34話 ミーハー
クリスは今日、ダンドビッチ伯爵家のスージー嬢のお茶会に参加していた
ジュリアの襲撃があってから半月程過ぎていた
未だジュリアはメイスン伯爵家に戻っている
自分の与えた一撃がそんなに効いているとは思えないが、エリザベスは太古の魔法が効いたのだろうと言っていた
ヒラヌル王女もまだ謹慎が解かれない
まだ自分の妄想から抜け出せず、国王も王妃も謹慎を解く事が出来ないのだと父のリチャードが言っていた
クリスがダンドビッチ伯爵邸に到着すると、ほぼ同時にもう一台の馬車が到着した
馬車の家紋を見るとベルトレ侯爵家の家紋だ
シャイフ嬢だわ!
クリスは3年間ルガード国を離れていたので親しい友人が少ない
シャイフ嬢はクリスにとって数少ない知り合いの1人だった
このスージー嬢のお茶会にシャイフ嬢が参加していたのは心強くなり、嬉しくなった
シャイフ嬢が馬車から下りて来るとクリスは声を掛けた
「シャイフ嬢、お久しぶりです」
「まぁ!クリスティーナ嬢!!」
シャイフ嬢は嬉しそうにクリスの側まで来た
「本当にお久しぶりですわ
お変わりございませんでした?」
「はい、シャイフ嬢もお変わりございませんでしたか?」
「はい」
屋敷のエントランスへ入ると、スージー嬢が出向えてくれた
「クリスティーナ様、シャイフ様、ようこそお越し下さいました」
「お招きありがとうございます、スージー嬢」
クリスが挨拶をすると、続いてシャイフも挨拶をした
「お久しぶりです、スージー嬢」
スージー嬢はクリスより少々年上だ
恐らくシャイフと同じ年くらいだろう
「クリスティーナ様、私クリスティーナ様と親しくお話しをしたいと思っておりましたのよ
今日は来て下さって本当に嬉しいですわ」
「ありがとうございます」
スージーはシャイフに視線を移すと
「シャイフ、貴女クリスティーナ様と親しかったのね
ずるいわよ」
「うふっ、羨ましいでしょ」
この話しっぷりから察するに、スージーとシャイフは親しい友人のようだ
スージーは歩きながら話しを続けた
「クリスティーナ様、今日はクリスティーナ様と親しくなりたいと仰っておられる方ばかりですのよ」
「そうなんですか?」
クリスは本当に驚いた
以前は魔法使いを気味悪がり近付かない人もいたというのに…
「クリスティーナ様はとてもお可愛らしいですもの
皆さま、クリスティーナ様をお見掛けするまでは魔法使いを気味悪がっていましたけど、実際にお見掛けしたらとても可愛らしい方ですもの!
皆さま、クリスティーナ様とお話しがしたくなりましたの」
「そうなんですか、ありがたいです」
普通の人に魔法使いを知ってもらえるのは良い事だ
ただ魔法を使えるというだけで、後は普通の令嬢と何ら変わりはないのだから
「さ、こちらですわ」
スージーに案内された部屋は部屋と呼ぶには申し訳ないくらいとても広かった
会場と言ってもいいくらいだ
部屋には何本もの太い柱があり、その柱は色とりどりの花が飾られている
そして部屋の中心辺りに長い長方形のテーブルが準備され、既に何人もの令嬢が集まっていた
スージーはテーブルの近くまで来ると
「皆さま、今日初めて参加下さるクリスティーナ・ルナ・オルドリッジ様です」
と紹介してくれた
「クリスティーナです
皆さま、初めまして」
クリスは優雅に挨拶をした
スージーはクリスを自分の側の席に案内した
「まだ来られていない方もいらっしゃいますが、どうぞお菓子なども召し上がって下さい」
スージーがそう言うと、侍女はクリスとシャイフのお茶を準備し始めた
最初は緊張していたクリスだが、やはり同年代の集まりなのですぐに打ち解けた
「クリスティーナ様は魔法の修行でベイル国に行ってらしたのでしょ?」
「はい」
ヴァレンタイン達の屋敷はベイル国にあるので、嘘ではない
「すごいですわね
そのお年で外国に行ってらしたなんて」
「でもそこで婚約者様と出会われたのでしょ!?」
1人の令嬢がその話題を出すと、一斉に皆食らいついて来た
「そうですわ!とても素敵な殿方で!」
「それはもう見目麗しい方でしたわ!」
「本当に羨ましいですわ!」
皆、ヴァレンタインの話題になるとすごい盛り上がりになってしまった
「あまりの美しさにヒラヌル王女が横恋慕されたとか!」
「そうですわ!
クリスティーナ様という婚約者がいらっしゃり、更に王族と魔法使いの婚姻は許されないと言うのに、それはもう目に余る行動だったとか!」
「国王陛下も王后陛下もそれはそれは大変ご立腹になられ、未だにヒラヌル王女の謹慎は解かれませんものね」
「はは…」
皆さんの情報収集力が素晴らしい
「先日、我が家の夜会にもお二人で来られて…とても仲睦まじくいらっしゃいましたわ」
シャイフがそう言うと令嬢達は更に食らいついて来た
「まあ!羨ましい」
「クリスティーナ様!
来月、クリスティーナ様がお茶会をお開きになられるとか?」
「はい、予定しています」
令嬢達はシャイフをキッと見つめた
「シャイフ嬢はご招待されたのですか?」
「もちろんです」
シャイフは勝ち誇ったように断言した
すると令嬢達は
「まあ!羨ましい」
「クリスティーナ様!
お邪魔でなければ私も招待下さいませ」
「あら、ずるいですわ!
それなら私も!」
クリスは困ってしまった
「あは、そうですね」
そんなクリスに気付いたスージーは
「クリスティーナ様、ご無理に受けなくてもよろしいですわよ
この方達はご婚約者様をご覧になりたいだけなのですから」
と止めてくれた
クリスは少し考えた
「あの…後でヴァルが迎えに来ますのでご挨拶をするように頼みましょうか?」
「ええー!!」
「迎えに来て下さるのですか!?」
「なんて仲がよろしいんでしょう!」
令嬢達はパニックになってしまった
「とても美しい方だとのお噂ですから…」
一人の令嬢がそう呟くと、自分の侍女を呼びお化粧直しの準備をさせた
すると他の令嬢達も慌てて同じように準備をさせ始めた
ヴァルの人気は凄いわね
あ、だから皆、魔法使いを気味悪く思わなくなったのかな?
確かにこのルガード国は魔法使いはオルドリッジ侯爵家だけしかいないので、なかなか仲良くなり魔法使いを知ってもらう事は出来ない
ベイル国はまだルガード国より魔法使いはいるので、魔法使いの偏見はないと聞いていた
こうやって魔法使いに興味を持ってもらえる事は良い事だと思えた
まあ令嬢達は魔法使いというよりヴァルが目的だけどね
クリスは自分自身でツッコミを入れるのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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