77話 魔力
翌朝、レジナルドは滞在している部屋のテラスへと出た
まだ朝日が昇りきっていないので、空気がひんやりしていて気持ち良かった
比較的温暖なこの辺りは北の地に住むレジナルドにとっては暑いくらいだ
涼しい時間帯ならばこうやって外に出る事も出来るが、日中は空気を冷やして涼しくしてあるこの部屋から出るのは止めておくか、とレジナルドは考えていた
逆にエリザベスが以前レジナルドの城に来た時は、エリザベスは部屋を暖かくして外へは出なかった
あの時は冬だったからな
と思い起こしてレジナルドはくっくと笑った
あまりの寒さにエリザベスはキレてしまい、機嫌を取るのが大変だった
今度は夏に招待しようか?
夏ならば今のこの辺りの気候と似ている
ヴァルとクリスティーナ嬢の新婚旅行に来てもらっても良いな
なんて事をレジナルドは楽しみにしながら考えていた
「さて、着替えようか」
レジナルドがそう言うと、後ろで控えていたレジナルドの使い魔の側仕えが準備を始めた
♪♫♬ ♬♫♪
レジナルドが朝食を頂くため食堂に来ると、すでにエリザベスが食事を取っていた
レジナルドはエリザベスの向かい側に座ると
「ベス、君にしては早い時間の朝食じゃないかい?」
と聞いた
エリザベスはフォークを置き、一口水を飲んだ
「ええ、貴方に話しがあったのよ」
「ほう、何かな?」
「クリスの寿命の件よ
貴方の考えている方法を知りたいの」
「なるほど」
2人で話しをしていると、使用人がサラダを持って来てグラスに水を注いだ
「私は人間の寿命を延ばすような魔法を知らない
だが妖精は『祝福』という物を与えてその寿命を延ばす事が出来る
それと同じような事が出来る者に遣いを出しただけだよ」
レジナルドの話しを聞き、エリザベスはレジナルドをじっと見つめた
「ドラゴンね」
やはり気付いていたか、とレジナルドは満足げに微笑んだ
「そうだよ、ベス」
だがエリザベスの顔は険しいままだ
「ドラゴンと人間の相性は最悪よ
妖精より訳が悪いわ」
「そうだね」
レジナルドはペロリとサラダを食べてしまうと、使用人は焼き立てのパンとハムエッグやベーコン、ソーセージなどが盛られたお皿を持って来た
「無理を承知でドラゴンに頼んでみるの?」
「いや」
レジナルドはソーセージをパクリと食べた
肉汁が溢れ、とても美味しい
「クリスティーナ嬢の魔力の話しをする
もともとドラゴンは外の世界での異質な魔力が気になり私を呼んだんだ
その異質な魔力・太古の魔力がクリスティーナ嬢からだと話せば必ずドラゴンは興味を持つ」
「なるほどね
でもそれだけではドラゴンは私達の望む事をしてくれないわ」
レジナルドはフォークをお皿に置くと、真面目な顔でエリザベスを見た
「ベス、これは私の憶測だが…」
「…ええ、何?」
「クリスティーナ嬢は先祖返りではなく、マリア グアダルーペの魔力を受け継いだのではないかな?」
「マリア グアダルーペの?
それは無理でしょう
マリア グアダルーペが死んだのは随分昔よ
今更、彼女の魔力だけが現れるなんて…」
「確かにね
ただ、マリア グアダルーペは異質な魔法使いだった
僕達に魔力を与えたりもした
彼女の死と共にあの膨大な魔力が消えたのかな?跡形もなく?
もしかしたらマリア グアダルーペはあの膨大な魔力を引き受ける事が出来る器が現れるのを待っていたのではないかな?」
「…」
「そこでドラゴンだ
奴ならそれがわかるはずだ」
「なるほどね」
エリザベスは頷いた
「もしも、だ
もしクリスティーナ嬢の魔力がマリア グアダルーペの物ならば、それを完全に開放すれば彼女はマリア グアダルーペと同等の魔力を手にする事になる
同時に寿命もね」
エリザベスは少し考えた
「マリア グアダルーペは確かに人間だったけど、その魔力で寿命は長かったわ
でも死んでしまった」
「それは君も知っての通り、彼女がそれを望んだからさ」
そう、マリア グアダルーペは長く生きて来たため、自ら眠りについた
私達は同じ種族の魔獣がたくさんいて気付かなかったけど、マリア グアダルーペは一人だった
人間の魔法使いは若干、寿命が長い者もいたけどマリア グアダルーペ程ではなかった
だから彼女は一人で淋しさに耐えきれずに自ら眠りについた
「だがクリスティーナ嬢にはヴァルや君がいる
もちろん私もいるけどね」
レジナルドは楽しそうに笑った
「でもそれはあくまでクリスの魔力がマリア グアダルーペの物だったら、の話しでしょ?
もし違っていたらどうするの?」
「それこそ、ドラゴンを説得するさ
奴にも寿命を延ばす事は出来るからね」
「説得できる?」
「そうだね…
今のクリスティーナ嬢の状態でもマリア グアダルーペの魔力を感じさせるからね
ドラゴンはマリア グアダルーペには忠実だった
そこを利用して説得するしかないね」
エリザベスはふうっとため息を漏らした
「あの頭の固いドラゴンを説得するの?
骨が折れるわよ」
レジナルドは楽しそうに笑うと
「なに頭が固い分、ヤツはマリア グアダルーペの事になると一途だ
何とかなるよ」
「貴方は相変わらず楽天家ね
ヴァルとよく似ているわ」
「ヴァル程じゃないよ」
レジナルドは少々不満気に笑った
♪♫♬ ♬♫♪
ハーバートは食事を終えると、部屋へ帰ろうとした
するとレジナルドの側仕えの使い魔が食堂の外で待っていた
「ハーバート様、我が主がお話しがあるそうです
ハーバート様がご滞在のお部屋への訪問を望んでおりますが、お許し願えますでしょうか?」
ハーバートはレジナルドがドラゴンに会いに行くと言っていたので、このような申し出が来る事は予測していた
「ああ、構わないよ」
「ありがとうございます
では後ほどお伺いさせて頂きます」
レジナルドの使い魔は丁寧にお辞儀をした
ハーバートはそんな使い魔の横を通り過ぎ、そのまま自分が滞在している部屋へと向かって行くのだった
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