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63話 上下関係

「………」


思わぬクリスの言葉にしばらくヴァレンタインは黙ってしまった

だがようやく「ふうっ」と一息吐くと、クリスの両肩をがしっと掴んだ


「よく考えたのか?」

「考えたよ」

「簡単に決めるなよ?」

「ちゃんと考えたよ」

「長寿ってのは羨ましく見えるかもしれないが、結構辛いんだぞ?」

「たぶん、わかってる」


何と言っても想像で辛いだろうとは思っていても、長寿の経験がないのでこればっかりは「たぶん」になってしまう


だが自分が人間としての寿命を全うすれば、ヴァレンタインはその『結構辛い』経験をまたしなくてはならない

クリスはそれをさせたくないのだ


ヴァレンタインはクリスの両肩を掴んだまま顔を下に向けた

クリスは心配になってしまった

「妖精から祝福を受けたい」と言えばヴァレンタインは喜ぶと思っていたのに、クリスの予想とは違う反応を見せたからだ


ダメなのかしら?

ヴァルは反対なの?


だがクリスのそんな心配をよそに、ヴァレンタインはがばっとクリスを抱きしめた

「きゃ!」

「そうか、クリス!そんなに俺の事を考えてくれたんだな」

「そ、そうれはそうだけど…」

ヴァレンタインはぎゅーっとクリスを抱きしめた


そのまましばらく時が止まってしまったような時間が流れたが、クリスはヴァレンタインの背中に回していた手でポンポンと叩いた

「ヴァル、苦しいよ」


ヴァレンタインはぱっとクリスを離した

だが両手ではクリスの肩を捕まえている

「あ、ごめん」


クリスはにっこり微笑んだ

「そんなに嬉しかった?」

「そりゃ、そうさ

知り合った人間を看取るのは辛い

ましてやクリスは俺にとって特別だ

そんなクリスを看取る事は、今まで経験してきた別れとは比べ物にならないくらい辛いだろうって思ってた」


『クリスは俺にとって特別』

クリスはこの言葉に胸がときめいてしまった

だが、それと同時にヴァレンタインの気持ちもわかってしまった


ああ、ヴァルはそんなに不安だったのね

それなのに私の事を気にかけて…

私にも周りの人たちがいなくなる辛さを味わせたくなくて、自分の辛さを隠して私には考えろって…


「ヴァル、私ずっとヴァルの側にいたいの

妖精から祝福を受けて、ヴァルと一緒にいたい」


クリスの真剣な言葉にヴァレンタインは微笑んだ

「ありがとう、クリス」


ヴァレンタインはそう言うと、再びクリスを抱きしめた

今度はやさしく、そしてクリスの頭を撫でた


クリスはどきどきが止まらない

耳の良いヴァレンタインにこの心臓の音が聞こえてるんじゃないかと心配になってしまう


するとヴァレンタインは再びぱっとクリスを離した

もちろんクリスの両肩は掴んだままだ


「よし、クリス!

妖精の所へ行くぞ!」

「えっ!?今から?」

「そうだ!よし、行くぞ!」


ヴァレンタインはぼん!と魔獣の姿に変わった

だがクリスは慌ててヴァレンタインを制した

「ちょっ、ちょっと待って!

ベスに何も言わずに出掛けたら怒られるわよ!」


今にも飛び立ちそうだったヴァレンタインがピタリと止まった

「………そうだな」


何だかんだ言ってもヴァレンタインはエリザベスに逆らわない

エリザベスに怒られれば文句は言うが、結局は従っている


ここで何も告げずに妖精達に会いに行けば、後で必ず怒られると考えたヴァレンタインは急に大人しくなるのだった


  ♪♫♬  ♬♫♪


クリスとヴァレンタインはすぐに屋敷に帰って来ると、真っ先にエリザベスの部屋へ向かった


「ベス!」

ヴァレンタインはノックもせずにエリザベスの部屋のドアを勢いよく開けた


エリザベスは長椅子に座り本を読んでいたが、突然ヴァレンタインが部屋に荒々しく飛び込んて来たのでギロリとヴァレンタインを睨みつけた


エリザベスに睨みつけられたヴァレンタインは「うっ」と言って固まってしまった


「ヴァル、もう少し静かに入って来れないの」

「いや、急用だったから…」

「だったからじゃない!」

「お、おう」


エリザベスに怒られているヴァレンタインを助けるため、クリスはヴァレンタインの後ろからひょいとエリザベスの部屋へ入って来た


「ごめんね、ベス

今、少しいいかしら?」


クリスに言われて、エリザベスは「ふうっ」とため息をついて、持っていた本をぱたんと閉じた

「ええ、いいわよ

お入りなさい」


エリザベスの許可を得たのでクリスはヴァレンタインの右腕の袖をくいくいと引っ張った

引っ張られたヴァレンタインはちらりとクリスを見ると、クリスは目で『ほら、入ろう』と訴えている


ヴァレンタインはクリスと手を繋ぎ部屋に入ると、エリザベスの向かい側の長椅子に座った


エリザベスは本を自分の横に置き

「で、なに?」

と圧を掛けてきた


ヴァレンタインはエリザベスの圧に負けている

ここは自分が話しをしなくては、とクリスは考えた


「あのね、ベス

私、妖精の祝福を受けたいの」

「妖精の祝福を?」

「そう

私、ヴァルやベスとずっと一緒にいるって決めたの」


クリスの決意にエリザベスは驚いた顔をした

「よく考えたの?」


またこの(くだり)


クリスはそう考えながら、返事をした

「うん、考えた」

「長寿は羨ましく思えるかもしれないけど、結構辛いわよ」


やっぱり姉弟ね

同じこと、言うんだから


「たぶん大丈夫」


クリスの返事にエリザベスは少し考えてから、にっこりと微笑んだ

「そう、わかったわ」


エリザベスがそう言うと、今まで大人しく座っていたヴァレンタインがすくっと立上がった

「よし!クリス行くぞ」

「えっ!?今すぐ?」

クリスは驚いてヴァレンタインを見上げた


エリザベスは指で米噛みを押さえながら

「ヴァル、もう日も傾いて来ているわ

明日、出発しなさい」

とヴァレンタインを諭した


言われたヴァレンタインは窓を見ると確かに空が赤くなって来ている

「ホントだ

仕方ないなー」

「それと妖精の村には私も行くわ」

「「えっ、ベスも!!」」


ヴァレンタインとクリスは同事に叫んでしまった


「ヴァルだけで行かせると心配だから」

「何でだよ〜」

ヴァレンタインは不満げたが、クリスは安心した


やはりヴァレンタインよりエリザベスの方が頼りになる


そう考えたが、それは言わないであげるクリスだった






ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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