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62話 散歩

第2章 妖精編です


よろしくお願いします

クリスがエリザベスとヴァレンタインと共に2人の屋敷に戻ってから1ヶ月ほど過ぎていた


クリスはずーっと悶々と悩んでいる


エリザベスとヴァレンタインに「妖精から祝福を受けたい」と言い出せないでいたからだ


なんて言って切り出そうかしら?


と考えているうちに1ヶ月が過ぎたという訳だ


もともと照れ屋のクリスはヴァレンタインほど愛情表現が出来ない


妖精から祝福を受けるという事はヴァレンタインのため、それはヴァレンタインを愛していてずっと一緒にいたいという事になる


きっとクリスが妖精を探したいと言い出せば、ヴァレンタインは喜ぶだろう

だが、そんなあからさまに言うのではなく、もっとこうオブラートに包んで…なんて考えているが、どうしても良い言い方が思い付かないのだ


「こら、クリス!集中しろ」


ヴァレンタインの怒鳴り声でクリスはハッと我に返った

今は庭園で太古の魔法を練り上げる練習をしていたのだ


「あ、ごめん」


せっかく練り上げた魔力がぷしゅ〜と消えてしまった


ヴァレンタインはツカツカとクリスに近づくと大きな手をクリスの頭に乗せた

「どうしたんだ?

最近なにか考え込んでるな」


クリスほどきりとした

「あ、うん、いやっ、ううん」

「どっちなんだよ」


ヴァレンタインは呆れ顔だ


ふうっと一息つくと、ヴァレンタインはクリスの頭を触ったまま、顔を近づけて来た


「こら、何を隠してる」

「べ、別に隠してなんかいないよ!」

クリスは両手をぶんぶん振っているが、顔は引きつっている


ヴァレンタインはぼん!と煙を立てると魔獣の姿に変わった

「話さないと喰うぞ」

そう言うと大きな口を開け、鋭い牙をクリスに向けた


だがクリスには何の脅しにもならない

ヴァレンタインはクリスをとても大切にしているので、クリスはヴァレンタインが牙を向けても驚く事も、恐がる事もなかった


逆にクリスはにこーっと笑うとヴァレンタインの首筋に抱きついた

「ヴァル、せっかくだからどこか散歩に行かない?」


ヴァレンタインは大きく開けていた口をゆっくりと閉めた


「ま、いっか」

「やった!」


クリスほそう言うと、ヴァレンタインの背中に飛び乗った

「空の散歩、久しぶり」


クリスはるんるん♪だ


ヴァレンタインはやれやれと思いながら、ふわりと飛び立った

大空に向って2,3歩駆け上がるとすぐにかなり上空に到達する


「どっち行く?」

「ん〜湖に行きたいわ」

「よし」


クリスが行き先を決めると、ヴァレンタインはふわりと駆け出した


青空を駆けるのはとても気持ち良い

「空の散歩、久しぶり〜

気持ちいい!」

クリスは柔らかい金髪をなびかせながら、風を楽しんだ

ヴァレンタインの柔らかい金色の毛もとても触り心地が良くて大好きだった


はるか下は深い森が広がっている


歩いてこの森に入ったら絶対に迷子になるだろう


エリザベスとヴァレンタインの屋敷はこの深い森の中にある

さらに屋敷にはエリザベスが結界を張っているので普通の人間は近づく事は(おろ)か見る事すら出来ない


少し前はルガード国の首都にあるクリスの実家・オルドリッジ侯爵家に滞在していた


人間離れしたエリザベスとヴァレンタインの美しさはまたたく間に社交界で有名になった

あまりにも美しので、ヴァレンタインはルガード国の王女・ヒラヌルに言い寄られ、さらに怨念の塊・ジュリアにも気に入られてしまった


何とかこの厄介な2人から逃れ、久しぶりにこの深い森の中の屋敷に帰って来ると、エリザベスとヴァレンタインと3人だけの生活がとても心地よく感じられた


「ヴァル、気持ちいいね~」

「そうだな」


冷静を装っているが、ヴァレンタインも嬉しいのだろう

七又に分かれている尻尾がピーンと立っている


大空を駆け続けると、森の中にぽっかりと穴が開いたような場所が見えて来た

近づくとそこが湖だとわかる

湖面は太陽の光を反射してキラキラ光っていた


ヴァレンタインは湖の湖畔の、わりと広い場所にふわりと着地した

クリスはヴァレンタイから降りるとはしゃぎ出した

「わ~綺麗!」


ヴァレンタインはぼん!と人型に戻り湖に向かって歩くクリスの後を追った


クリスは湖の縁まで来ると、湖を見渡した

ここは以前、蛇の魔獣を捕まえた場所でもある

それ以外でも何度も訪れているクリスお気に入りの場所だ


「久しぶりに来たわね

やっぱり街中よりこっちの方がいいわ!」

クリスは大きく深呼吸をした


「森が深いからな

人間も滅多に入って来ないからここはあまり変わらないな」


森が深い事もあるが、この森は魔獣が出る

それもあるので、ここは人間があまり足を踏み入れないのだ


クリスはくるりとヴァレンタインの方を向いた

「ここはあまり変わらないって、どこかは変わったの?」

「ああ、いくつかの森は人間に浸食されて姿を消したよ」

「そうなんだ」


人間は大勢で暮らす

どうしても森を伐採して畑を作ったり家を建てたりするのだ

「人間が森を消してるのね」

「ああ、だから妖精の奴らもこの森に避難するしかなかったんだ」

「そっか~」


普通に会話していたが、クリスははっと気が付いた

「え!妖精ってこの森に住んでるの!?」

「そうだ

でももっと奥って言うか…離れた所だけどな」


クリスは口をぱくぱくさせた

まさか自分達が暮らしている森に妖精も住んでいるとは思いもしなかったのだ


だがそんなクリスの様子にヴァレンタインは「?」となっていた


「よ、妖精ってもっと遠くに住んでるのかと思ってた」


ヴァレンタインはようやくクリスが何に驚いていたのかわかった

「ああ、そうだな~

遠いって言えば遠いんだ」


今度はクリスが「?」となってしまった


「ねえ、ヴァル

妖精に会いに行きたいわ」

クリスは思い切ってヴァレンタインに切り出した


「あいつらに会ってどうするんだ?

あいつらは人間嫌いだぞ」


クリスは一呼吸置いてからハッキリとヴァレンタインに伝えた


「妖精の祝福を受けたいの

私、ヴァルとずっと一緒にいたい」





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