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106話 出発

クリスは使い魔の後ろに立つと、使い魔の背中に右手を当てた

目をつぶり自分の魔力を手のひらへと集中させる


「よし、いいぞ

そのまま円のように魔力を広げるんだ」

クリスの横に立ち、腕組みをしながらヴァレンタインは指示した


円…えん…


クリスは一生懸命、頭の中で円をイメージすると、使い魔を中心にシャボン玉のような何とも儚い膜が広がった


「もう少し大きさが欲しいな

出来るか?」

ヴァレンタインに聞かれたが、集中を解くとこの儚い結界は割れてしまいそうので、クリスは返事をせずに結界を大きくするイメージをした

すると一気にぶわっ!と結界は大きくなり、この食堂だけでなく周りの部屋、1階や3階までも包みこんだ


ヴァレンタインは上を見上げながら

「うん、大きさはこんなものか

でもな…」

と言うと残念そうにクリスを見た


クリスは使い魔の背中に手を当ててオロオロしながらヴァレンタインを縋るような目つきで見つめた

「不安定な気がする

この手を離したら結界が破れそう」

「うん、俺もそう思う」

「どうしたら安定するのかしら?」

「うーん、もう少し集中してみろ」

「う、うん」

ヴァレンタインに言われ、クリスは再び目をつぶって集中した


シャボン玉のような結界はぐにゃぐにゃ揺らぐが安定はしない


そんな結界を見つめている人物がいた

食堂から離れた、結界の外側からこの結界を見上げている

エリザベスだ


エリザベスは腕を組み、片手は頬に当てて結界を見つめていた

「クリスはあの人間を放っておけないんだね」

エリザベスの背後からレジナルドが近づき、声を掛けた


エリザベスは少し振り返りレジナルドを見ると、苦笑いをした

「クリスは優しいのよ」

そう言うと、再び結界を見上げた

今にも破れてしまいそうだ


「不安定だね」

レジナルドもエリザベスの横に来て、結界を見上げた

「もう、いくらやった事がない魔法だからって…」

エリザベスはぶつぶつ言いながら、そっと手で結界に触れた

すると途端にピン!と結界が張ったのだ


「!」

「あれ!?」

突然結界が安定して、クリスは驚いて結界を見上げた

ヴァレンタインは離れた所にいるエリザベスとレジナルドの気配に気が付いていた


そりゃまあ、そうだよな

俺だってクリスが使い魔を創っただけで気が付いたんだ

ベスとレジが気が付かない訳がないか


ヴァレンタインは「ふっ」と笑ってからクリスを見ると、クリスは不思議そうに結界を見ている

「ヴァル、急に安定したわ?」

「うん、そうだな

もう手を離しても大丈夫だ」

「あ、うん」

ヴァレンタインに言われ、クリスはそっと使い魔の背中から手を離した

結界はまったく揺らがない


「大丈夫そうだな」

「うん」

しばらく二人で結界を見上げていたが、ヴァレンタインがクリスの肩に手を回した

「俺達が出来るのはここまでだ

さ、行くぞ」

「うん」


クリスとヴァレンタインは食堂のドアに向かって歩き出した

クリスは食堂から出る時に振り返り、食堂の真ん中あたりでこちらを見ている使い魔を見た

「お願いね」

「はい」

使い魔の返事を聞き、クリスは魔法で灯していた明かりを消した


「帰ったら結界の練習をさせなきゃね」

エリザベスはやっと安定した結界を見上げながら呟いた

「厳しい先生だね」

レジナルドに言われ、エリザベスはキッとレジナルドを見た

「魔法は習得すれば必ず何かに役に立つわ

習得する数は多ければ多いほどいいのよ」

「それはそうだね」

レジナルドはエリザベスの肩に手を回すと、再び結界を見上げた

エリザベスも一緒にもう一度、結界を見上げた


「さあ、私達も行こうか」

「ええ」

そう言うと、エリザベスとレジナルドは結界に背を向けて歩き出した


  ♪♫♬  ♬♫♪


城の正面側はごったがえしていた

城にある荷馬車に荷物を載せ、それでも乗り切らない荷物は使用人が魔獣の姿になり担いだり銜えたりした


あの人、トカゲの魔獣だったんだ


そんな意外な真実を知ってクリスは密かにショックを受けたりしている


そして準備が出来た者からエリザベスが創った亜空間へと消えていった


亜空間を閉じなければならないエリザベスは最後にこの亜空間に入らなければならないので、ヴァレンタインやクリスそしてレジナルドが乗る大型の馬車は最後に出発する


荷物が亜空間へと運び込まれて行くと次はレジナルドと行動を共にする使用人達が馬車や馬、中には徒歩で亜空間へと入って行った


「スコットは先に向こう側に行かせてある

後は私達だけだ」

レジナルドがそう言うとエリザベスとクリス、そしてヴァレンタインが大型の馬車に乗り込んだ


城の玄関先にはこの地に残る使用人達がずらりと並んでいた

一人の年配の男性が一歩前に出て、レジナルドに挨拶をした

「何事もなければこの生命が尽きるまで旦那様にお仕えする所存でしたが、まさかこのような別れが来るとは…

出来れば私達も旦那様にお供したかったです

ですが生まれ育ったこの地を離れる事も…」

男性はそう言うと涙を流した


レジナルドは年配の男性の肩にポンと手を乗せるとニッコリと微笑んだ

「うん、わかっているよ

生まれ育った地に残りたいという気持ちは当たり前だよ」

レジナルドにそう声を掛けられると男性は更に泣き出し、後ろにいる使用人たちも泣き出してしまった


レジナルドはずらりと並んでいる使用人をゆっくりと見ると寂しそうに微笑んだ

「今までありがとう

お前達も達者で暮らすんだぞ」

「…はい、ありがとうございます」

男性は涙を拭った

「旦那様方をお見送り致します

これを我々の最後のお勤めとさせて下さい」

「ありがとう」

レジナルドはそう言うと使用人達に背を向け馬車に乗り込むと、年配の男性がそっと馬車のドアを閉めた


レジナルドは馬車の窓を開けると

「元気でな」

と手を振った

使用人達も涙ながらに

「ありがとうございました」

「旦那様もお元気で」

と言って手を振って見送った


馬車はゆっくり動き亜空間の中に入ると亜空間はシュンと閉じてしまい、辺りは真っ暗になってしまった




ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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