76話 手段
「クリスティーナ嬢の寿命?」
レジナルドが不思議そうに聞いた
「そうよ
クリスはヴァルの伴侶としてずっと一緒にいると決めたのよ」
「ほう」
エリザベスの説明を聞き、レジナルドはクリスを見た
「私、ヴァルに悲しい思いをさせたくなくて…
今までたくさん別れがあったと思うけど、そんな辛い別れをさせたくないんです」
レジナルドはクリスの思いを聞くと、顎に手を当てて
「なるほどな」
と納得した
「妖精の祝福を受けるという手段がある」
レジナルドの答えにクリスやエリザベス、そしてヴァレンタインは顔を見合わせた
そしてヴァレンタインがため息混じりで首を横に振った
「レジも知っているだろ?妖精の人間嫌いを」
「ああ、もちろんだ
拒絶されたのかい?」
「まあな」
レジナルドは「ふむ」と考えた
「ハーブがここにいるね?
何故だい?」
すごい、レジナルド様!
私の魔力やハーバート様がここに居る事に気付くなんて
クリスはレジナルドの底知れぬ魔力に驚いた
レジナルドはヴァレンタインやエリザベス同様、マリア グアダルーペとも顔見知りだと聞いていたが、もしかするとレジナルドはヴァレンタイン達より格上かもしれない
「ハーブの奴はベスを怒らせたんだ
だから慌ててここまで追いかけて来たんだ」
ヴァレンタインの説明にレジナルドは一旦目を丸くしたが「くっく」と口元を隠して笑った
「なるほどな
その時のハーブの顔が目に浮かぶよ」
「まあ、最初から妖精の祝福は当てにしていなかったわ
他に何か良い手段がないかと貴方に遣いを送ったの」
エリザベスは妖精の村に行った時の不愉快さを思い出したのか、少し不機嫌ぎみになってしまった
「うーん、そうだね…」
レジナルドは腕を組み、天井を見上げながら考えた
「クリスティーナ嬢、君は本当にヴァルと一緒に居たいと願っているのかね?」
「はい、もちろんです」
「親や兄弟、知人が自分を残して次々といなくなる事はとても辛い事だ
その覚悟があるかい?」
レジナルドは真面目な顔でクリスに聞いた
クリスは大きな瞳でレジナルドを見つめると
「はい」
とはっきり返事をした
「ふむ…」
レジナルドは再び、顎に手を当てると考え込んだ
「他に手がない事はない
ただ…少し考えさせてくれないかい?」
「なんだよ、レジ」
ヴァレンタインが不満を露わにした
レジナルドはそんなヴァレンタインを困ったように見た
「いや、時間はかからないよ
ただ私一人では決められない事なんだ」
「誰かに手伝ってもらうの?」
「妖精の祝福と同じだよ
ただやはり人間は嫌われている
受け入れてくれるかわからないな」
ここまで皆から嫌われるなんて、大昔の人間は何をやったんだか
クリスはご先祖様達の所業を恨んだ
レジナルドは右腕を伸ばすと、その腕に鷹が現れた
使い魔だ
鷹の使い魔はばさりと飛び立つと壁をすり抜けて飛んで行ってしまった
「話しをしてみるよ」
レジナルドは心配そうに見つめるクリスに顔を向けた
「大丈夫だよ
上手く説得するから」
レジナルドが優しく微笑んでそう言ってくれたので、クリスはほっとした
「よろしくお願いします」
クリスがそう言うと、エリザベスはキッとヴァレンタインを睨んだ
「ほら、ヴァルもちゃんとお願いしなさい!」
「お、おお」
エリザベスに叱られ、ヴァレンタインは迫力に押されてしまった
「レジ、頼むよ」
レジナルドはクリスとヴァレンタインを見ると、ニッコリと微笑んだ
「ああ」
寿命の長い魔獣は子孫を残す事に関してはハッキリ言って無頓着だ
だがこの若い魔獣はそうではない
レジナルドはヴァレンタインとクリスが末永く幸せでいて欲しいと願い、一肌脱ぐ事にしたのだった
♪♫♬ ♬♫♪
夕食の時間になり、食堂にはヴァレンタイン、エリザベス、クリス
そして客人としてレジナルドとハーバートが居た
「この屋敷がこんなに賑やかになるのは久しぶりだ
レジもハーブもゆっくりしていってくれ」
ヴァレンタインがワインを片手で持ち、レジナルドとハーバートに向かってグラスを少し上げた
「しばらくお邪魔するよ」
「僕もよろしくお願いするね」
レジナルドとハーバートも同じようにグラスを持ち上げると、ヴァレンタインに向かって返事をした
「じゃあ頂こうか」
ヴァレンタインがそう言うと食事会が始まった
レジナルドは隣に座るハーバートを見た
「ハーブ、久しぶりだね」
「うん、そうだね
君が北の地を離れるとは珍しいじゃないか」
「ああ、ドラゴンに呼ばれたんだ」
「ドラゴンに!?」
ハーバートはちらりとクリスを見た
そんなハーバートに気付いたレジナルドは
「大丈夫だよ
さっきその事は皆に話しをした
クリスティーナ嬢は分別のある令嬢だ
無闇に立ち入った事を聞いてきたりはしないよ」
とハーバートの心配は無用だと話した
「そう…なんだ」
「だが、たぶん…」
レジナルドはそこまで話すと使用人がオードブルを運んで来た
「ああ、すっかりお腹が減ってしまったよ
手土産に北の地にいるアザラシの肉を持って来たんだ
今日のアントレに出して貰えるように頼んだから」
「アザラシですか?
私、食べた事がありません」
「私達もよ
楽しみね」
クリスとエリザベスはわくわくしている
「北の地ではアザラシは貴重なタンパク源だ
私は明日の夕食に頼んだ子羊の肉の方が楽しみだよ」
「明日は子羊なの!?」
クリスは嬉しそうだ
「そうよ
アザラシは私が頼んだの
だからレジのリクエストを聞いたら子羊がいいって言うから」
エリザベスはそう言うとレジナルドに向かって「ね?」というようにアイコンタクトを送った
レジナルドもうんうんと頷いている
「僕は肉は食べないからなぁ」
ハーバートが残念そうに言うと、レジナルドはにっこり微笑んだ
「大丈夫だよ、ハーブ
北の冷たい海に生息する魚も持って来ている
身が引き締まってとても美味しい魚だ
楽しみにしていてくれ」
「それは有難いな」
レジナルドの気遣いにハーバートはお礼を言った
だがハーバートにとってレジナルドは邪魔者だ
早くこの屋敷での滞在を終えてもらいたい
ハーバートのそんな気持ちを知る由もない4人は楽しく夕食を頂くのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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