11話 お茶会
デジュタントを終えた翌日、クリスの元には多くの招待状が届いていた
中には魔法使いを毛嫌いしていた令嬢からの招待状もある
「どうしようかしら?」
クリスは困っていた
ヴァレンタインは気まぐれだ
今はオルドリッジ家での滞在に不満はないが、いつ「帰るぞ」と言い出すかわからない
しかも面倒なのはヒラヌル王女からも招待状が届いている事だ
これはヴァレンタインもぜひにとまで書かれている
「ヴァル、どうしようかしら?」
ヴァレンタインとクリス、そしてエリザベスは2階のテラスでお茶を飲んでいた
「行きたくなければ、行かなければいい」
最もなご意見だ
だがそれが通じる世界ではない
まして王族からの招待だ
断るなんて選択肢はないのだ
「本当にヴァルは成長していないわね
人間の世界では自分の好きに出来ない事もあるのよ」
さすがエリザベス!
大人なご意見だ
「面倒だなぁ、人間の社会は
仕方ないな、クリスが行くなら俺も行くよ」
「ありがとう」
早速、準備をしなければ
社交界デビューして、一番最初のお茶会が王女主催のお茶会とは…
しかもヒラヌル王女は明らかにヴァレンタイン狙いだ
ヴァレンタインが魔獣だと知ったらどんな顔をするだろう
バレないように気をつけなくては…
クリスには頭の痛いお茶会だった
♪♫♬ ♬♫♪
王女主催のお茶会当日は晴天だった
庭園に案内されたクリスとヴァレンタインはすぐに他の招待客から質問攻めにあっていた
「こちらの殿方をご紹介、下さい」
「お名前は何と仰るの?」
「お幾つですか?」
「我が家の娘とお似合いですわ」
なんて勝手に自分の娘との縁談話しを進めるご婦人もいる
「申し訳ありません
僕はクリスティーナと婚約していますので」
えっ?!
ヴァレンタインの言葉にクリス本人が驚いた
だがヴァレンタインはニコニコしている
「まぁ、クリスティーナ様がご婚約されたとは伺っておりませんでしたわ」
自分の娘を推してきた婦人の笑顔は引きつっている
「正式な婚約はクリスティーナが社交界デビューした後になっていましたので
ようやく婚約しました」
「まあ、そうなんですか」
そうなんですか!?
クリスが聞きたかった
するとヴァレンタインはクリスの手を取るとそっと口づけをした
「ねぇ?僕のクリス」
上目遣いで見つめられてしまい、クリスの心臓はドキドキだ
だがこれはきっと言い寄ってくる令嬢達を追い払うための演技なのだろう
「ええ、ヴァル」
クリスも優雅に微笑んだ
どこからか「きゃー」と悲鳴が聞こえる
ちょっとやり過ぎたかしら?
そこへヒラヌル王女が訪れた
「皆様、お集まりになられましたね
私がお茶会を開くのは初めてです
不慣れですが、精一杯ご用意させて頂きました
では始めましょうか」
上座に座るヒラヌル王女の右隣にはベルトレ侯爵令嬢、そして左隣にクリスが案内された
え〜こんなに王女と近いの?
もちろんクリスの隣にはヴァレンタインが座る
これは王女が考えたんでしょうね
クリスは小さくため息をついた
クリスの向かい側に座るベルトレ侯爵令嬢はクリスより年上に見える
薄い茶色の髪に青い瞳の令嬢だ
穏やかな笑みを携え、クリスに話し掛けた
「クリスティーナ様は社交界デビューなされたばかりとか?
私はシャイフ・ミナ・ベルトレと申します
よろしくお願いしますね」
「クリスティーナ・ルナ・オルドリッジです
シャイフ様、よろしくお願いします」
クリスも微笑んだ
シャイフはチラリとヴァレンタインを見ると
「婚約者様は素敵なお方ですわね」
「あ、ありがとうございます」
話しがどんどん進む
もはや確実に婚約者扱いだ
「婚約者?」
ヒラヌル王女は信じられないといった表情で聞いた
あ、ヤバイかも
ヒラヌル王女はヴァレンタインに興味を持っている
まさかクリスと婚約しているとは思ってもいなかっただろう
だがヴァレンタインはクリスの左手を取ると再び口づけをした
「社交界デビューした後に正式に婚約したのです」
「ま…あ、そうでしたの
おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ヒラヌル王女は全然おめでたくない顔だ
なんとなくギクシャクした時間が過ぎた
最初は長方形のテーブルを何個も繋げたひとつの長いテーブルの席に着いていたが、庭園には他にも丸テーブルが何個も準備され、招待された客人は庭園を散策したり丸テーブルで仲の良い友人とお喋りをしたりしていた
クリスはヴァレンタインとなるべく人目に付かない場所にあるテーブルへと移動した
「私達、婚約者なの?」
「そう」
「いつから?」
「まぁいいじゃないか」
やっぱり言い寄って来る令嬢避けか
クリスは少し残念な気持ちなっていたが
うん、あたり前!あたり前!
と自分に言い聞かせた
「さっきの…シャイフとか言う令嬢」
「うん?」
珍しくヴァレンタインの方から令嬢の話しが出るとは思わなかった
「今、一緒にいる女は誰だ?」
クリスはヴァレンタインの視線を追った
ヴァレンタインの視線の先にはシャイフともう一人、20代…25歳くらいの女性と話しをしていた
長いストレートの髪は深い青色をしていて、黒髪かと思うほど濃い
クリスはじっとその女性を見た
何だろう?
何か違う気がした
「わかるか?魔獣だ」
クリスはヴァレンタインの言葉に驚いた
「えっ!?魔獣?」
「わからなかったか?」
「何か変な感じはしたけど…
まさか魔獣とは思わなかったわ」
クリスはもう一度、その女性を見た
すると向こうもこちらに気が付いたのか、クリスと目が合ってしまった
クリスは驚いて視線を外すと、ヴァレンタインを見た
「何の魔獣かしら?」
「何かな?
だが人間社会に紛れ込んでいるから、かなり上位の魔獣だな」
「そうね」
以前、ヴァレンタインとエリザベスも人間社会に入り込んで生活をしていたと聞いた
ヴァレンタイン達以外の魔獣が人間社会にいてもおかしくはない
「上手く気配を変えてるよ
あれならオルドリッジの当主でも気付かないだろ」
「そうなの?
私は何だか変な感じはしたけど?」
するとヴァレンタインはクリスの頭に手を置くとポンポン叩いた
「それは魔法使いとして腕が上がってるって事だ」
クリスは顔が熱くなるのを感じた
「そ、そう?」
平静を装ったが、心臓がばくばくすぎて言葉が出なかった
「順調に美味しくなってるな」
ヴァレンタインはうんうん頷いている
やっぱり餌扱いですか…
ドキドキした自分が情けない
クリスは大きなため息を漏らしてしまうのだった
気に入って頂けたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。◕‿◕。
いいね(≧∇≦)bや☆も頂けると嬉しいです!
よろしくおねがいします!




