ご挨拶が遅れて申し訳ございません
侍女長を務めますローズマリーでございます」
とローズマリーは深々と頭を下げた
「初めまして
よろしくお願いします」
クリスは挨拶をしながら、このローズマリーは使い魔である事に気が付いた
かなり精度の高い使い魔なので、一見すれば魔獣に見える
この使い魔は…と考えた時に温室の入口の方で何やら話し声が聞こえてきた
何事かと不思議に思いながら入口の方を見ていると、若い召使が慌てた様子でスコットの側まで来た
そしてスコットに耳打ちをすると、今度はスコットが困った顔になってしまった
「何があったんだい?
まあ、だいたい検討はつくけど」
レジナルドがスコットに聞くと、スコットは困り顔のまま報告を始めた
「はい…お察しの通りかと存じますが、ドロレス様とニコル様がクリスティーナ様にご挨拶をしたいと申されて、こちらまでお出でになられたそうです」
クリスは突然自分の名前が出て驚いてしまった
きょとんとした顔でレジナルドを見ると、レジナルドは片手で頭を押さえながら「ふー」っとため息を漏らした
そしてゆっくりクリスを見ると、レジナルドもまた申し訳ないような表情になっていた
「昨日、玄関で会った魔法使いの令嬢達だよ」
「ああ、あのお二人ですか」
クリスはようやく誰かわかった
だがレジナルドはあまりいい顔をしない
そう言えばレジナルド様は昨日、あの二人にはあまり関わらない方がいいと仰っていたわね
クリスはレジナルドの忠告を思い出した
だがここで二人を門前払いしてはレジナルドの立場も悪いのだろう
そう考えたクリスはにっこりと微笑んだ
「私は構いませんよ」
「そうかい?
出来れば君達には会わせたくなかったんだが…」
そんなに問題児なの?
クリスはこんなに困ったレジナルドを見た事がなかったので、少し不安になってしまった
レジナルドはスコットを見ると
「いいよ、通して」
と許可を出した
スコットが温室の入口に向かうとレジナルドはクリスに簡単に説明を始めた
「ドロレス嬢は国王陛下が私を完璧に支配下に収めるために送り込んだ娘だ
王族の親戚筋で自称私の『妻』と言っている
ニコル嬢はドロレス嬢同様魔法使いで、ドロレス嬢の側仕えとしてここに来ているんだ」
なるほど…
クリスは納得した
国王が送り込んだ令嬢なので、レジナルドも無下には出来ないのだろう
だがエリザベスはこの事を知っているのか心配になり、クリスはちらりとエリザベスを見た
エリザベスは涼しい顔でお茶を飲んでいる
あ、これはすでに一戦交えたのね
クリスは苦笑いしてしまった
しばらくするとスコットに案内されたドロレスとニコルがやって来た
ドロレスはまっすぐレジナルドの側へとやって来た
「レジナルド様、ご案内中のところ申し訳ございません
お庭を散歩していましたら皆様方がこちらに入るところをお見掛けいたしましたので
せっかくですので、皆様にご挨拶申し上げたいと思いまして」
「そうですか」
レジナルドはゆっくり席を立つと、続いてエリザベスにヴァレンタイン、そしてクリスも席を立った
「こちらはドロレス・シンプソン伯爵令嬢とニコル・ヘインズ子爵令嬢」
レジナルドが二人を紹介すると
「ドロレス・シンプソンです」
「ニコル・ヘインズです」
と淑女の礼をした
「こちらはヴァレンタイン・リアム・レイメント伯爵と姉君のエリザベス・エヴァ・レイメント伯爵令嬢
そしてルガード国のクリスティーナ・ルナ・オルドリッジ侯爵令嬢です」
クリス達もレジナルドに紹介されると挨拶をした
「ヴァレンタイン・リアム・レイメントです」
「エリザベス・エヴァ・レイメントです」
「クリスティーナ・ルナ・オルドリッジです」
ドロレスはクリスに向うと
「まぁ、ルガード国のオルドリッジ侯爵家のご令嬢でしたか」
と微笑んだ
クリスも魔法使いの家系は把握しているので、シンプソン伯爵とヘインズ子爵の名前は聞き覚えがあった
「はい、シンプソン伯爵とヘインズ子爵もルガード国では耳に致します」
ドロレスが何の目的でここに乗り込んで来たのかわからないクリスは、当たり障りのない返事だけした
ご精読、ありがとうございます
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次話もよろしくお願いします!
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