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38話 昔話

「テッドさん、本当にごめんなさい

大丈夫ですか?」


オルドリッジ家の裏側にある庭園でクリスとヴァレンタインとエリザベスは狼の魔獣・テッドと共に小さな丸テーブルを囲みながらお茶を飲んでいた


「いや~まさか一撃が来るとは思わなかったな

可愛い顔をしている割に攻撃的なんだ」

「突然、手を舐められたんだから当然の反応でしょ」


エリザベスはプンプン怒っている

よくクリスが怪我をした時にヴァレンタインが舐めて治す時があるが、エリザベスはその時もヴァレンタインを叱っていた


「まったく魔獣の男どもは何でこんなにデリカシーがないのよ」

とぶつぶつ呟いていた


「それで何の用なんだよ?」

ヴァレンタインがお茶を飲みながらテッドに聞いた


「もちろんエリザベスに勝負を申し込みに来たんだ」

「懲りないな」

ヴァレンタインは呆れている


「勝負?」

クリスは何の事かわからなかった


「力くらべみたいな物よ

自分より強い魔獣と戦って自分の力量を測るのよ」

エリザベスは迷惑そうな顔をしながら教えてくれた


「じゃあテッドさんはベスより弱いの?」

純真なクリスの一言にテッドは矢で射抜かれたような衝撃を受けた


「弱い…いや僕は弱くないよ」

「いつも負けてるじゃないか」


ヴァレンタインがとどめを刺した


「だ、だからこうして勝負を申し込みに来たんだ!」

「はいはい、わかったから帰って」

「え?」

エリザベスはテッドの扱いがぞんざいだ


「エリザベス!話し聞いてたよね!?僕は勝負を申し込みに来たんだよ!」

テッドは必死に訴えた

だがエリザベスはきっとテッドを睨んだ


「私達はまだこの人間の街に滞在するの

ここで勝負をしたら討伐部隊が結成されちゃうじゃない」


確かに!

クリスはうんうんと頷いた


「じゃあ君たちの屋敷まで戻ろう!」

「まだ帰る予定じゃないの」


テッドは涙目だ

「せっかくここまで来たのに~」


エリザベスはお茶を一口飲みながら淡々と話しを続けた

「だいたい私は勝負なんて興味がないの

そういう事はヴァルとやってちょうだい」

「だってヴァレンタインは俺を殺そうとするじゃないか!」

「勝負ってそういう事じゃないのか?」

ヴァレンタインは飄々と言った


テッドはヴァレンタインを睨みつけた

「だいたい君たちはマリア グアダルーペから直接魔力を貰っているから普通の魔獣より強いんだよ!

それなのに全然手加減してくれないんだから…」


テッドは泣き出したが、クリスはそんな事より衝撃的な事実に耳を疑った

「え!?ベスとヴァルはマリア グアダルーペから直接魔力をもらったの!?」


エリザベスとヴァレンタインはしれっと

「そうよ」

「大昔すぎてあんまり覚えてないけどな」

と答えた


クリスは口をパクパクさせた


マリア グアダルーペは神話だとか本当にいた()()()とか言ってたくせに、実際に会った事がある!?


言葉が出ないクリスにエリザベスは落ち着いている

「何にでも最初ってあるものよ」

「うん、そうだよな」


「い、いやいや…神話の神様に実際に会った人がいるなんて…」

っていうかエリザベスとヴァレンタインはいったい幾つなの?


「私達の他にもいろいろな魔獣がマリア グアダルーペから魔力をもらっていたわ

でもたとえ魔獣でも少しずつ年老いていくの

だらかいつまでも若々しい身体であろうと、他の魔獣たちは人間の言い方をすれば種を残し、その身体に移ったわ

でもそれを繰り返すうち、どんどん魔力が弱くなった

人間の魔法使いもそうでしょ?」

「う、うん、そうだね

って事はエリザベスとヴァレンタインは一切身体を変えずにいたの?

今でもこの若さなんだから、他の魔獣たちも身体を若返らす必要はなかったんじゃないの?」


「クリスの疑問はわかるわよ

でも魔獣によって寿命も違うし、それこそ魔力で寿命も変わるものなの

私達は他の魔獣と違い新しい若々しい身体を造らなかったから、反対に魔力の精度が上がったのね

そしたら反対にほとんど年をとらなくなっちゃったの」


クリスはぽかーんとしてしまった

エリザベスとヴァレンタインは最上位の魔獣だが、『最上位』で収まるレベルじゃないんじゃないだろうか?

テッドもそこそこのレベルの魔獣だと感じる

だがそのテッドが全く敵わないんだ


「ベスとヴァルは無敵じゃない」

「お、いいな!その言い方」

ヴァレンタインが喜んだ


だがその無敵のエリザベスとヴァレンタインがジュリアには梃子摺(てこず)っている

「ジュリアって物凄いのね」


クリスがポツリと呟くと、エリザベスとヴァレンタインが憤慨した


「物凄くなんてないぞ!」

「そうよ!ただ消し去る方法がわからないだけよ!」

「あ、はい

すいません」


2人の剣幕にクリスは思わず謝ってしまった


「ジュリア?

ルーベンが話していた怨念だね?」

さっきまで泣いていたテッドだが、もう泣き止んでいる


ヴァレンタインは「ちっ」と舌打ちしをして、テーブルに肩肘を立てると顎を乗せた

「ルーベンの奴、喋りすぎだ」


「仕方ないよ

怨念の消し方なんてわからないんだから

そのジュリアとかいう奴も身体を壊しても怨念が残れば、また新たな身体を手に入れるだけかもしれないしね」

「厄介だな」

「その厄介な奴にヴァルが気に入られたから困ってるんじゃない」


テッドはヴァレンタインを指さして笑った

「ヴァレンタイン、怨念に気に入られたの!?」

それは気の毒に!」


ヴァレンタインはガタンと椅子から立ち上がるとテッドの背後に立ち、腕を使ってテッドの首をぎりぎり締めた

「全然、気の毒に思ってないだろ」

「お、思ってる、、、よ、ぐるぢい…」


テッドは首に回されたヴァレンタインの腕をばんばん叩いている


「そういえばジュリアはまだメイスン伯爵邸にいるのよね?」

騒がしい男どもは無視して、エリザベスはクリスに聞いた

「あ、うん

お父さまの話しだとまだ後宮には戻ってないみたい

ベルナルド皇太子殿下は後宮に出仕するように言ってるらしけど

そろそろ勅使を立てそうだって話してたわ」


エリザベスは顎に手を当てて考えた

「太古の魔法はかなり効くみたいね」

「そうかもしれないけど、怨念そのものには効かないんじゃない?」


エリザベスは「うーん」と考えるのだった





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