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48話 訪問者

「やっと来たわね」

そう呟いたのはエリザベスだ


「そうみないだな」

続いてヴァレンタインも言った


「え?誰か来たの?」

わかっていないのはクリスだけだ


エリザベスとヴァレンタインはオルドリッジ家の裏側の庭園でクリスに魔法を指南していた

クリスが太古の魔法を使うようになると、驚くべき変化が起きた


杖の形が変わったのだ


以前の杖は木がねじねじとねじ上がり先端が丸みを帯びていたが、今の杖は一本の枝のようで先端はまるで鳥の羽のような形をしている


形は全然違うが、確かにクリスの杖だ

クリス曰く

「しっくりくる」

そうだ


杖を使わないエリザベスとヴァレンタインにはわからないようだが…


エリザベスとヴァレンタインは庭園の奥に見える山を見つめていた

山の黒さに溶け込んでクリスには見えなかったが、しばらくすると一羽の鳥がこちらに向かって来るのがクリスにも見えた

「あれ?」

「そうよ」


クリスがそう聞いた途端、鳥はヒュンと落下した…かと思えば必死にばたつき、何とか高度を戻した


「…大丈夫なのか?」

ヴァレンタインが呆れた様子でエリザベスに聞いた

「ここまで来れたんだもの、大丈夫よ」


だが鳥は右へ左へと不安定な飛び方をしている

「迎えに行った方がいいんじゃない?」

クリスは心配になってしまった


エリザベスは鳥から視線を外すと

「そんな事したらまた怒るわよ

『私を年寄り扱いするな!』ってね」

と、やれやれと言った表情になった


「あれが前に話していた物知りのおばあさんカラスなの?」

「そうよ、トレイシーよ」

「あ、落ちたぞ」

「「え゛」」


話しをしていたエリザベスとクリスが先程までカラスが飛んでいた辺りを見るが、何もいない

エリザベスは額に指を当て、目を瞑ったまま言った

「…ヴァル、迎えに行ってあげて」

「おう」


  ♪♫♬  ♬♫♪


しばらくすると魔獣の姿のヴァレンタインが空を駆けて戻って来た

近づいて来ると、何やら騒がしい


「わたしゃ、少し休んでただけだよ!」

「ああ、わかったよ」

「落ちた訳じゃないんだからね」

「落ちたって認めろよ」

「違うって言ってるだろ!」

「いてっ!突くなよ」


ヴァレンタインの背中にはカラスの魔獣が乗っていて、ヴァレンタインの頭を突いている

ヴァレンタインはクリス達に近づいて来るとふわりと降り、着地と同時にぼん!と人型に戻った

人型に戻ったヴァレンタインの肩には大きなカラスが一羽留まっている

そしてまだヴァレンタインの頭を突いていた


「トレイシー、久しぶりね」

エリザベスが声を掛けると、カラスはようやく突くのを止めた


「おや、ベス

相変わらず美人だね」

「トレイシーも変わらないわね」

「変わったよ」

トレイシーはそう言うとふうっとため息をついた


「見てごらん、この羽の艶々感

少し若返ったようだね」


クリスはてっきり『年を取った』と言って来ると思っていたので、まさか『若返った』と来るとは思ってもみなかった


トレイシーはエリザベスの横にいるクリスに視線を変えた

「このお嬢ちゃんが坊やの想い人かい?」


坊や?


クリスはツッコミどころ満載のトレイシーの言葉に、ここは我慢して返事をした

「あ、はい」


するとヴァレンタインが変わりにつっこんだ

「おい、坊やって呼ぶなよ!」

「じゃあ、小僧」

「小僧もやめろ」

「じゃあ若造」

「それもダメだ」


この2人の会話は終わりそうにないので、クリスは仲裁も兼ねて会話の間に入った

「クリスティーナ・ルナ・オルドリッジです」


クリスが自己紹介すると、ようやくトレイシーとヴァレンタインの不毛の言い争いが止まった

「うんうん、小僧にはもったいない娘さんだね

わたしゃトレイシーだよ」

「初めましてトレイシーさん」


するとトレイシーは翼でヴァレンタインの頭をばさっと叩いた

「聞いたかい!『トレイシーさん』だって!

なんて行儀のよいお嬢ちゃんだい!お前も少しは見習いな!」

「クリスは人間の中じゃ上位なんだよ!行儀が良いのは当たり前だ」

「お前だって魔獣の中じゃ最上位だよ」

「うっ」

ここはヴァレンタインが言い負けた


「それで、トレイシー?

怨念を葬り去る方法は知っているの?」

ヴァレンタインとトレイシーのやり取りに慣れているのか、エリザベスはお構いなしに本題に入った


「もちろんさ」

トレイシーはヴァレンタインの肩に留まったまま、ふんぞり返った

「だがそれより、どこかで水浴びをさせておくれ

わたしゃ、長旅で疲れたよ」

「そこに池があるよ

そこで水浴びしてこいよ」

「何だい、この子の言いぐさは!

少しは遠くから来た年寄りを労いな!」

「…ばーさん」

「年寄り扱いするんじゃないよ!」

トレイシーは再びヴァレンタインを突き出した

「いてっ!どっちだよ!」


エリザベスはふうっとため息をつくと

「水浴びが終わったら部屋に来て頂戴ね」

そう言うとクリスの背を押して、屋敷の方に戻って行くのだった


  ♪♫♬  ♬♫♪


「魔獣って若返るの?」

トレイシーの水浴びが終わるのを待っているクリスはエリザベスの部屋に着くと、エリザベスに聞いてみた


「寿命それ自体が延びる訳じゃないけど、気の持ちようって言うのかしら?

魔力が(みなぎ)ったりすると若返ったりするわ」

「寿命も延びるだろ?」

ヴァレンタインが聞くとエリザベスは頷いた

「寿命が延びる事もあるけど、稀だと思うわ」

「じゃあ、ベスやヴァルは稀なの?」


クリスの問いにエリザベスとヴァレンタインはクリスを見つめた

「そうさ!俺たちは稀なんだ!」

「そうね、私達は優れているのね」


しまった

この2人は褒めるとめちゃくちゃ喜ぶ

「もっと、もっと」ってなってしまうのだ


「ベスやヴァルは太古から生きているからね」

「そうよ、私達は洗練された魔力を持っているのよ」

「そうさ、他の魔獣と違って代を重ねていないからな!

俺達の魔力は研ぎ澄まされているんだ!」


エリザベスとヴァレンタインの周りはキラキラ光っているように見える


トレイシーといいこの2人といい、魔獣って変わってる


そう思ったクリスたが、それは言葉にはしないであげた





ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿ ◕。

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