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103話 混乱

ベイル国では秋も深まり、朝晩はすっかり寒くなってきた


クリスはヴァレンタイン達の屋敷にある自分の部屋の窓から外を眺めてため息をついた

半年程前にクラーク国へ行っていたが急遽この屋敷に戻る事になってしまった

クラーク国王がレジナルドと結んだ約定を反故にしたのだ


約定によりその地に縛られていたレジナルドだったが、約定の反故により自由を手に入れた

自由を手に入れたレジナルドは人間に干渉されないようにその地から去ってしまった


そのため、レジナルドの城にはドロレスとニコルが取り残される形になってしまい、クリスは二人を放っておけずに空き家となったレジナルドの城に使い魔を残して来たのだった


普段使う使い魔は鳥で、使い先に着いたら手紙へと変わる

だが残してた来た使い魔には二人を守るために結界を張るので人の姿の方が都合が良かった


まず喋る事が出来るので、ドロレス達に現状の説明が出来る

そして城の中で籠もれる場所を探し、食料や水を集めるとドアや窓に家具でバリケードを作るようにと使い魔に指示していた


クリスは自分に模した使い魔を初めて創り、結界は作った事がないので完璧に見様見真似だった

どれくらいの魔力が必要なのか、何日で救助されるかもわからなかったので、なるべく長く結界を張っていられるように魔力の消費を押さえるため、視覚の共有をしなかったのだ

その為クリスはドロレス達がその後どうなったか知る術がなかった

「無事に救出されたかしら」


クリスは窓際から部屋の方へ戻るとソファに座り、机に広げられている手紙に手を伸ばした

手紙は父・リチャードからの物で近状の事が書かれていた

その中にクラーク国から近隣の国々に魔法使いを借りたいと依頼がされているようだ、と書いてあった


クリスの母国・ルガード国では魔法使いはクリスと兄のエイブラハム、そして父のリチャードだけなので他国へ行く程の余裕はない

他の国も冬は魔獣がエサ不足になり人間を襲う事が多くなるので魔法使いを派遣するのは難しいだろうとリチャードは語っている


魔法使いを集めているという事は魔獣達が人間を襲っているのかもしれない

レジナルドにより統率されていた魔獣達は枷がなくなり、食べ物を求めて人間にまで手を出し始めたのだろう


ベイル国やルガード国はまだ秋だが、クラーク国では一足早く冬が訪れている

長い冬を無事に越せるだろうか


クリスがそんな心配をして「ふうっ」と一息つくと、リチャードからの手紙はぼん!と消えてしまった


  ♪♫♬  ♬♫♪


「レジナルドはまだ見つからないのか!?」

クラーク国王は怒りを露わにしている


会議室の上座に座り、両側には大臣や貴族達が座っていた

「申し訳ございません

魔法使いを総動員して国中に使い魔を放ち探しておりますがまだ…」

クラーク国王のすぐ左隣にいる初老の男性は冷や汗を流しながら答えた

「くそっ」

クラーク国王は握り拳で机をどん!と叩いた

その握り拳の下には一枚の紙がある


数代前のクラーク国王とレジナルドが結んだ契約の書だ

この書は2枚作られていて、一枚は王家が、そしてもう一枚はレジナルドが持っていた


今、国王の拳の下にある契約の書は王族が保管していた書だ

その契約の書にも透かしのような魔法陣が入っているが、その魔法陣は真っ二つに割れていた


国王は長方形の机の真ん中辺りに座っている白髪の老人を睨んだ

「お前は魔法使いだろ!

この書をもとに戻せ!!」

国王に怒鳴られた老人は慌てる様子もなく、すっと立ち上がった

「一度反故にした契約の書はもとには戻りません

新たに約定を結び直すしか方法はないのです」

魔法使いの老人の説明に国王は再び拳で机を叩いた


レジナルドが消えてから少しずつ、魔獣が人を襲ったという報告が上がるようになっていた

ひどくなったのは雪が降り積もってからだ

あちこちの村から魔獣に襲われたと報告が上がり、騎士と魔法使いの派遣の要請が後を絶たなくなったのだ


「首都からそう離れていない5つの村との連絡が途絶えました」

一人の騎士が報告した

その報告を聞いたその場にいた大臣や貴族達はどよめいた

「村が壊滅したのか?」

「わかりません

魔獣に襲われ壊滅したのか、それとも守りに徹するために村に籠もったのか…」

すると別の騎士も別の報告をした

「この首都近辺の8つの村から騎士と魔法使いの派遣の依頼が来ております」

「更に8つ?」

「無理だ!そんなに騎士や魔法使いを派遣しては首都の警備の支障がでる!」

貴族達はわあわあ意見を言い合った


ある程度、意見を言い尽くすと皆国王を見た

最終的には国王の判断だ


クラーク国王はしばらく考え込んだ

秋の辺りから作物が荒らされ、魔獣の出没に農作業もままならない状態だった

おかけで今年は例年にない不作の年となってしまった

そして雪が積もると魔獣達もエサが減り、次々と人間の村を襲うようになっていた

国中の村からは救助の要請が後を絶たない


「…首都を封鎖する」

「は?」

「自分達の村は自分達で守れ

首都が魔獣に襲われる方が一大事だ

この冬を乗り切る食料も今年は少ない

他の村から避難してくる者が増えては首都の食料が尽きてしまう」

大臣達はざわついている

だが国王は話しを続けた

「首都さえ無事ならば春になれば立て直しも出来よう

周辺の村々は捨てろ!

首都だけを守れ!」

「陛下!それはなりません!!」

家臣が大声で反対した

「穀倉地帯を担う村々がなくなれば春になっても農作物を作る者がいなくなります

彼らは国にとって必要なのです

その彼らを捨てる事は国の将来を捨てる事と同じです!」


クラーク国王は黙ってしまった

やはり一番簡単で確実で手っ取り早い方法はレジナルドに再び魔獣を統率してもらう事だ

「ドロレスは何をやっていたんだ!

一番身近にいたのに…!」

怒鳴られたシンプソン伯爵は体を小さくして下を向いていた

国王はそんなシンプソン伯爵を指さし

「シンプソン一族を全て処刑し、財産や領地を没収しろ!」

「へ、陛下っ!」

シンプソン伯爵は慌てて顔を上げ、国王へ近づこうとしたが騎士達に取り押さえられてしまった

「没収した金で草の根分けてでもレジナルドを探してここへ連れてこい!

何が何でももう一度レジナルドと契約を結ぶ」


シンプソン伯爵は何か叫んでいるが、騎士達は構わずに部屋からズルズルと連れ出した


クラーク国王は額に青筋を立てて息を荒立てている

「レジナルドめ…」

国王はもはや何の効力もない契約の書を睨むのだった



ご精読、ありがとうございます

m(_ _)m


次話もよろしくお願いします!

。◕‿◕。

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