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54話 治癒魔法

宮殿に到着したエイブラハムは国王に治癒魔法を施すため、国王が治療を受けている部屋へと案内された


部屋に入ると医師とおぼしき人物が何人もで大きなベットを囲んでいる

そして医師の側にはベルナルド皇太子と宰相、そして父のリチャードの姿もあった


「父上」

「ああ、エイブ」

エイブラハムはリチャードの側まで行くと、エイブラハムの背中に手を当て国王の方へと(いざな)った


「腹部と背中を刺されている」

「わかりました」


エイブラハムは国王の枕元まで行き、国王を見た

腹部には包帯が巻かれ、じんわり血がにじんでいる


エイブラハムは両手をその傷口に向けた

目を瞑り集中すると、柔らかい光がエイブラハムの手から現れた

青白く柔らかいその光は見ている他の人達もわかるくらい、暖かなものだった


エイブラハムはずっとそのまま国王に向かってその光を当てている

額には汗がにじみ始めるが、エイブラハムはずっと続けた


やがて荒かった国王の息が穏やかになっていった

そんな様子をエイブラハムの後ろで見ていた医師たちは「おお」と声を上げている

だがエイブラハムは集中を解く事はなく治癒魔法を続けた


かなりの時間、エイブラハムは治癒魔法を施し「ふうっ」と息を吐くと集中を解いて額の汗を拭った

国王の顔を見ると、先程より穏やかな顔になっている

エイブラハムは安心した


振り返るとすぐ側に医師団長らしき人物がいるので、エイブラハムは説明を始めた

「内臓の傷は塞ぎました

背中の傷は肋骨に当たったようで、骨折はしていますが思ったより深い傷ではないようです」

「おお!」

エイブラハムの説明に医師達はざわついた


「僕が出来るのは傷を塞ぐことだけです

かなり出血されたようなので、血液を補う治療をお願いします」

「わかりました」

「刺された傷でしたので発熱すると思います

解熱剤の準備と体力も落ちますので薬草で栄養の補強をお願いします」

「畏まりました」

薬師たちも頷いた


エイブラハムが医師達に指示を与え終わると、宰相が声を掛けた

「国王陛下は大丈夫ですか?」


エイブラハムは宰相とベルナルド皇太子の方を向くと

「わかりません」

と答えた


「僕が出来るのは傷を塞ぐことだけです

どれ程の出血があったのか、あと国王陛下の体力が持つか…

これは僕でもどうにも出来ません」


一瞬、希望の光が見えたように感じたが、宰相とベルナルド皇太子は再び顔が曇ってしまった

医師達を見ると、先程のエイブラハムの指示を実行するために話しをしたり慌ただしく部屋から飛び出して行く者もいる


宰相は険しい顔をすると、ベルナルドを見た

「ベルナルド皇太子殿下、今は皇太子殿下が国王陛下に変わり国政を担わねばなりません

もちろん私もお手伝い致します」


ベルナルドはごくりと唾を飲んだ

自分は皇太子なので、いずれ国王になるとはわかっていた

だがそれはまだまだ先の話し

国王陛下がご健在で、この治世はまだしばらく続くと思っていた

それなのに、こんなに突然…


「宰相、頼みますよ」

「はい」


弱音を吐いても誰も代わってはくれないのだから、ベルナルドは腹を決めた


  ♪♫♬  ♬♫♪


ベルナルドの執務室には宰相とリチャードが居る

騎士が訪れ、報告を聞いていた

「ではヒラヌルに短剣を渡したと?」

「はい、侍女がヒラヌル王女に内密に頼まれたそうです

侍女はこのような事が起き、短剣を渡した自分がヒラヌル王女に殺されるかもしれないと考え、我々に保護を求めてきました」


ベルナルドは机に両肘を付き、頭を抱えてしまった

そんなベルナルドを心配そうに見つめる宰相は一縷の望みを掛けて騎士に聞いた

「国王陛下の背中に刺さっていた短剣を侍女に確認させたかい?」

「はい」

騎士は申し訳ないような顔つきで

「自分がヒラヌル王女に渡した短剣に間違いないとの事でした」


騎士の報告を聞き、その場にいた全員が黙ってしまった

もはやヒラヌル以外、国王を襲った犯人は考えられない


「国王陛下の意識が戻らずとも、ハッキリしたね

クリスティーナは連れて帰るよ」


リチャードの言葉に、ベルナルドはゆっくり顔を向けた

「そうですね

ご迷惑をお掛けしました

クリスティーナ嬢にもレイメント伯爵にも後日、謝罪させて頂きます」


ベルナルドの言葉を受けて、リチャードはそのまま執務室を退出した


ベルナルドは少し考えてから宰相に向かった

「騎士にヒラヌルの部屋を囲ませて下さい」

「よろしいのですか?」

「…はい」


ベルナルドは「ふうっ」と一息つき、心を落ち着かせた

「国王陛下への襲撃の罪として、ヒラヌルを拘束します」

「畏まりました」

宰相と騎士はそう返事をすると、執務室から退出した


  ♪♫♬  ♬♫♪


ベルナルドはジュリアの部屋を訪れた

疲れ切っているので、長椅子に座るとジュリアの肩に頭をもたれかけた

「大丈夫ですか、皇太子殿下?」

「少し疲れたよ」


ジュリアは皇太子の頭にそっと手を添えると自分の太ももに頭をもって来た

ベルナルドはジュリアの太ももに頭を乗せるの目を瞑った


「国王陛下のご容態は悪いのですか?」

「まだわからない

医師達が懸命に治療をしているよ」

「そうですか」


ベルナルドは右腕で自分の両目を隠した

「ヒラヌルはオルドリッジ侯爵家のクリスティーナ嬢が襲ったと証言したが、状況証拠が全てそうではないと物語っているんだ」

「まあ」


ジュリアはニヤリと笑っているが、両目を腕で隠しているベルナルドは気づくはずもない


「それでは誰が国王陛下を襲ったのですか?」

ジュリアの問いにベルナルドは答えなかった


ヒラヌルが襲った事はわかっているようね


ジュリアは憔悴しているベルナルドの頭をやさしく撫でた

うちひしがれ、絶望している魂

弱った魂は極上の味だ


ヒラヌルもすぐに絶望の縁に立たされる

そうなればヒラヌルの魂も美味くなる


ベルナルドは皇太子として、また国王としてまだ利用価値があるので食べる事は出来ないが、ヒラヌルには用はない


絶望に満ちた時に喰らってやろう


ジュリアは禍々しい笑みをするのだった




ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿ ◕。

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