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3話 退治

小高い丘の木陰で大きなネコ科の魔獣が2匹、まったりと昼寝をしている


重なり合っている魔獣の真ん中辺りでクリスも眠っていた

真夜中の移動だったので、クリスは途中で眠ってしまっていた


日差しは強くないものの、ちょうど顔に日が当たってしまい、クリスは眩しくて目を覚ましてしまった


ムクリと上半身を起こすと、自分は重なりあうエリザベスとヴァレンタインの上で寝ていた事に気が付いた


キョロキョロと周りを見渡すが、全然知らない場所だ


エリザベスとヴァレンタインは起きそうにない

自分がどこにいるのか確認しようと2匹から降りようとしたが、七又に分かれているヴァレンタインの尻尾がクリスにまとわり付くと、元いた場所に戻されてしまった


「きゃ」

コロンと転がってしまい、声が出てしまった

2匹を起こさないようにしていたのに、思わず声が出てしまった


転がったままヴァレンタインを見ると、片目を半分程開けている


「もう少し寝てろ

まだ奴は動き出さないから」

「ん」


仕方ないのでヴァレンタインの首の辺りに身体を預けて喉の辺りを撫でてあげた


しばらくするとヴァレンタインの喉がゴロゴロ鳴りだす


起きている時にすると怒るヴァレンタインだが、ウトウトしている時ならばこうやってゴロゴロ喉を鳴らしてくれる


大きな魔獣でもやっぱりネコなので、こんな風に甘えてくれると可愛い


エリザベスとヴァレンタインは魔獣の中でも最上位の魔獣だ

彼らはそれなりの役割を担っていた


魔獣達が羽目をはずし過ぎなように目を光らせ、やり過ぎた魔獣には罰を与える

今も最近、人間を襲う魔獣を抑えに来ていた


魔獣にとって人間は餌だが、人間は他の動物と違い魔獣を討伐する

討伐する時はその辺りにいる魔獣も巻きこまれて一緒に討伐される事がある


なのでエリザベスとヴァレンタインは羽目を外しすぎた魔獣を見つけ出し、殺すか人間のいない場所へと移したりしているのだ


私はそんな2人と行動を共にして魔法使いとしての力を付けていた


なんでもヴァレンタインが言うには、魔法使いの力が強ければ強い程、美味しいそうだ


美味しくなる為に修行しなきゃならないとは…


最初の頃は何で美味しくなる為に修行しなきゃならないの!?と思っていたが、今は魔法使いとして力を付ける事が楽しくなってきた


それにヴァレンタインは「食べる、食べる」とは言うけど、たぶん本気ではないように思う


ふと自分達がいる丘の麓の方から魔力を感じた

エリザベスとヴァレンタインも察知したようで、耳をピクリと動かしてから目を開けた


「動き出したな」

「そうね」


2匹はゆっくりと立ちあがったので、私は地面に降りた


2匹はうーんと伸びをする

大きさと尻尾が別れていなければネコと変わりない


2匹は丘から麓を見下ろした


「動いてるな」

「コイツが最近人間を襲っているヤツかしら?」


するとかすかだが悲鳴がきこえた


「コイツだな

クリス行くぞ」

「うん」


そう返事をすると、クリスはヴァレンタインの背中に飛び乗った


エリザベスは一足先に丘から飛び降りている

続いてヴァレンタインも飛び降りた


丘の麓は森になっていた

森の中を2匹は器用に走る

よく(つまず)いたり木にぶつからないものだと関心してしまう


木々の間を移動していると、大きなクマのような動物の背が見えた


クマは二本足で立上り、今まさに片手を振り下ろそうとしていた


クリスは杖を召喚すると、右手に杖が現れた

3年前よりは随分、杖も延びていた

今では自分の身長より長い


クリスが杖をクマに向って指すと、杖から光が発せられクマに当たった


「グオォォォ!」

クマは弾き飛ばされながら叫んだ


先程までクマが居た所には中年の男性が(うずくま)っていた


クリスはヴァレンタインから飛び降り、その男性の側へ駆け寄ると

「ひぃい」

と男性は頭を抱えて怯えてしまった


ちょっと!失礼じゃない!

可憐な15歳少女に向ってそれはないでしょ


と言いたい所だが、それは後回しにした


クマはこちらを向いて「グルルル」と唸っている


口からはヨダレを流し赤く光る目は4つもある

爪もクマの手のひらくらいの長さがあり、かなり太い


魔獣だ


エリザベスとヴァレンタインはクリスとクマの魔獣の間に立ち、クマを威嚇をした


「どうする?」

「人間を食べて力を付けたみたいね」


一度、人間を食べると味を占めて再び人間を襲う

この魔獣は随分と人間を食べたのだろう

エリザベスとヴァレンタインは魔獣の体からする人間の血の匂いでわかった


「コイツはまた人間を喰うな」

「そうね

問題を起こす前に消し去りましょ」


ヴァレンタインとエリザベスはそう決めるとクマの魔獣に飛びついた


クマは長い爪をブン!と振り下ろすがヴァレンタインは人型になり片手でその腕を押えた


エリザベスも人型になると、自分の尻尾から取った長い毛を両手に持ち、クマを跳び越える時にクマの首に巻き付けた


エリザベスはクマの背後に着地をすると同時に両腕を自分の胸の前で交差させた

するとクマの首に巻き付けられた尻尾の毛が絞られ、クマの首がヒュンと空を飛んだ


クリスは再び杖をクマに向けると青白い光が発せられ、クマの体と首を包み込み、パアッと激しい光を放ちクマごと消えてしまった


たぶん1分もかかっていない

あっと言う間に終わった


クリスは自分の足元で頭を抱えて震えている男に目をやった


服装から察するに(きこり)のようだ


「あの…」

「ひいっ!」


ちょっと…失礼でしょ

まぁ仕方か


「もう大丈夫ですよ」


クリスが声を掛けると、男は恐る恐る顔を上げた


自分の側に立っている少女を見て、何があったのか理解出来ないようだった


「他に襲われた人はいますか?」

クリスに聞かれ、男はまだパニクっているが答えた

「いや、俺だけだ」

「そうですか

怪我はありませんか?」


そう聞かれると、男はようやく落ち着いて来た


自分の手足を見ると

「だ、大丈夫だ」

と答えた


「良かったです

魔獣は退治したのでもう出る事はないですよ」

クリスはニッコリと微笑んだ


「…はあ」


まだ呆けてるけど大丈夫かな?


クリスはそう考えたが

「それでは」

と言うとヴァレンタインの方へと駆け出した


ヴァレンタインとエリザベスはボン!と煙を立てると魔獣に変わった


「ひいっ!」


男は再び頭を抱えて地面にうずくまるが、クリスはヴァレンタインの背中に乗ると2匹は音もなく飛び去ってしまった


大空を駆けるヴァレンタインの背中でクリスは「失礼しちゃうわ」とぷりぷり怒っている


「ほっとけ

たまたま襲われて助ける形になっただけだ」

「そうそう

あの人間を助けた訳じゃないから」

「…ん」


少しわだかまりが残るが、この2人がそう言うなら仕方ない


「さ、帰るか」

「あ、ヴァル

今日は私の家に帰ってよ?」

「何でだよ」

「もう忘れたの?

明日は私のデビュタントの日なんだから」



ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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