84話 大人
クリスとヴァレンタインはユニコーンに乗り、湖の上を走っていた
「すごいわ!
湖の上を駆けている!」
クリスは大はしゃぎだ
「なんだよ、俺に乗ってるのと同じ事じゃないか」
ヴァレンタインはクリスが大喜びしているのでぶすっとしている
「それはそうだけど…
だってユニコーンはほとんど馬だもの
馬が湖の上を走ってるようで感激しちゃうのよ」
クリスはユニコーンを駆足から常歩へと変えた
クリス達の後には他の4頭のユニコーンも付いて来ている
「私達をそこらの馬と一緒にしないでよ」
「そうだよ、僕たちは魔力があるんだから」
「私達は他の馬とも仲はいいのよ
魔力があるからって、決して奢ったりしないわ」
「むしろ魔力がある為に普通の馬より働いているくらいよ〜」
「そうだよ、のんびりしたいよね」
後ろから付いて来ているユニコーン達はぎゃあぎゃあ騒いでいる
クリスはユニコーンのイメージがガラガラと崩れてしまったが、これはこれで可愛いから良いか、と思っていた
「皆は普段、レジナルド様の土地にいるの?」
「そうだよ」
「レジナルドは僕たちを守ってくれるんだ」
「自然も多いし、こっちほど暑くないから過ごしやすいよ」
ひとつ質問すると、ユニコーン達は皆で一斉に返事を返してくる
「暑くはない
北の地が寒すぎるだけだ」
ヴァレンタインはまだぶすっとしている
「寒くないよ」
「ヴァレンタインが寒がりなのよ」
「違う、お前達が暑がりなんだ」
ユニコーンとヴァレンタインは言い争いを始めた
「ヴァルは北の地へ行った事があるの?」
話しっぷりから、クリスはヴァレンタインが北の地へ行った事があるのだろうと推察した
「ああ、一度だけな」
「大変だったよー」
「そうだよ!ヴァレンタインがレジナルドの城を暖かくするから色んな物が溶けちゃってさー」
「エリザベスは不機嫌になっちゃうし」
ユニコーン達はぎゃあぎゃあ文句を言い始めた
「も〜、うるさいな
北の地は寒すぎるんだよ」
「ヴァレンタイン達がもう少し寒さに強ければ、エリザベスとレジナルドも一緒に暮らせるのに〜」
ん?
何か今、とんでも発言があったような?
クリスはユニコーンの言葉を色々な角度から考えた
たが『一緒に暮らす』から連想出来る答えはひとつしかない
「え?
ベスとレジナルド様って…」
クリスが恐る恐る聞いた
「付き合ってるよー」
「違う、結婚してるんだ」
「結婚じゃないよ!」
「まあ、でもそんな感じだよね〜」
「そっ、そうなの!?」
クリスは驚いてヴァレンタインを見た
「ああ、あの2人はかなり昔から付き合ってるよ」
ヴァレンタインはさも当たり前のように答えた
「知らなったわ!
って言うかあの2人、付き合っているようには全然見えなかったわよ?」
「随分長い付き合いになるから」
ヴァレンタインがそう言うと、ユニコーン達も話し出した
「レジナルドとエリザベスは大人なんだよ」
「そうそう、落ち着いているもんね」
「でもこの前、エリザベスの屋敷で2人で散歩してたの見たよ」
「えっ!?」
ユニコーンの目撃情報にクリスは驚いた
するとユニコーン達は更に目撃した事を話し始めた
「ベンチに座ってた時は手を繋いてたよ」
「ベスがか!?」
姉の恋バナに今度はヴァレンタインが驚いた
「そうそう、僕も見た」
「その後…」
「ちょっと待って!」
クリスがユニコーン達を止めた
クリスの顔は赤くなっている
「ぷっプライベートな事だからこれ以上はいいわ」
「そうなの?」
ユニコーン達は残念そうだ
「でもヴァル、ハーバート様はその事を知らないのね?」
「ああ、そうだな」
「教えてあげなくていいの?」
「人の恋路に首を突っ込みたくない
馬に蹴られて死んでしまうぞ」
ヴァレンタインのこの言葉にユニコーン達が反応した
「失礼だな、ヴァレンタイン!」
「そうよ、私達はそんな事しないわよ」
「普通の馬だってしないよ」
ユニコーン達がぎゃあぎゃあ文句を言うので、ヴァレンタインの方が負けてしまった
「ああ、わかったよ
ごめん、ごめん」
「心がこもってない!」
「うん、そう聞こえた」
「お前らな~」
ヴァレンタインとユニコーン達はまた言い争いを始めた
クリスはそんな騒がしい中で考え込んでしまった
ハーバート様、あんなにベスを想っていらっしゃるのに…
だが確かにヴァレンタインの言うように、人の恋路に干渉はしない方がよい
それにユニコーン達が言うように、エリザベスもレジナルドも大人だ
子供のクリスが口を挟める事ではない
「ハーバート様も随分昔からベスの事が好きなんでしょ?」
「そうだな~
でも俺達やレジはマリア グアダルーペのいた時代からの付き合いだし…
ベスとレジがいつから付き合ってたのかは知らないけど、ハーブと会ったのは最近だしな」
「ヴァルの最近っていつくらいなのよ」
「ざっと300年くらいかな?」
「それ、最近て言わなわよ」
時間の感覚の違いにクリスは呆れてしまった
「でもハーバート様は300年近く、ベスに片想いをしていらっしゃるの?」
「そうなるな」
ヴァレンタインは笑っている
いや、笑いごとじゃないでしょ
クリスは心の中でつっこんだ
「昔からレジナルド様は北の地を統べていらっしゃたの?」
「そうだよ」
今度はユニコーンが答えた
「本当に大昔は俺達とレジで縄張り争いもしていたよ」
「え~ヴァレンタイン達は寒がりなのに、北の地も縄張りにしようとしてたの?」
「いや、境界線あたりで争ってた
でも俺達が北上しない事がわかったら、レジとの縄張り争いもそれで終わったんだ」
「それから交流が始まったの?」
クリスは珍しい大昔の最上級の魔獣の縄張り争いに興味が湧いた
「そうだな
境界線ってのはハッキリとしていないから…
お互いに遣いを送ったり直接会ったりしているうちにベスとレジは仲良くなったんだ」
この前ヴァレンタインとレジナルドの模擬戦を見たが、かなり抑えた戦い方だったらしい
それでもかなりの迫力だった
それなのにこの3人が本気で戦っていた事があるなんて…
その頃は争いが起きるたびに大変だったでしょうね
縄張り争いが大昔で良かったと考えるクリスだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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