31話 口づけ
「だめー!!」
クリスの叫び声に、ヴァレンタインに口づけをしようとしていたジュリアの動きが止まった
ジュリアは少しよろめきヴァレンタインの頬を包み込んでいた両手を離すと、自分の後ろを睨みつけた
クリスが杖を使い、剣を振り下ろしたような恰好をしている
ヴァレンタインに背を見せるような態勢になったジュリアの背中は、右肩から背中の中心に向けてまるで剣で斬られたかのようになっていた
「こっ小娘!」
ジュリアは冷や汗を流している
ジュリアの開けた亜空間も斬られていたので、亜空間はゆらりと歪むと閉じてしまった
するとヴァレンタインを絡めとっていてた触手は亜空間が閉じた所で切れると、ヴァレンタインから外れボトボトを地面に落ちた
「…クリス」
ヴァレンタインは驚いてクリスの名を呼んだ
「くっ…!」
ジュリアは斬られた右肩に手を当てているが苦しそうだ
よろよろとクリスから離れるように移動すると、右肩を押さえていた左手を伸ばし亜空間を開くと、ジュリアは亜空間に吸い込まれるように姿を消した
「クリス!」
ヴァレンタインがクリスに近づくと、クリスの様子がおかしい
クリスの身体から魔力が溢れ出ている
「おい、クリス!」
「ヴァル、何これ!?私の魔力じゃないわ!」
「ベス!!」
ヴァレンタインが叫んだ
ジュリアが消えてしまったので、邪魔な玉も消えてしまった
エリザベスは急いでクリスとヴァレンタインの元へ来た
リチャードも相手をしていた水色の髪の男が逃げたので、後は追わずにクリスの元へと駆け寄った
「これは!?」
クリスも訳がわからない
自分の魔力ではない魔力が身体の内から次々と溢れ出てくる
「何、この魔力!?
どうすればいいの?」
クリスはオロオロだ
エリザベスはそんなクリスを見てから、ヴァレンタインを見た
「ヴァル、貴方が収めなさい」
「え?」
エリザベスはクリスの両肩をがしっと掴んだ
「クリス、後で説明するわ、今はその魔力を抑えましょう
ヴァルに手伝ってもらうわ」
「え…う、うん」
エリザベスはヴァレンタインを見ると、クリスの前から移動しヴァレンタインに場所を譲った
「さ、ヴァル」
「お、おう」
ヴァレンタインはクリスの前に立つと、クリスの右手を取った
じっと手を見ると、先程の争いでクリスは手の甲を怪我をしていた
「また怪我して」
ヴァレンタインはそう言うと、クリスの手の甲をペロリと舐めた
「ヴァ、ヴァル!」
クリスは顔が真っ赤になってしまった
ヴァレンタインはそんなクリスをじっと見つめていたが、手の怪我が治るとそのまま顔を近づけてきた
「?」
クリスがきょとんとしていると、ヴァレンタインはクリスに口づけをした
驚いたクリスは握られていない左手でヴァレンタインの身体を抑えパッと離れた
「ヴァッ、ヴァル!」
まだクリスとヴァレンタインの顔は近い
「魔力が収まっただろ?」
「え?」
本当だ
さっきより溢れ出る魔力が収まっている
「もう少しだな」
ヴァレンタインはそう言うと再びクリスに口づけをした
こっ、このやり方で溢れてくる魔力を抑えてるの〜!?
だがしばらくすると、溢れ出ていた魔力が止まった
ヴァレンタインが少しクリスから離れ、クリスを見るとクリスは真っ赤だ
「○△□♢☆✕〜」
クリスは言葉にならない言葉を口をパクパクさせて喋っでいる
ヴァレンタインはニッコリ笑うと
「おまけだ」
と言い、再びクリスに口づけをした
「〜!!」
クリスはジタバタするが、ヴァレンタインに抱き締められていて逃げられない
「ヴァル、終わったなら屋敷に戻るわよ」
エリザベスに言われてヴァレンタインは仕方なく口づけをやめた
「もう少し」
「ダメ、ダメ!ダメ!!
私の心臓がもたないよ!」
クリスの顔は真っ赤だ
ヴァレンタインはそんなクリスのおでこにちゅっとキスをした
「○△□♢☆✕〜!!」
そんなクリスをヴァレンタインは意地悪く笑った
♪♫♬ ♬♫♪
ジュリアは後宮の自分の部屋に戻っていた
服を脱ぎ、ベットに座って左手で右肩を押えている
腕を切り落とされてもすぐに治るのに、この斬られた傷は治らない
「何なの、あの小娘は!?」
喋ると傷に響き、ジュリアは顔をしかめた
あの時の小娘は今までと違う魔力を使っていた
そのせいで、この傷が治らないの?
でもたかが人間の魔力だ
「気に入らないわね、あの小娘!」
ジュリアはギリリと唇を噛んだ
♪♫♬ ♬♫♪
屋敷に戻ったクリス達は椅子に座って一息付いたところだ
今は夜中なので侍女達を起こしてお茶を淹れてもらうのも悪いので、エリザベスは使い魔を出し、お茶を淹れさせた
「さっきの魔力はなんだったの?
ベスは何か知ってるの?」
クリスは使い魔が淹れてくれたお茶を両手で持ち、一口飲んでから聞いた
「私だけじゃなく、皆知ってるわ」
エリザベスは優雅にお茶を飲みながら応えた
「お父さまも!?」
クリスは驚いて、隣に座っているリチャードを見た
「僕は知ってるというか、ベスとヴァルから聞いていたんだよ」
「何を?」
エリザベスはうーんと考えた
「そうねぇ、どこから話せばいいのかしら」
するとリチャードが話しを始めた
「クリスは創造の神・マリア グアダルーペの神話を知っているだろ?」
「はい、全ての生き物は創造の神・マリア グアダルーペによって創られたと」
「うん、そうだね
今でこそ神話だが、恐らくマリア グアダルーペは実際に存在していたようなんだ」
「マリア グアダルーペが本当にいたんですか!?」
クリスは驚いてしまった
それはそうだろう
大昔、世界を創造したという神話の神が実際にいたなんて言われたら
リチャードは話を続けた
「どこまでが神話で、どこが実際の事かはわからないけど、神話では魔法使いや魔獣は創造の神・マリア グアダルーペの魔力を分け与えられたとなっているね」
「そうですね」
「だが魔法使いは昔と違い、その魔力はどんどん弱くなっているのは事実だ」
「はい」
「でもねクリスは突然変異というか、何というか…
先祖返りをしてしまったようなんだ」
「はい?」
意外なリチャードの言葉にクリスは思考が追い付かなくなってしまうのだった
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