1話 初陣
数ある作品の中から選んでいただき、ありがとうございます
(*´ω`*)
どうかお付き合い下さい
よろしくお願いします
。◕‿◕。
「ぎゃあぁぁぁ」
今まさに、私クリスティーナは12年の短い人生に終止符を打とうとしている
大きな獣が私を丸呑み出来るくらいに口を開けている
ああ、あの鋭い牙、痛そう
最後に思った事がこれとは…
そして目の前が真っ暗になった
♪♫♬ ♬♫♪
柔らかな朝日を感じて目を覚ましてしまった
ん〜もう少し寝てようかな
なんて考えてハタ!と気が付いた
私、死んだよね?
あの獣に食べられて
ガバッと身を起こすと見知らぬベットに見知らぬ部屋
天国…って生きてる時とあんまりかわらないんだ
そう考えてベットから降りて窓に向かった
天国の風景ってどんなのだろ?
窓を開けテラスに出ると、小高い所にいるのか、眼下はずっと森が広がっている
ん?天国ってもっとキラキラとかふわふわって考えてたんだけど
テラスから見えるのは森だ
右も左も森
ずーっと森
これが天国?
「やっと目を覚ましたか」
背後から男の人の声がして驚いて振り返ると、そこには整った顔にプラチナブロンド・金色の瞳の男の人が立っていた
見た感じは17〜18歳だろうか?
「あ…あなた!」
私は指さしてしまった
♪♫♬ ♬♫♪
「12歳、おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう、クリス」
父の「おめでとう」を皮切りに家族が私の誕生日を祝ってくれた
「ありがとうお父さま、お母さま、お兄さま」
私と兄は母と同じ金髪でグレーの瞳だが、父は髪も瞳も茶色だ
私達は間違いなく、母親似だった
「クリスも12歳か
いよいよデビューだな」
兄のエイブラハムがおでこにキスをしてくれた
「ありがとう、お兄さま」
「心配だわ〜
クリスちゃんは女の子なのに」
母は両手を頬に当てている
「まぁ最初は小さな魔獣から始めればいいよ」
父は心配する母の肩を抱いた
「我がオルドリッジ侯爵家は代々続く魔法使いの家系だ
このルガード国を魔獣から守るという名誉を与えられている
エイブもクリスもしっかりと魔法使いの血を受け継いているから心配はないよ」
「わかっていますけど、やっぱりクリスちゃんは女の子だから…」
母の心配は最もだ
令嬢が12歳を迎えれば、普通のご家庭であれば社交界デビューで頭を悩ます
だけどここオルドリッジ家では、社交界デビューより魔獣討伐デビューが優先される
要するに人手不足なのだ
だって魔獣狩りは父と兄だけなんだもの
令嬢としての社交界デビューは15歳までにすれば良いので後回しだ
兄も社交界デビューしたのは15歳間近だった
きっと私もそうなるだろう
魔法は物心ついた時には使えていたので問題はない
後は魔獣を討伐して経験を積むだけだ
積むだけ…なんだけどこれが難しい
自分のレベルに合った魔獣に出会うかもわからないし、どうやって討伐するのかもわからない
という事で早速修行の為に兄と国の外れにある小さな村で、度々村を襲うという魔獣を討伐にやって来た
ちなみにここまでは移動魔法を使う
使い魔を放ち、目的地を確定させてそこに移動するのだ
クリスとエイブは動きやすい服装だ
エイブはシャツとズボンという軽装で、クリスもシャツと太ももまでのズボン、そしてその上に短めのスカートを履いている
長い金髪はポニーテールでまとめてあった
まずは村人から話を聞いた
「小さなイタチみたいな魔獣ですよ」
「ニワトリを襲われて…卵も食われちまって」
「人は襲って来ないですね
夜中に村に現れて喰い荒らして行くんです」
村人の証言はこんな感じだ
「お兄さま、小型の魔獣っぽいですね」
「そうだね
でも力を付けると人も襲うようになるよ
その前に退治してしまおう」
「はい」
その魔獣は夜に現れるというので、日の高い今は夜に備えて村長さんのお宅で仮眠を取らせてもらった
♪♫♬ ♬♫♪
真夜中となり村は静まりかえっている
エイブとクリスは別れて、それぞれ別の場所にあるニワトリ小屋を物影から見張っていた
その魔獣は毎夜現れるという訳ではないらしく、今晩現れるとは限らない
長期戦になるかもしれない
12歳になったばかりの麗しい侯爵令嬢がこんな事をするとは…
クリスは友人達が羨ましかった
きっと皆、今頃はふかふかのベットで寝てるわよね〜
「はぁ」とため息をつくとニワトリ小屋の側の茂みがガサガサ音をたてた
クリスは集中して茂みを見る
すると茂みから小さな動物が顔を出した
イタチ…ではなく、野犬だ
クリスは「ふーっ」と息を吐いた
ニワトリ小屋は野犬に襲われないように頑丈に作られている
わざわざ追い払って騒々しくすると魔獣が警戒して現れないかもしれない
それにここに野犬が現れたなら、魔獣はもうここには現れない
クリスはエイブと合流するため、立ち上がると村の反対側へと歩き出した
村の中央辺りまで来た時に、自分の目の前を小動物が横切っだ
ん?
クリスはその動物を見ると、姿かたちはイタチだが、目は真っ赤に輝き尻尾はふたつに別れている
「ま、魔獣っ!」
クリスは慌てて杖を召喚した
右手には小枝のような杖が現れた
杖は持ち主の成長と共に成長する
まだ魔法使いとして駆け出しのクリスの杖はまだ小枝程度なのだ
杖を魔獣に向けると、杖から発せられた光が魔獣に向って延びた
魔獣はさっと飛び退き光を避けると、村の外に向って駆け出した
逃げられちゃう!
クリスは魔獣の後を追った
「クリス!」
クリスの発した魔法に気付いたエイブが急いでクリスのもとへとやって来た
クリスとエイブは魔獣を追う
「村の外で仕留めよう」
エイブも杖を召喚した
クリスよりは長い、自分の身長くらいの杖だ
村の外まで出た時にエイブは魔獣に杖を向けると、先程のクリスのように光が発せられた
光は魔獣にヒットし、魔獣は衝撃で弾き飛ばされた
だが魔獣は空中でふたつに別れると左右へと逃げて行った
「クリス!分裂してどちらかが残ればまた再生する!
分裂した分、弱くなっているから別れて追うぞ!」
「はい!」
クリスはそう返事をすると左側へ、エイブは右側へ逃げた魔獣を追った
森の中をチョロチョロ逃げまくる魔獣を見逃さないように必死に後を追った
木々が邪魔で魔法を使えない
少しでも開けた場所に出てくれれば…
クリスがそう考えてた時に足元がフワリと浮いた
「えっ!?」
魔獣は崖を飛び降りたのだ
どっ、どうしよう!?
クリスは落下しながらヒュウゥゥと耳に入る風の音に恐くなった
辺りは真っ暗で落ちた所は深いのか、浅いのかもわからない
ダメかもっ
と重った時に柔らかいクッションのような所に落ちた
「た…助かっ」
クリスはうつ伏せで倒れているが、手に当たる毛の感触に驚いた
ガバッっと起き上がると、自分は大きな獣の背中に乗っている
「ってないかも」
クリスはさーっと血の気が引いた
気に入って頂けたら、評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。◕‿◕。
いいね(≧∇≦)bや☆も頂けると嬉しいです!
よろしくおねがいします!