71話 告達
午後のティータイムが終わり、クリスとヴァレンタインは庭園に出て魔法の練習をしていた
エリザベスは侵入者とはいえ、妖精王のハーバートが来ているのだ
ハーバートを放っておく訳にもいかず、庭園を案内していた
ハーバートは最初、クリスとヴァレンタインの魔法の練習を見学していたが、今はエリザベスの案内で庭園を散策している
妖精王のハーバートにとってクリスの使う魔法は子供レベルだ
そんな練習を見ていてもつまらないので、庭園を見てみたいと申し出たのだ
クリスが太古の魔法を使える事は黙っておいた
もしハーバートに知られたらきっと良い顔をしない
『人間ごときが太古の魔法を使えるなんて』と人間嫌いのハーバートが言い出しかねないので、黙っている事にした
エリザベスがクリスとヴァレンタインが練習している場所から少し離れた所まで案内すると、ハーバートはきちんと手入れをされている庭園を嬉しそうに眺めた
「ちゃんと手入れが行き届いているね
草や花も喜んでいるよ」
「そうなの?良かったわ」
自然と共にある妖精には草花の状態がわかるらしい
そんなハーバートに草花が喜んでいると言われるとエリザベスも嬉しくなった
「この先に池があるわ
そこまで行ってみましょうか」
「ああ、お願いするよ」
池まで行けばそこには東屋がある
そこで休憩にしようかしら、と考えなからエリザベスは歩き始めた
「そういえば、ハーバート
貴方は1人でここに来たの?」
「そうだよ?
どうかしたかい?」
「いえ、それじゃあ今頃シドは大騒ぎしているでしょうね」
「シドに話したらうるさいからね
黙って1人で来たんだよ」
妖精王であるハーバートに敵う者などそういないが、それでも王が1人で行動するとは…
シドは今頃大慌てでハーバートを追跡しているだろう
「池の側に東屋があるの
そこで一休みしましょう」
「いいね」
ハーバートは幸せの絶頂だった
愛しのエリザベスと二人きりでこうやって散歩が出来るなんて!
東屋に着くとハーバートとエリザベスは池に向って座れるベンチに座った
「水もとても美しいね
いい庭園だよ」
「妖精王に褒めてもらえるなんて光栄だわ
ありがとう」
エリザベスの微笑みにハーバートは顔が熱くなるのを感じた
池の周りの木々には小鳥が囀り、池には渡り鳥が訪れている
はるか上空には鷹も飛んでいる
こんな自然豊かな場所でエリザベスと二人きりなんて…
ハーバートは幸せに浸っていたが『ん?!』と不審に思った
鷹?
ハーバートは立ち上がり東屋の窓から上半身を出して上空を見た
やはり鷹が旋回している
エリザベスも気づいているようだ
ニッコリ微笑むと右腕をすっと伸ばした
すると鷹はゆっくり高度を下げると、どんどん近づいて来る
東屋の屋根に留まるのかと思ったが、鷹は東屋の屋根をすり抜けるとエリザベスの腕にばさりと留まった
エリザベスは鷹を見つめると
「早かったわね」
と話し掛けた
すると鷹はぼん!と煙を立てると巻紙に代わった
やはり使い魔だったか
ハーバートはそう考えながら手紙を読んでいるエリザベスの隣に座り直した
エリザベスが手紙を読み終えると、手紙はぼん!と煙を立てて消えてしまった
「何か急ぎの用件だったのかい?」
ハーバートがそう聞くと、エリザベスは首を横に振った
「いえ、そんなに急ぎではないけど…
3日後にレジがこちらに来るそうよ」
「レジナルドが!?」
「ええ
たまたまこちらに出向く用事があったそうなの
そしたらタイミング良く私からの連絡が来て…
本当は別の場所で滞在予定だったけど私の呼び出しがあったから、ここに滞在しても良いかって聞いて来たのよ」
「ここに滞在!?」
ハーバートの怒りの形相にエリザベスは「?」となってしまった
「まさかそんな申し出を受けるつもりじゃないだろうね!?」
「もともと私がこちらに来てってお願いしたのよ
滞在を断る訳ないでしょ」
ハーバートは口をパクパクさせたが、何も言えずにふーっとため息を漏らした
「エリザベス、僕も久しぶりにレジナルドに会いたいな
僕も滞在を許してくれないかい?」
「ええ、それは構わないけど…
クリスもいるわよ?」
ハーバートは少し躊躇したが
「僕が滞在をお願いしているんだ
構わないよ」
と笑顔で答えた
「シドが気の毒ね
貴方の痕跡を追跡して来るでしょうけど、難しいわね
しばらくここに滞在する間にたどり着けるかしら?」
「まあ無理だろうね」
「ふふっ、何日も貴方が帰らなかった時のシドの青ざめた顔が目に浮かぶわ」
エリザベスは意地悪な笑みをこぼした
だがエリザベスはすぐにベンチから立ち上がった
「それじゃあ、貴方とレジの部屋の準備をさせなきゃ
屋敷に戻りましょう」
「ああ、お願いするよ」
そう言うと、ハーバートも立ち上がり2人は屋敷へと戻って行った
♪♫♬ ♬♫♪
夕食の時間になり、食堂にはエリザベスとヴァレンタインとクリス
そしてハーバートも席に着いていた
上座にはヴァレンタインが座り、ヴァレンタインの左側にエリザベス、クリスと続いている
ハーバートはエリザベスの向かい側に座っていた
普段はクリス達3人だけなので普段着で食事を取っているが今日は妖精王・ハーバートが来ているので、3人はそれなりの服装をしている
エリザベスは細身のスタイルを活かしたスラリとしたクリーム色のドレスを着ている
クリスはふわりとしたルガード国風の水色のドレスを着ていた
ヴァレンタインは濃い紫の礼服を着ている
ハーバートも妖精独特の服装だが、昼間は無地の生地を身体に巻き付けてシンプルな帯で留めていたが、今は細かい刺繍いりの生地に帯も金の糸で刺繍が入った物を使っている
首飾りやブレスレットも宝石を利用した豪華な者を着けていた
使用人の使い魔が前菜を運んで来ると、それぞれの前に並べた
ヴァレンタインは使い魔が淹れてくれたワインを持ち上げると
「ようこそ、ハーバート
妖精王のお口に合えばいいが、何か都合の悪い物があったら言ってくれ」
とハーバートに向かって挨拶をした
ハーバートもワインを持ち上げると
「ありがとう、ヴァレンタイン
急な申し出を受け入れてくれて感謝しているよ
しばらくお世話になるけど、よろしくね」
と返事をした
「それじゃあ、頂こうか」
ヴァレンタインがそう言うと、食事が始まるのだった
ご精読、ありがとうございます
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