表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/107

87話 ドラゴン

「ドラゴン、起きろ

私だ、レジナルドだ」

レジナルドが言葉を掛けたがドラゴンは姿を現さない


「ドラゴン、久しぶりね

ドワーフの造り物を持って来たわ」

続いてエリザベスも声を掛けるがやはりドラゴンは現れない


クリスは不安になった

「現れないわね」

隣にいるヴァレンタインにそう言うと、ヴァレンタインは「ああ」と気が付いたように頷いた

「ドラゴンは寝起きが悪いんだ」


にしても、全く現れる気配がない

だがエリザベスは手土産のドワーフの造り物を召喚した


エリザベスの手にはサークレットやネックレス、ブレスレットなど沢山の装飾品がある


遠目で見ても立派な細工が施されている事がわかる上に、ふんだんに宝石も使われている


「ドラゴン、ここに置いておくわね」

エリザベスはそう言うと、召喚した装飾品をまるでテーブルのような大きなクリスタルの上へと移動させた


よく見るとクリスタルの根元は装飾品や宝石の原石などでびっしり埋め尽くされている


「え!?

ここ一面、全部宝石とか装飾品なの!?」

クリスタルが地面を覆っているのかと思っていたが、実は装飾品で埋め尽くされていて、そこからクリスタルが生えているかのようだ


あまりにも膨大な宝石や装飾品にクリスは言葉を失ってしまった


今、立っているこの丘だけが岩肌がむき出しで異質な感じがするほどだ


「すごいたくさん集めたのね」

クリスの感想にヴァレンタインは辺りを見渡した

「そうだな

ドラゴンは光り物や鉱物が好きだからな

ここで眠ってる方が長いから、いつの間にかこんなに集まったんだろ」


ヴァレンタインは言われてみれば確かに多い事に気が付いた

ここにはたまに訪れていたので、この光景が当たり前だった

クリスに「多い」と言われるまで気にした事がなかったのだ


「相変わらずドワーフやエルフも光り物をここに持って来ているからね

いつの間にかこんなになったんだ」

ハーバートも辺りを見渡しながら教えてくれた


「私、ドワーフやエルフを見たことないわ」

最近、妖精がいる事も知ったのだ

人間は妖精同様、ドワーフもエルフももういないと考えていた


「僕達と同じだよ

人間から距離を取って、ちゃんと暮らしているよ」

「そうなんですか」


やはり妖精同様、どこか別の空間にいるのかもしれない

だがそれを聞くとハーバートが嫌がるだろうと考えたクリスは何も聞かなかった


「でもドラゴンはこんなに…」

クリスがそう言いかけた時、クリスの背後の随分離れた所で大きな影がゆらりと動いた


『レジナルド、久しいな』

どっしりとした太い声が頭の中に響き、クリスは驚いて振り返った


ドラゴンだ

長い首をひねって、こちらの方を見ている

よく見ると長い首の根元は自分達が立っているこの丘と繋がっていた


クリスはドラゴンの首元から自分の足元までをすーっと見た

「え!?

ここってドラゴンの背中なの!?」


ヴァレンタインはニヤニヤしながら頷いた

「そうだ

やっと気が付いたか」

「えーっ!!」

クリスは思わずヴァレンタインにしがみついてしまった


『エリザベスも久しいな

ヴァレンタイン、お前達はいつも一緒だな』

「ドラゴン、久しぶりね」

「やっと起きたか」

ヴァレンタインはしがみついているクリスの腰に手を回し、支えている


ドラゴンはじっとクリス達を見ている

とても優しい目だ

大きな身体に岩のような固い鱗

だがそんな厳つい身体に対して目はとても穏やかだった


突然、クリスの身体がふわりと浮いた

「きゃっ!」

「クリス!」

ヴァレンタインが叫びながらクリスに手を延ばしたが、クリスはあっと言う間にドラゴンの顔の前まで飛ばされてしまった


ドラゴンの顔の前に来たクリスはゴクリと生唾を飲んだ

ドラゴンの顔だけでも魔獣のヴァレンタインよりはるかに大きい

あまりの大きさにクリスは冷や汗が流れた


『ああ、間違いない

マリアだ』

「え?」


「この人間の娘の魔力は先祖返りした物ではないのかい?」

ドラゴンの首元まで来たレジナルドが聞いた


ドラゴンは顔は動かさずに、瞳だけレジナルドに向けた

『違う

マリアそのものだ』

「マリア…マリア グアダルーペか

そのものとはどういう事か?」

レジナルドの質問にドラゴンは瞳をクリスに戻した


『マリアの魔力は湧き出る泉のような物だった

マリアは人間だが、その底なしの魔力の為にずっと生き続けていた

膨大な魔力は魔獣や魔法使いを生み出したが、それでもマリアの魔力は尽きる事はなかった』


ドラゴンは懐かしい物を見るような目でクリスを見た


『マリアは疲れたと言った

眠りたいと

だがマリアの魔力は彼女を永遠に眠らせる事をさせなかった

マリアはオレの力を借り、魔力を封印した

そしてマリアはようやく永遠の眠りについた…』

ドラゴンの瞳は悲しそうになった


クリスは思わず、そっとドラゴンの鼻先を触った

何故か、ドラゴンがとても寂しそうに思えたのだ


『オレはずっとここでマリアが遺した魔力を守っていた

だが…ある時、魔力はこの場から消えた

しばらくすると外の世界でマリアに似た魔力を感じた

きっとマリアの魔力を受け継ぐ者が現れたんだと思った』

ドラゴンはじっとクリスを見た


「え!?私?」

クリスはまさかと思いつつ確認した

『そうだ

お前の奥からマリアの魔力が感じられる』

「なるほどね

それでマリアそのものなのか」

レジナルドは納得した


「どうして私に?」

『それはわからない

お前の魂の波長がマリアと似ているのか、魔力の質が似ていたのか…

色々と考えられるが、なぜマリアの魔力がお前に移ったのかハッキリとした答えはわからない』

「そうなんですか…」


クリスは自分にマリア グアダルーペの魔力があると言われてもピンと来ない


「ドラゴン、この娘からマリア グアダルーペの魔力を取り上げる事は出来ないのか?」

ハーバートはたかが人間が偉大なマリア グアダルーペの魔力を受け継いでいるなど、許さないのだ


ハーバートの質問にドラゴンは優しく答えた

『出来る

だがマリアの魔力がこの娘を選んだのだ

この娘がマリアのように魔力を取り上げてくれと言わない限り、オレは何もしない』


ハーバートはショックを受けた


「ドラゴン、クリスはマリアのように永遠の眠りからは遠い存在なの?」

『いや…

今はまだ』

「今は?」

珍しくエリザベスが首を傾げたのだった






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ