33話 想い
ジュリアの襲撃の後いろいろ話しをしたので、クリス達が眠ったのは明け方近くだった
疲れもあり、眠ると深い眠りに落ちてしまった
目が覚めれば、日はとっくに昇っている
昇っているどころか傾いてさえいた
ヤバイ!
今日エリザベス達の屋敷に帰るって言ってたのに、すっかり寝過ごしてしまった
クリスは慌てて飛び起きると、ベットから飛び出し身支度を整えた
もともとネコ科のエリザベスとヴァレンタインは夜の方が元気だ
今の時間帯はお昼寝をしている事が多い
クリスはそう考えて、まずはエリザベスの部屋を訪れた
ドアをノックするが返事はない
…寝てるのかな?
そう考えて、隣のヴァレンタインの部屋の前まで来た
だがエリザベスがお昼寝中なら、ヴァレンタインもお昼寝中の可能性が高い
起こすのも可哀そうだし、やめておこうかな
クリスはノックしようとした手を下げた
だが突然ドアがばん!と開けられると、目の前にヴァレンタインが立っている
「ヴァル、起きてたんだ」
「いや、寝てた
でもクリスの気配がしたから」
「ごめん、起こしちゃったね」
「そう思うなら寝るぞ」
ヴァレンタインはクリスの手を掴み部屋の中へ連れて行くと、真っすぐベットに向かっている
いやいやいや、マズイでしょ
クリスはピタリと足を止めた
するとヴァレンタインは「?」となった
「そっその、ヴァル
お昼寝するなら魔獣に戻って寝ようよ」
クリスは顔を赤くして下を向いたまま頼んだ
そんなクリスにヴァレンタインは意地悪な笑顔になった
「ダメだ
今日はこのまま寝る」
「え!?」
ヴァレンタインはクリスの手を引いてベットまで来ると、ごろんと寝転がった
クリスはベットの横で途方に暮れて立ちつくしている
「ほら、寝るぞ」
「私、さっき起きたばっかりよ」
「じゃあもう一回、寝ろ」
「無茶言わないでよ」
だがヴァレンタインはクリスの腕を引っ張ると、ぐいっと自分の方へ引き寄せた
「きゃ!」
クリスはヴァレンタインの横に倒れ込んでしまった
ヴァレンタインはお構いなしでクリスを抱きしめて、目を閉じている
クリスの心臓はどきどきがすごい
クリスはヴァレンタインに心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかとハラハラしてしまった
いや、ヴァレンタインはネコ科なので耳はいい
多分、聞こえている…
そう考えるとクリスは更に恥ずかしくなってしまい、抱きしめているヴァレンタインの胸に顔を隠した
クリスは自分が先祖返りしたのだと聞いてから、ヴァレンタインに聞きたい事があった
「ヴァル」
「うん?」
「ヴァルは私と主従関係が成立しているから、私を大切にしてくれているの?」
クリスの問いにヴァレンタインは驚いた顔をしながらクリスを見た
クリスは不安そうな顔でヴァレンタインを見つめている
「いや…
まあ最初はこんなちんちくりんの魔法使いに従っていたけど」
「ちんちくりんで悪かったわね」
クリスはふくれた
しかもヴァレンタインは従うと言っているが、どちらかと言うとヴァレンタインが『主』でクリスが『従』だった
「でもずっと一緒にいて…クリスは可愛いし頑張り屋だし俺に懐いてくれてたから」
私は仔猫か?
クリスはツッコミたい所だったが、黙っている事にした
「そのうちクリスを主として守るんじゃなくて、クリス自身を守りたくなった」
「…守る」
「そう、可愛くて守りたくなった」
クリスは思い切って聞いてみた
「ヴァル、私のこと好き?」
ヴァレンタインはにっこり微笑むとクリスのおでこにキスをした
「俺は好きだ
結構、好きを表現してたつもりだけど?」
確かにヴァレンタインはそれっぽい行動をとっていた
クリスはそれが本気とは考えないようにしていたので、からかっているだけだと言い聞かせていた
「クリスは俺の事、好きだろ?」
この自信がすごい
というかネコは何をしても自分が愛されているという事を感じ取っているように思える
ようするにツンデレなのだ
「うん、好き」
「なら何の問題もないな」
ヴァレンタインはそう言うと、クリスに触れるだけのキスをした
「ヴァ、ヴァル!」
「ん?」
クリスはもう心臓がばくばくすぎて大変だ
顔もめちゃくちゃ熱い
そんなクリスの様子を見たヴァレンタインは、意地悪な笑みをこぼした
今度はさっきより深いキスをする
「ん!」
クリスは驚いたが、ヴァレンタインはクリスを抱きしめたままキスを続ける
しっ心臓がもたないよ~
クリスの心の声にお構いなしのヴァレンタインだった
♪♫♬ ♬♫♪
結局、クリスはヴァレンタインとお昼寝タイムに突入してしまった
今は夕食も終え、入浴も済ませて寝る準備をしている
どうしよう…
全然、眠くない
夜着に着替え、侍女が鏡の前に座っているクリスの柔らかい金髪にブラシを通している
「お嬢様、眠くないのですね?」
「うん、起きたのが遅かったから」
その後、ヴァレンタインとお昼寝までしたとは言えない
「今夜は月が綺麗ですよ
少し庭園を散歩しますか?」
「そうね、いいかも」
「それでは上着を準備します」
侍女はそう言うとブラシを置き、部屋から出て行った
クリスは鏡の前に座ったまま、夕食時の話しを思い出していた
父のリチャードの話しでは、ジュリアは体調を崩したらしくメイスン伯爵家へ里帰りしたらしい
「クリスの一撃が利いたんだろうね」
その話しを聞いていたエリザベスは
「ジュリアの討伐方法はまだわからないけど、クリスの太古の魔法は利くようね」
エリザベスは先祖返りしたクリスの魔法を『太古の魔法』と呼ぶ
かっこいいのか古臭いのか微妙だ
「ヒラヌル王女は王妃の許可なく私室に乱入したので、今は謹慎処分を受けて自室でおとなしくしているようだ」
「これで熱が冷めてくれればいいけどな」
ヴァレンタインは夕食のメインディッシュのお肉を美味しそうに食べながら言った
うーん、どうだろう?
あの剣幕じゃ、ちょっとやそっとじゃ冷めない気がする
「それで?君たちはいつ帰る事にしたんだい?」
リチャードの問いにクリスとエリザベスとヴァレンタインは顔を見合わせた
少しの沈黙の後、エリザベスとヴァレンタインが口を開いた
「今は差し当たって障害もないから…
急いで帰らなくてもいいかしら?」
「俺はこの肉が食べれるから、まだ居てもいいぞ」
「クリスちゃんも残れるならお茶会とかを開かないとね
社交デビューしんたんだから、同年代の令嬢との親睦も深めないと」
母のエレンの言葉にクリスはげんなりしながら
「はい、そうですね」
と答えた
これからエリザベスとヴァレンタインの特訓が強化される上に、社交もこなさなければならないとは
これならまだエリザベス達の屋敷に帰った方が特訓だけで済んだのに…
と考えたが魔獣姉弟はオルドリッジ家に残る気満々だ
クリスは言うだけ無駄なので、ここはクリスが大人になってあげるのだった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
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