65話 扉
ヴァレンタインがこじ開けた扉をくぐり、クリス達は森の中を歩き始めた
さっきまで居た森とは少し雰囲気が違う
さっきの森は木々が鬱蒼と生い茂っていたが、この森はそれほど鬱蒼とはしていない
空もよく見える
それに空気がとても澄んでいた
しばらく歩き続けると再びエリザベスが足を止めた
するとヴァレンタインが
「よし、開けるか」
と言いながらエリザベスの側まで行った
「え?また扉があるの?」
「そうよ
まだ何個か出てくるわよ」
エリザベスがそう言っている間に、ヴァレンタインはさっきと同じように力尽くで扉をこじ開けた
扉があった辺りはまだばちばちと静電気のようなものが光っている
扉の向こう側はまた森だ
今度は今いる森より木々は少ない
3人はこじ開けた扉から次の森に入り、再び歩き始めた
少し歩くと目の前に大きな湖が見えて来た
「わあ」
とても大きな湖にクリスは驚いてしまった
そして何と言っても湖の透明度がすごい
「綺麗な水!」
クリスはしゃがみ込むと水をすくってみた
冷たくて気持ちが良い
水を堪能しているクリスの後ろではエリザベスとヴァレンタインがぼん!と魔獣へと姿を変えた
「ヴァル?」
クリスは2人がなぜ魔獣へと姿を代えたのかわからなかった
「次の扉はこの湖の上だ」
「えっ?そんな所に扉があるの?」
「そうよ
妖精達は人間が入って来れないように何重にも扉を作ったの
さらにその扉は人間には見えず、場所も人間が近づけないような所にね」
「妖精はかなり人間嫌いなのね」
あまりにも厳重な扉だ
だがこれだけ人間の世界と隔たりがあれば、人間達が妖精は絶滅したと考えたのも不思議ではないか、とクリスは思った
クリスは朝と違いしっかりと目も覚めているので、今度はひらりとヴァレンタインの背中に飛び乗った
クリスがヴァレンタインの背に乗ると、エリザベスとヴァレンタインは湖面を走り始めた
空中を飛んでいるのだが、湖面ギリギリの高さで飛んでいるので、まるで湖面を走っているようだ
たまに湖面に波紋が出来たりもする
そうやってしばらく湖面を走っていると、エリザベスはまた止まった
「ここに扉があるの?」
「そうよ」
ここは岸からも随分離れた湖の真ん中だ
こんな所に扉を作られては人間は見つける事すら出来ないだろう
「どうやって開けるの?」
エリザベスとヴァレンタインは今は魔獣の姿だ
先程までのように手を使って扉をこじ開ける事は出来ない
だがエリザベスは余裕だ
「こうするの」
そう言うとエリザベスは長く七又に分かれている尻尾をぶん!と振った
すると湖面に先程ヴァレンタインが扉をこじ開けた時のように静電気のような光がバチバチッと音を立て、扉が開いた
湖面の真ん中で開いた扉の向こう側は草原が広がっている
「俺に文句を言っておいてベスだって力ずくじゃないか」
ヴァレンタインがブツブツ文句を言っている
だがエリザベスは構う事無く扉をくぐり草原へと向かった
ヴァレンタインもエリザベスに続いて扉をくぐった
扉の向こう側へ行くと見渡す限りの草原だ
空は青く風がそよそよと流れとても気持ちが良い
先程から通っている森や湖、そしてこの草原といい、とても美しい
「素敵な所ね」
クリスは感じていた事が自然と口に出てしまった
エリザベスは魔獣の姿のまま草原を進んている
ヴァレンタインも同じように魔獣のままクリスを背に乗せて歩いていた
「そうね
妖精は自然と共にあるから」
エリザベスも歩きながら草原を見渡した
エリザベスとヴァレンタインは七又に分かれている尻尾を立ててフリフリしている
どうやら2人はこの草原が好きなようだ
歩いても歩いても続く草原
どこに向っているのか、よくわかるものだとクリスは感心した
しばらく長閑な草原を進むと、再びエリザベスが足を止めた
「また扉?」
クリスがそう聞くとエリザベスは尻尾をぶん!と振った
「そうよ」
エリザベスの尻尾は扉に当たり、また静電気のような物がバチバチッと音をたてると、扉が開いた
扉の向こう側は真っ青だ
エリザベスとヴァレンタインはふわりとジャンプして扉をくぐると、そこは大空だった
「空!?」
クリスが驚いて声を上げたが、エリザベスとヴァレンタインは気にする素振りもなく大空を進んでいる
妖精はこんなに何重も扉を用意して人間の侵入を阻んでいる
「こんな大空に扉を作られたら、人間は絶対に通れないわね」
クリスは半ば呆れた
「まあ、魔法使いなら来られなくはないわね」
エリザベスは後を振り返り言った
確かに
クリスは空中浮遊の魔法はまだ使えないが、父のリチャードならば出来るだろう
だがこんな大空の中、次の扉を探して飛ぶとなるとリチャードでもかなり大変だろう
「魔法使いでも大変よ
って言うか、ほとんど無理よ〜」
クリスはブンブン手を振った
「妖精の奴らは捻くれてるからな〜」
ヴァレンタインはやれやれといった感じだ
「ベスもヴァルも妖精達とは面識があるの?」
「ああ、何回か奴らの住む所にも行った事がある」
「妖精の方から来ることもあるの?」
「あるわよ」
「人間には近付かないけど、ヴァル達とは接触してるのね」
「そうだ」
妖精の人間嫌いは筋金入りよようだ
クリスは心配になってきてしまった
するとエリザベスが立ち止まった
「そこに扉があるの?」
「そうよ」
エリザベスはそう言うと、さっきと同じように尻尾をぶん!と振って扉を開けた
扉はバチバチ静電気を帯びて開くと向こう側が見えた
今度は森のようだ
エリザベスとヴァレンタインは扉をくぐるとぼん!と人型に戻り
「こっちよ」
と言って森の中を歩き始めた
木々が鬱蒼と生い茂っている森だ
しばらく歩いていると木々がなくなり、開けた場所に出た
湖だ
「あれ?」
クリスはキョロキョロと辺りを見渡した
「この湖ってベスとヴァルの屋敷がある、あの森の湖じゃない?」
「そうよ
そしてここに妖精達がいるの」
「え?」
あれだけ扉をくぐって来たのに、元の場所に戻って来てしまった
しかもここに妖精がいると言う
今までの移動は何だったの?
クリスは訳がわからなかった
ご精読、ありがとうございます
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