68話 辛辣
「僕がこの子に祝福を?」
「そう」
「この人間に?」
「そうよ」
「……」
ハーバートはエリザベスに確認をすると、黙ってしまった
しばらく沈黙が続き、ハーバートは頭を押さえてため息を漏らした
「エリザベス、たとえ君の願いでもそれは出来ないよ」
「でしょうね」
どうやらエリザベスはすんなり祝福を授ける事がないとわかっていたようだ
だがここにそれをわかっていない者がいた
「何だよ、ケチケチするなよ」
ヴァレンタインだ
クリスは慌ててヴァレンタインの腕を掴んだ
そんなクリスを見て、ヴァレンタインは「?」となっている
「妖精達の人間嫌いはよく知っているわ
突然来て、人間に祝福を与えろって言ってもすんなり通るとも思っていないから」
エリザベスは再びお茶の入ったカップをソーサーごと持つと、ゆっくりとお茶を飲んだ
「今日はこちらの要望を話しに来ただけよ
私達がそれを望んでいると、貴方に知っておいて欲しかっただけだから」
エリザベスはそう言いお茶を飲み干すとソーサーごとカップを机に荒々しく置き、すくっと立ち上がった
「さ、ヴァル、クリス
帰るわよ」
「え?帰るのか?」
ヴァレンタインが驚いて顔を上げた
ハーバートも同じように驚いてエリザベスを見た
「用件は伝えたわ
妖精達は一刻も早く私達をここから追い出したいのよ」
半ば怒り混じりのエリザベスの言葉にハーバートが驚き、立ち上がった
「エリザベス!そんな事ないよ!!」
慌てているハーバートにエリザベスは睨みつけながら笑った
「ええ、わかっているわハーバート
でもクリスがヴァルの伴侶である以上、私達は共にあるの
でも貴方は人間が嫌い」
エリザベスはそう告げると、ツカツカとドアに向かって歩き出した
ハーバートは慌ててエリザベスの後を追った
「エリザベス!
確かに僕達は人間が嫌いだけど…
彼女に対する僕達の態度が悪かったなら謝るよ!」
クリスは慌てているハーバートを見てふと気が付いた
「ねえ、ヴァル
もしかしてハーバート様はベスの事が好きなの?」
ヴァレンタインは笑っている
「ああ、昔っからアイツはベスにべた惚れなんだ」
「やっぱり」
見ている限りハーバートはエリザベスの事が好きだが、エリザベスの方はいまいちな感じがする
ヴァレンタインとクリスはエリザベスの側へとやって来た
エリザベスはクリスの腕を掴むと、ぐいっと自分へと引き寄せた
「見ての通りこの子は寿命の短い人間でも比較的まだ時間はあるわ
貴方の気が向くのを待つ余裕もあるの
だから無理強いはしないわ」
「そ、そうだね」
「ハーバート、私は貴方に期待していないわ
貴方が無理でも他の手段を考えればいいだけだから」
エリザベスは自分に好意を寄せている人に『期待しない』と言いきっている
これは好意を寄せているハーバートにはキツイ一撃だ
「エリザベス…」
かなり強力な一撃をくらってしまったハーバートは呆然としている
クリスは自分が原因なので、ハーバートに申し訳なくなってしまった
「ベス、そんなにハーバート様を責めないで
妖精が人間嫌いなのはわかってたんだから」
クリスになだめられ、エリザベスはニッコリと微笑んだ
「そうね、クリス
他の手を考えましょ」
「うん」
ヴァレンタインもクリスとエリザベスの側へとやって来た
「レジナルドに聞いてみたらどうだ?」
ヴァレンタインの一言にハーバートがピクリと反応した
「だ、だめだ!
レジナルドなんかより僕が祝福を与える方が確実だ!」
思わずそう叫んでしまったハーバートをエリザベスとクリスは呆然と見つめた
「ハーバート、貴方は人間に祝福を授けたくないんでしょ?」
「そ、それはそうだけど…
君がレジナルドなんかと会うのは…」
エリザベスは意地の悪い笑みを浮かべた
「レジナルドは私達と近い存在だし、その魔力も異質だわ
ヴァルの言うとおり、レジナルドの方が頼りになるかもしれないわ」
ああ、ベスったら
クリスはエリザベスのハーバートに対するお構いなしの発言にほらはらしてしまっている
ヴァレンタインはそっとクリスに耳打ちした
「ベスは最初っから妖精に期待してなかったみたいだ
ハーバートに気がないって事をわからせるつもりみたいだな」
「ハーバート様がお気の毒だわ」
「いいさ
ベスほもともとハーバートには何も特別な感情は持ってないし」
ハーバートほ一生懸命、エリザベスに何か訴えている
あまりにも必死なので、クリスは気の毒に思えてならない
「レジナルドって誰?」
「ああ、北の極寒の地を治めている白豹の魔獣だよ
俺達と同じで、マリア グアダルーペと同じ時代の魔獣だ」
北の極寒の地は魔獣が多い
その地を治めているという事は相当な魔獣だろう
「ヴァル達と顔見知りなの?」
「顔見知りもなにも…
レジナルドもベスに気があるんだ
ベスもレジナルドは同じネコ科だから気を許してる」
「だからハーバート様はベスがレジナルド様に会う事に反対してるのね」
「みたいだな」
ヴァレンタインがエリザベスの方を見ると、エリザベスはハーバートにそっぽを向けている
「ハーバート、私達はクリスの為にありとあらゆる可能性を試さなくてはいけないの
邪魔しないでちょうだい」
「いや!それなら僕が祝福を授けるよ!」
ハーバートの発言にシドが驚いた
「王!何を仰るんですか!?
人間に祝福を与えるなんて!」
「レジナルドなんぞより僕の方が適任だ」
「それはそうかもしれませんが、それでも相手は人間ですよ!」
言い争いをしているハーバートとシドを放っておいて、エリザベスはヴァレンタインとクリスの側に来た
「さ、帰りましよ」
「ハーバート様はいいの?」
「いいわよ」
エリザベスはそう言うとスタスタとドアに向って歩き始めるのだった
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