101話 約定
ユニコーン達との再会を果たしたクリス達は再びウィルソン城へと戻っていた
ルガード国やベイル国は真夏でうだる暑さだが、ここクラーク国は避暑地としては最高だ
中庭では木陰に可愛らしい木製のテーブルと椅子を準備しお茶やお菓子を食べたり、大きな木の枝から吊り下げたハンギングチェアでまったり読書などしてゆったりと過ごしていた
スコット達が気を配り、ドロレス達と鉢合わせもしない
レジナルドもエリザベスやヴァレンタインと久しぶりにゆっくり過ごせる時間を楽しんでいた
だがそんな幸せをぶち壊す手紙がレジナルドの元へと届いたのだった
執務室でその手紙を読んだレジナルドは手紙をぎゅっと握りつぶした
「旦那様?
国王からは何か面倒事でも言って来たのですか?」
レジナルドに手紙を届けたスコットはレジナルドの態度を見て心配になり、出過ぎた事とはわかっているがレジナルドに聞いた
レジナルドは「ふーっ」と一息ついた
「国王が春に首都で私とドロレス嬢の婚約を正式に結ぶので一度登城しろと言ってきた」
「それはそれは」
スコットは呆れ顔だ
「しかもベスを妾と認めるので、ベスは首都に住まわすようにとまで言ってきた」
「ほぉ」
もはやスコットは次は何が出てくるか楽しみにしている感じだ
レジナルドはクシャクシャになった手紙を見つめた
「…これは約定の反故だな」
「左様でございますね
いかがなさいますか?」
レジナルドはしばらく考ると、すっと立ち上がった
♪♫♬ ♬♫♪
ドロレスはレジナルドに手紙が届く数日前に、父親の使い魔から手紙を受け取っていた
内容は国王陛下がドロレスとレジナルドの結婚をレジナルドに通告する事、エリザベスは妾という名目で首都で軟禁するとあった
先程勅使が訪れていたので、今頃はレジナルドにその旨が伝えられただろう
「ふふっ」
エリザベスの驚き、悔しがる顔を想像すると笑いが込み上げてくる
「よろしかったですわね、ドロレス様
さすがは国王陛下です
レジナルド様も国王陛下に逆らうような事はなさるはずがありませんもの
ドロレス様とレジナルド様のご結婚は決定事項ですわ」
「本当に
あの女を首都に送る時はみすぼらしい馬車に閉じ込めて送りましょう」
ドロレスは閉じたままの扇で口を押さえているが、どうにも笑いが止まらない
王族の血を引く自分とクラーク国の大将軍であるレジナルドとの結婚式は盛大に執り行おう
首都の大聖堂まではパレードをして、あの女に見せつけてやる
ドロレスの胸は輝かしい未来に向けて喜びに満ちあふれていた
♪♫♬ ♬♫♪
東棟の3階はレジナルドが仕事で使うフロアだ
執務室や書記官達の部屋などもあり、資料室もあった
レジナルドは今、その資料室へとやって来ている
資料室は3階と4階が吹き抜けのようになっていて、四方の壁には資料や書物などがぎっしりと並べられていた
部屋の中央には机と椅子があり、レジナルドは椅子に座ると机の右側にある、上から2段目の引出しを開けた
引出しの中には書類が片付けられているが、レジナルドはその書類を全て机の上に出した
レジナルドは空っぽになった引出しの底に手をかざすと引き出しの底が青白く光だし、その光はパアッと大きく輝いた
光が収まるとレジナルドが座っている足元に大きな穴が開き、地下へと続く階段が現れていた
階段はかなり深くまで続いているのか中は真っ暗たが、レジナルドは躊躇う事なく地下へと降りて行った
降りれば降りるほど真っ暗になるが、夜目が利くレジナルドは全く気にもせずに下へと降りて行った
階段を降りきるとそこは小さな空間になっている
レジナルドは魔法でその空間に明かりを灯した
その空間は人が5人ほど入ればいっぱいになるような小さな円形をしていて、部屋の中央には小さな木箱が置かれていた
レジナルドは木箱の前でかがみ込んだ
木箱は長い間放置されていたようで、ホコリが積もっている
レジナルドは軽くホコリをはたいた後、手に付いたホコリをパンパンと落とすとそのまま木箱に手をかざした
やがて木箱の蓋にぼんやりと魔法陣が現れ、白く輝き始めた
レジナルドは小さな声で何か呟くと木箱がカチャリと音を立てた
鍵が開いたのだ
レジナルドは両手で蓋をそっと開けた
木箱の中には古びた紙が一枚あるだけだ
レジナルドはその紙を手に取るとじっと見つめた
この紙は何代も前のクラーク国王とレジナルドが交わした契約の書だった
レジナルドはこの国の魔獣を統率し、人間に危害を加えない
そして国王はレジナルドに干渉しない
国王とレジナルドはお互いの血で押印し、そして魔法陣を施しこの約定を結んだのだ
契約の書に透かしのようにある魔法陣は本来、円形をしている
だが今、レジナルドが見ている契約の書の魔法陣は斜めに亀裂が入り、ぱっかりと割れていた
「ふっ」
レジナルドはニヤリと笑った
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