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88話 開放

『この人間の娘はまだ未熟なようだ』

ドラゴンは優しい瞳でクリスを見つめた


『マリアの魔力を引き出して使っているようだが、開放は出来ていない

マリアの魔力を開放し、我が物とすればエリザベスの言うように永遠の眠りは来ないだろう』

「どうすれば開放出来るの?」

クリスはドラゴンの鼻を撫でながら聞いた


『ひとつはお前自身が大魔法使いと呼ばれる位まで成長すること』


世の中には大魔法使いは数人いる

だがどの大魔法使いもかなり高齢だ

人間としてはかなり長生きの部類に入る

だいたい120〜150歳だろうか?


そんな歳になってマリア グアダルーペの魔力を開放してほぼ永遠の命を得ても、年老いたクリスの姿でヴァレンタインと共にいる事になる


クリスはヨボヨボになった自分を想像してヴァレンタインの隣に並べてみた


いやいやいや

ヴァルが可愛そうでしょ


クリスは頭をぶんぶん振って、この想像を弾き飛ばした


「他にも方法はあるの?」

クリスが聞くとドラゴンはじっとクリスを見た


『ある

だがお前は永遠と言える程の生命を得たいのか?

マリアですら手放したのだぞ?』


ドラゴンの瞳は本当に心配しているのがわかる

きっとマリア グアダルーペを見てきたからなのだろう


「ドラゴン、クリスはヴァルと一緒に生きたいと願っているの」

エリザベスがドラゴンの首元で見上げながら教えた

ドラゴンは顔は動かさずに目でエリザベスを見た後、ヴァレンタインを見た


『ヴァレンタインと共に生きたいのか』

「はい」


ドラゴンはまたじっとクリスを見た

『…いいだろう』

ドラゴンが言い終わると同時に、どん!という音と共にまばゆいばかりの光が天からクリスへと落ちた

まるで雷が落ちたようだ

「きゃ!!」

「クリス!」

ヴァレンタインは慌ててクリスに近づこうとした

だがクリスは空中に浮いてドラゴンの顔の前にいる

ヴァレンタインは空を飛ぶために魔獣へ姿を変えようとしたが、ヴァレンタインの腕をぐっと握る者がいた

レジナルドだった

「大丈夫だよ」

レジナルドに言われて、ヴァレンタインは上を見上げた

クリスは相変わらず光に包まれている


一瞬、衝撃はあったものの痛みなどはなかった

クリスの身体は光に包まれきらきらと光っている

光の中でクリスは水をすくうような仕草をした

両手からはきらきら光る水のような物がさらさらとこぼれ落ちた

「これは?」

『解放したマリアの魔力だ

娘よ、この溢れ出る魔力を制御せねばならぬぞ』

「こんなに一杯…!どうやって制御すればいいんですか?」

クリスはあたふたしながらドラゴンを見た


ドラゴンは優しい瞳で、まるで微笑んでいるようだ

『オレが導く

さあ、さっきのようにオレに触れるのだ』

ドラゴンに言われ、クリスは恐る恐るドラゴンの鼻先に手を置いた


『こうやるのだ』

まるで何か強い力に吸い込まれるように魔力はクリスは身体の奥へと消えてしまった

すると光は消え、辺りは何事もなかったかのような状態に戻った


『わかったか?』

「はい、たぶん」

『ではお前を浮かせている浮遊魔法を解くぞ

自分で飛ぶのだ』

「え?」

ドラゴンは言い終わると同時に魔法を解いてしまった

クリスはひゅっと下へ落ちてしまった


「クリス!」

ヴァレンタインが手を伸ばし魔法で受け止めようとしたが、落下していたクリスの身体はフワリと浮いた


び、びっくりした

ドラゴン…スパルタすぎるわ


クリスは宙に浮きながら、どきどきしている心臓を押さえた


『うむ、上手いぞ』

ドラゴンに言われるとクリスはふわりと上昇し、ドラゴンの顔の前に戻った

「ドラゴンが教えてくれたからです」

『そうか』

ドラゴンは満足そうだ


『お前は永遠と言っても良い時間を手に入れた

魔獣のヴァレンタインに勝る時間だ

いつかヴァレンタインが己の寿命を全うし、お前ももう時間が必要ないと思えばまた来るが良い

オレがその魔力を再び封印してやろう』

「ありがとう、ドラゴン」

クリスはそう言うとドラゴンの鼻先に抱きついた


ドラゴンは驚いて目を丸くした

遥か遠い昔、こんな風に抱きついてくる人間がいた

ドラゴンは懐かしさで、目を細めた


『オレの名はジェレマイアだ

何かあれば呼ぶがいい

必ず駆けつけよう』

「ありがとう、ジェレマイア

私もまたここに来てもいい?」

『ああ、いつでも来るがいい』


クリスはもう一度、ドラゴンに抱きついた


『さあ、もう行くがいい

オレはもう眠る』

「うん、ジェレマイア

また来るから

おやすみ」

ドラゴンは一度目を細めて微笑んだように見えた

そしてウトウトと目を閉じてしまった


クリスは浮遊魔法を使い、ヴァレンタインの元へと戻った

ヴァレンタインは近くまで降りてきたクリスの腰を両手で受け止めた

クリスはそのままヴァレンタインに抱きついた

「ヴァル、ずっと一緒にいてね」

ヴァレンタインもクリスを抱きしめた

「もちろんだ」


クリスとヴァレンタインはしばらく抱きしめあった


「それでは戻ろうか」

レジナルドに言われ、クリスははっと我に返った


皆が見ている前でヴァレンタインと抱き合ってしまった

クリスは今さら顔が赤くなってしまうと、慌ててヴァレンタインから離れた


ヴァレンタインは「ちえっ」と言いながらぼん!と魔獣へと姿を変えた


ハーバートがブーンと飛び立つと、魔獣の姿になったエリザベスとレジナルドもふわりと飛び立った


「クリス、乗れ」

クリスは浮遊魔法が使えるようになったので、ヴァレンタインに乗らなくても移動は出来る

だがクリスはあえて浮遊魔法は使わず

「うん」

と言うとヴァレンタインの背中に乗った


クリスが乗るとヴァレンタインもふわりと飛び立った

クリスは眼下で眠るドラゴンを見た

まるで大きな岩のようだ

丸くなって寝ているあたりはネコに似ている


「おやすみ!

必ずまた来るからね」

クリスがそう叫ぶと、ドラゴンは片目だけ少し開けてクリスを見た


クリスはドラゴンに向ってぶんぶんと手を振って遠のいて行くのだった

ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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