43話 仕舞
「ベス、どうしたの?」
クリスは何やら考え事をしているエリザベスに声を掛けた
エリザベスはゆっくり顔をあげるとクリスを見つめ
「あの王女、おかしくない?」
と聞いてきた
「あ」
もしかしたらエリザベスも私達と同じように、ヒラヌル王女の妄想に付き合わされたのかしら?
クリスは咄嗟にそう考えてエリザベスに聞いた
「自分とヴァルが愛し合っているって言ってた?」
「ええ」
「私が魔法を掛けたとも」
「言ってたわ」
しばらく2人は黙ってしまった
ああ、やっぱりヒラヌル王女の妄想癖は治っていないのね
クリスはため息をついてしまった
エリザベスは困惑した表情で、まるでクリスに助けを求めるかのように言ってきた
「私がどれだけ否定しても、私の言葉を受け入れてくれないの」
「わかるわ」
長く生きてきたエリザベスでも、あんなに妄想癖のある人間は初めて見た
「ヴァルが怯えるのがわかったわ」
魔獣の中でも最上位、しかも太古から生きているエリザベスとヴァレンタインを恐怖に陥れるヒラヌル…
ある意味、ヒラヌルは最強かもしれない
「ベス、もう少しでこのお茶会も終わるわ
もう一踏ん張りよ」
「そうね」
だがエリザベスには元気がない
ヴァレンタインもそうだが、エリザベスも精神的ダメージに弱いのかもしれない
♪♫♬ ♬♫♪
ヒラヌルの居る席には他の令嬢達も集まっていた
ヒラヌルの機嫌が良くなったようなので、令嬢達は王女と少しでも親しくなる為に集まっていた
更にヒラヌルの側にはイケメンのテッドもいる
それも目的ではあるだろう
「まあ、ヒラヌル王女様はクリスティーナ様のご婚約者のヴァレンタイン伯爵と将来をお約束されていているのですか?」
ヒラヌルの話しを聞き、令嬢達は驚いた
ヒラヌルは笑顔を絶やさずに話しを続けた
「そうですの
ですがあの腹黒い女がヴァレンタイン様を離さないでしょう?
国王陛下も皇后陛下もそれはお困りで」
令嬢達は困惑した
自分達が聞いている話しでは、クリスティーナとヴァレンタインは相思相愛だ
婚約の後見人は国王陛下で、更に結婚式は宮殿内の神殿で執り行う事を皇后陛下から国王陛下へとご進言された
クリスティーナとヴァレンタインの結婚は、国王・皇后両陛下がお認めになっていると示されているのだ
だがそれとは真逆の事をヒラヌル王女は話している
「私が謹慎させられたのもあの女の悪だくみです
考えてもごらんなさい
私とヴァレンタイン様は将来を誓い合った仲なのですから、ヴァレンタイン様が皇后陛下のお部屋にお越しになられれば私もご一緒しなければ
なのにあの女はどういう手段を使ったのか、私のヴァレンタイン様と二人で皇后陛下にお会いになられたのです」
令嬢達は顔を見合わせた
それはヒラヌル王女が関係ないからでは?
とそこにいる全員が考えたが、それを言葉にする者はいなかった
「で、でも」
突然、一人が口を開いた
テッドだった
「僕はクリスティーナとヴァレンタインを見ているけど、あの2人は本当にあ仲が良いですよ
それは王女様のお考え違いではないですか?」
「!!」
ヒラヌルは自分の意見に反論を唱えられた事に怒りが込み上げた
「何を仰っているのですか!?
私がこれだけヴァレンタイン様を想っているのですから、当然ヴァレンタイン様も私を想っておいでです!」
その場にいた一同は黙ってしまった
するとテッドが恐る恐る反論した
「自分が想えば同じだけ相手も想っていると考えているなら、それは間違いです」
「何をバカなことを!!」
令嬢達はホッとした
自分が想えば相手も同じだけ想っているなんて考えじゃなかったのね
いくらヒラヌル王女が浅はかでも、そんなおかしな考えはしないでしょう
良かった
その場にいた令嬢達はそう考えたが、見事に打ち砕かれる事になる
「私はこのルガード国の第一王女ですわよ!
あなた方と一緒にしないで下さい
私は特別で、私がヴァレンタイン様を愛したのだからもちろんヴァレンタイン様が私を愛さない訳がないでしょう!」
マジか…
この王女、頭がヤバくないか?
テッドは絶句してしまった
テッドだけではなく、他の令嬢達もだ
皆、言葉を失っている時に救いの声がした
「皆さま、本日は起こし頂き、まことにありがとうございました」
クリスだった
テッドや令嬢達はほっとして、ヒラヌルからクリスへと視線を移した
「お帰りの際にはこの青いバラを使ったブーケをお持ち帰り下さい」
「まあ、青いバラを頂けるんですか?」
「はい、あんなに沢山ありますもの
皆さんでお分けした方がよろしいでしょ?」
「クリスティーナ様、今日のお茶会は本当に素敵でしたわ」
「ええ、ベイル国のお茶やお菓子を堪能できたうえに、青いバラまで頂けるなんて!」
「ぜひまた招待してくださいませね」
令嬢達はクリスの周りに集まり、クリスを褒めたたえた
「ありがとうございます」
「私、招待状を出しますからぜひ私のお茶会にもお越し下さいね」
「はい、楽しみにしています」
「あら、私のお茶会にもですわよ」
ヒラヌルは令嬢達に囲まれるクリスに怒りを覚えた
本当になんて腹黒い女でしょう
ヴァレンタイン様だけではなく、私の取巻き達まで奪おうとするなんて
「それでは私は帰りますわ
こんな所、ヴァレンタイン様がいらっしゃらないなら来なければ良かったわ!」
ヒラヌルの怒鳴り声に、楽しそうに喋っていたクリスや令嬢達は静まり返ってしまった
「誰か!私を案内しなさい」
ヒラヌルの剣幕にその場にいる男性陣はお互いに目で訴えている
だが誰も行こうとはしなかった
業を煮やしたヒラヌルはテッドを睨みつけると
「貴方!貴方がしなさい!」
「え!僕ですか!?」
突然指名されたテッドは心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた
クリスやエリザベスに助けを求めようと2人を見るが、目で『ごめん、お願い』と訴えている
テッドは泣きそうなのを堪えて、ヒラヌルに手を差し出した
この恩は必ず返せよ、お前たち~
テッドは心の中でそう呟くのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
。◕‿◕。




