14話 夜会
会場はざわついていた
ベルトレ侯爵夫人主催の夜会には大勢の貴族が招待されていた
その夜会にクリスとヴァレンタイン、エリザベスとエイブラハムが訪れると、会場の空気が一変したのだ
ルガード国では見たこともない美しい女性が現れたからだ
エリザベスは長身でほっそりしている
スタイルも抜群なうえに、容姿も人間ではないかのように美しい
実際、人間ではないのだが…
プラチナブロンドの髪をゆるく結い上げているので、長い首筋にネックレスが輝き実に映えていた
「…申し訳ないよ」
エリザベスをエスコートしているエイブラハムがしょんぼりとした顔で呟いた
「何が?」
エイブラハムの隣に立つ、エリザベスが不思議そうに聞いた
「ベスの隣にいるのが僕で
ベスにはヴァルのような二枚目がお似合いなのに」
「私もです
ヴァルにはベスがお似合いなのに」
オルドリッジ兄妹は自分のパートナーが素晴らしすぎて、申し訳なくなっていた
「あら、クリスは可愛いわよ?
ヴァルとお似合いだと思うわ」
「エイブも男前だぞ?
まあ俺ほどじゃないけど、そこら辺にいる男の中じゃ見栄えはいいぞ」
「珍しいわね、ベスとヴァルが気を使ってくれるなんて」
クリスの言葉にヴァレンタインはキョトンとした
「ん?別に気を使ってなんかいないぞ
クリスは本当に可愛いからな」
「えっ?」
「エイブも自信を持ちなさい
貴方はハンサムだし、魔法使いとしてとても強くて、そして優しい人よ」
「えっ?」
クリスとエイブラハムはお互いの顔を見合わせた
ベスとヴァルはお世辞を言うタイプじゃないわよね?
うん
じゃあ、今のは…?
クリスとエイブラハムは目でこんな感じのやり取りをした
だが結局「お世辞よね」と2人は結論づけた
4人でシャンパンを受け取り会場を観察するが、ジュリアはまだ来ていないようだ
「まだ来ていないようね」
エリザベスは鋭い眼差しで会場を探っている
「父上の調べでは参加する事になっているそうだから、じき来るよ」
エイブラハムはせっかく夜会に来たのだから、少しはエリザベスにも楽しんで欲しかった
「クリスティーナ様!」
大勢の人の中からシャイフが声を掛け、こちらに来た
「クリスティーナ様、ヴァレンタイン様
お越し頂き本当にありがとうございます」
「シャイフ様のせいではありませんわ」
クリスはニッコリ微笑んだ
そんなクリスを見て、シャイフは更に申し訳ないような顔になってしまった
「ヒラヌル王女も、もう少し分別をつけて下さればよろしいのですが」
シャイフもこのような形でクリス達を招待するのは嫌だったのだろう
だが王女に頼まれては断る事は出来ない
王女は自分の頼み事は命令と変わらないと理解して欲しいものだ
もし理解してやっているなら、それはそれで迷惑だが
「シャイフ様、本当にお気になさらないで下さい
こちらも兄達の同行をお願いしたのですから」
クリスの言葉にシャイフは顔を上げると、先程とはうって変わって好奇心旺盛な顔になっていた
「そうですわ、クリスティーナ様!
こちらのお美しいお方をご紹介下さいませ」
エリザベスはニッコリ微笑んでいる
「エリザベス・エヴァ・レイメントと申します」
眩しすぎる
クリスは眩しくてよろめきそうになってしまった
「レイメント様?ではヴァレンタイン伯爵とは…?}
「ヴァレンタインの姉です」
「まあ!どおりでお美しいはずですわ」
シャイフは両手を胸の前で合わせてエリザベスに見とれている
その気持ちわかります
私もベスに見とれてしまいます
クリスはうんうんと頷いている
「クリスティーナのデビュタントを終えたら弟との婚約がありましたので
レイメント家は私と弟のヴァレンタインだけですので、婚約にあたり私も同行してルガード国に参りましたの」
「そうでしたの
ベイル国が羨ましいですわ
ヴァレンタイン伯爵やエリザベス様のようのお美しい方が社交界のおられて」
「ありがとうございます」
エリザベスの微笑みにクリスだけではなく、シャイフもそしてエイブラハムもうっとりと見とれてしまった
シャイフははっと我に返ると
「どうぞごゆっくりして下さいませ
まだヒラヌル王女は起こしになられていませんので」
要するに「まだ面倒くさい王女は来てないから、楽しんでね」という事だ
エリザベスはそう解釈すると
「ありがとうございます
ルガード国の夜会を楽しませて頂きますわ」
と微笑みながら返事をした
♪♫♬ ♬♫♪
「ヴァレンタイン様、今度我が家のお茶会においで下さいませ」
「我が家の庭園は自慢の庭園ですの
一度、見においで下さいませ」
「エリザベス嬢
私と踊って頂けませんか?」
「エリザベス嬢、どうかこのままルガード国にずっと滞在して下さい」
などなどエリザベスとヴァレンタインの周りには人が集まり口説きまくっている
だがエリザベスもヴァレンタインも慣れているのか、上手くかわしている
するとシャイフがやった来た
シャイフの横にはヒラヌル王女がいる
「皆さん、こんばんは
こんばんは、ヴァレンタイン様」
ヒラヌル王女の登場で、皆かしこまった
「偶然ですね、ヴァレンタイン様」
ヒラヌルはニッコリ微笑みながらヴァレンタインに近づいた
いや、偶然じゃないでしょ
貴女がワガママ言ったんじゃない
クリスは呆れている
「あちらでご一緒にシャンパンでも頂きません?」
ヒラヌルは周りの貴族は無視して、ヴァレンタインだけに話し掛けている
シャイフはヒラヌルのそんな態度をハラハラしながら見ていた
「申し訳ございません
僕はクリスティーナの側を離れたくないので」
ヴァレンタインはニッコリ笑いながら断った
周りの令嬢からは「きゃっ」など声が上がった
ヒラヌルは明らかに不機嫌な顔になった
「クリスティーナ様は社交界にデビューなさったのですからお一人でも大丈夫ですよね」
ヒラヌルはクリスを睨みつけた
「えっと…」
クリスが困っていると、ヴァレンタインはクリスの肩に手を回した
「僕がクリスティーナと離れたくないのです」
遠くでは「きゃー」と悲鳴が聞こえる
ヒラヌルは怒りの為か震えている
「クリス、テラスにでも行こう」
ヴァレンタインはクリスの肩を抱いたまま、テラスへと誘った
エリザベスとエイブラハムも2人のあとに付いてその場から離れた
怒りで震えているヒラヌルに関わるまいと、周りにいた貴族はコソコソと離れてゆく
「ヴァル、大丈夫かな?」
クリスは肩を抱いているヴァレンタインを見上げながら心配そうに聞いた
「ん?ほっとけ」
「うん」
いいのかな?
クリスはチラリと後ろを見ると、こちらを睨みつけているヒラヌルの姿が見えてしまった
ご精読、ありがとうございます
m(_ _)m
次話もよろしくお願いします!
。◕‿◕。




