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お憑きあいから始まる婚約破棄

女性キャラクターが登場する、固い信頼関係で結ばれたバディもの小説にチャレンジしてみました。

その日は本当に眠かった。




男性に取り入るのが得意で私を見下しているようなぶりっ子後輩から、気難しいことで有名なクライアントの仕事を締め切り目前で押し付けられ。それを上司に訴えようとしたら、上司は後輩の味方でネチネチ嫌味を言われ。いつも気遣ってくれる先輩に助けられて期日ぎりぎりで終わらせられた休日出勤明けの土曜日の夜。



ご飯を食べるのも着替えるのもメイク落としですら面倒で、リビングのクッションの上にダイブしたところまでは覚えている。ちょうど遊びに来ていた大家の猫・あんずが湯たんぽみたいに暖かくて…。




ふと目をあけたと思ったら、見事なバラ園の中で、アーチの向こうにいるカップルを眺めているところだった。



頭の中に、目の前の男の方が自分の婚約者だという情報が入ってきた。あまりに自然と浮かんできたので、ああ意識のあるタイプの夢かと思った。この前読んだ小説の世界の夢でも見ているんだろうとアーチに触った。運悪く薔薇のとげに引っかかって痛かった。

あれっ、てことは夢じゃない?…流行りの小説にあった異世界転生しちゃった系?


ふともう一度カップルを見ると男の方はこちらに気づいていないようだが、女の方はこちらをちらと見つつ笑っていたようだ。どうやら女の方は私にこの場面を見せつけたかったらしい。突っかかるのは大人げないと思いその場を離れようとしたとき、





頭の中で声がした。

『ねぇ!ちょっと!!あなたいつまでわたくしの体を操っているつもりかしら!早く返して!!私目の前のカップルに用があるんです!とっとと出ていってくださる!?』

―えっあれ、ナニコレこの体の子の意識かな?…はぁっ!?コレ、転生じゃなくて憑依!?ナニコレこんなことってある!?!?

『わたくしだって訳がわかりませんのよ!?でも今はあの2人を見失ってしまう前に追いかけたいんですから、出ていってくださいな!!!』

―ちょっ、ちょっと待って!あなた追いかけて問い詰める気でしょう!?こんな混乱している状態で行っても何一ついいことないよ!やめときなよ!!

『何を悠長なことを!こんな虚仮にされたまま引き下がるなんて嫌ですわ!』

―だからさぁ!そんなにイライラぐるぐるしてるのに行ったら、あなたたぶん手とか出すんじゃない!?場合によっちゃあ悪者扱いされて損するって!一度家に戻るなりして冷静になった方がいいって!

『ぐっ…一理ありますわね。とりあえず一度部屋に戻りましょう。あなたが何者かもわかりませんし、状況を確認しませんと。』



体の主と会話したからか、自分の意思に関係なくスムーズに目的地に向かって歩いていく。

歩いて初めて知ったけど、このバラ園はこの体の子の屋敷の庭の一部らしい。一般開放のようなことをしているとはいえ、そこで浮気するとか…あのカップルすごい度胸があるのか、馬鹿なのか。

部屋に行く途中、バラ園の散策をしている貴族らしき人達から嫌な視線を感じた。“爆薬花”が…なんてヒソヒソ声もする。同世代らしき女の子たちも親密そうに話しかけてきたけど、あの後輩みたいなこちらを馬鹿にしている笑い方をしてた。




―改めまして、わたしはユキ。違う世界から来たしがない一般の28歳女子。何でかはわからないけど、あなたに憑依しているわ。

『わたくしは、リコリス・スノーフレーク。昨年デビュタントを終えた18歳。スノーフレーク伯爵家の一人娘にしてソルダート・ガドナー第一王子の婚約者よ。』

部屋につくと侍女さんが心配そうな顔をして挨拶してきたが、早々に部屋から出てもらい、お互いに自己紹介した。端から見たら鏡台の前でにらめっこ状態である。リコリスはサラサラの黒髪にサファイアのように輝く碧眼。漫画に出てくる悪役令嬢ってこんな感じっていう顔立ちである。凡庸な顔立ち、パサつきかけの黒髪をとりあえず邪魔にならないように括っているような私とは大違いである。

―あの男、王子様だったんだ。え、まさかあの浮気男が次期王?この国、大丈夫?

『継承権だけは一番上でもまだ王太子、次期王の指名は受けてないわ。まぁわたくしもあんな子どもじみたおば…、殿方には王座に向いていないと思いますが。』

―そうだよね~。ってあれ?王子のこと好きじゃないの?喧嘩売りに行こうとしてたからてっきり…

『あんなお馬鹿さん、王命でなければごめんだわ。でも自分の屋敷の庭で浮気されているのに黙っていられないじゃない。』

―おおぅ、血の気が多いなぁ。てか、とうとう王子のこと馬鹿って言っちゃったよ。

『口に出して言わなければ不敬にはならないもの。』



それからしばらく、リコリスのところで過ごすことになった。今、自分の体がどうなっているのかわからないが、焦りのようなものを感じないので、あまり気にしないようにした。

リコリスは考えるより先に言葉が出るタイプではあったが、他人に理不尽な要求をする子ではなかった。地頭はいいらしく、冷静になればものごとを客観的に判断できる。短気で損するタイプらしい。あの逢瀬の相手はキリカ・アネモネ侯爵令嬢で、同じ家庭教師から学んでいるせいか、ライバル関係にあるらしい。リコリスは算術系が得意で、キリカ嬢は外国語が得意。リコリスの話を聞く限りでは、笑顔の下に多量の毒持ってるタイプ。

1週間くらいたった時、私には気になることができた。リコリスの対人関係だ。乳母らしき侍女ニシさんは、リコリスのことを心配して色々と忠告するのにはぞんざいな態度。なんか思春期の親子っぽい感じがする。対して、初日に会った友達らしき令嬢たちや年若いハウスメイドには大事にするような態度なのだ。それに、彼女らはリコリスより身分が下のはずなのに馬鹿にするような空気感なのもおかしい。

―ねぇリコ。さすがですね!とかその通りですね!とかの誉め言葉つかうオトモダチ、なんか多いけど。ただただ繰り返すばかりで、こちらを馬鹿にしてるよね。

『…!』

―文化圏が違うから何とも言えないんだけど、ああいうおべっか使いばかり周りに置くのは良くないんじゃない?あんまり大事にしなくていいと思うの。大事にするんならちゃんとあなたを心配してくれる人がいいと思うよ?ニシさんとか?

『…お互いに会話出来もしないくせに、小うるさいのがタッグでも組んだんですの?』

―そういうわけじゃないけど、でも

『どうせあなたも武器商人の“爆薬花”と思っているんでしょう!?もう嫌!早く出って行って!出ていきなさい!!』

―ちょ、待っ…!

急に張り手で叩き出されるような感覚で…



ばっと目を覚ますといつもの私の部屋。人をダメにするクッションの上に帰宅した時のままの格好でうつぶせになっていた。慌てて時計を見ると帰ってきてから2時間程経ったぐらいの時間を指している。どうやら私は死んでたわけじゃないし、あちらとこちらでは時間の感覚が違うらしい。



せっかく起きたから顔を洗って、冷蔵庫を見た。卵も野菜も入ってなかったけど、辛うじて冷凍のエビピラフがあったのでレンジに入れつつ部屋着に着替えた。

ピラフを袋から出すことなく食べつつ先程の夢、のようなものについて考える。どうやら、あちらの世界は隣国との戦後間もないこと。火薬が産出されるスノーフレーク領は、戦争で成り上がって取り巻きが多いこと。だが、戦後で武器の必要がなくなることから、あまりいい扱いではなさそうなこと。謀反を起こさせないために第一王子と婚約関係にあるが、双方が相手を嫌っている上、王子は政略がわからない馬鹿であること。リコリス自身は自分の取り巻く悪評をわかっているが、孤独を恐れて甘んじてあの状況の中にいること。そして、なんとなくだけどまた私が寝るとあちらの世界でリコリスに憑依すること。

「なんか変なことになってるけど、このままにするのもなぁ。あれ、中学女子にありがちなグループの問題みたいなやつじゃん。既視感があるなぁ…。しかし、“爆薬花”なんてひどいあだ名付けるなぁ……ん?あっちの世界って火薬はあるけど花火はないのか?火薬を生産してる地域なら炎色反応さえ理解すれば、花火作れるんじゃ…!」

スマホをかばんから出して花火について調べる。

「狼煙とかで火薬を扱っていれば、打ち上げ花火もたぶんできる!そしたらあっちにありそうな…塩とかで色付けたらいけそう。元科学部の血が騒ぐぞぉ!それでイベントでお披露目したらきっと他の貴族を見返せる!でもまずはリコリスに謝らなきゃ。」



調べている間に、大家の猫・あんずがまた来てご飯をねだる。しかし、うちにはもう何も食べ物がない。あんずはふてくされたように膝の上で寝始める。私は何故かポカポカしてきて、あんずを抱えてベッドに入った。この子、湯たんぽの才能があるのかも…。




目をあけたら、豪奢でふかふかなベッドの上にいた。またリコリスに憑依したらしい。だが、前回と違ってリコリスの中ではなさそうだ。体がないのにリコリスと向かい合っている感覚がある。

―リコ、この前はごめんなさい。わたしの方が年上だからって偉そうに…。あなただって、賢いんだもの。周囲がどう思っているかなんて、解ってたんだよね。それをどうにかしたくて、好きでもない王子と婚約して、たくさん勉強してきたんでしょ。取り巻きみたいの侍らせてまで。

『私は…間違っていたと…?で、でもそうでもしないと、1人ぼっちで、悪意に晒されるなんて…』

―そうだね。悪意に立ち向かうには、1人はツライ。でもさ、仲間って誰でもいいわけじゃないの。上辺だけの付き合いって結局疲れるのはあなたなの。本音をぶつけられる友人や味方ってのは多分、反発とかの先にいる気がするの。まずはさ、ニシさんを味方にしてみようよ。

『そうですわね。…あなたが来てから、事前にストップかけてくれることで冷静に判断できていたのに、それに甘えていたみたい。あなたも味方だったんですね。支えてくれる人をないがしろにするなんて、あの王子と同じになってしまうところだったわ。私は他人の評価より自分と心配してくれる人を大事にしたい。』

―そっか。その歳でそういうことに気づけるって、やっぱりリコはカッコいいよ。私もできることは何でも協力するよ!手始めにさ、”爆薬花”の意味、変えてみない?

『…え?』




そこからは怒涛の勢いだった。まずは、私がリコリスの体に入って、花火についての書類を作った。そして、計画を進めるために、誰に相談するかだったが…リコリスが和解した侍女ニシさんは超・有能なお方だった。

彼女は、花火を作ってくれそうな職人の手配、伯爵であるリコリスの父に事情を説明して協力を取り付けた。ニシさんの手配のおかげで、元々ある狼煙や祝砲台を改良することで、打ち上げ台はすぐ確保できたので、玉ができればいける。すると伯爵から1ヶ月後に行われる建国記念のパーティで国王に献上・お披露目してはどうか、と提案された。


―たくさんの貴族、王都に住む人たちにお披露目すれば、イメージの払しょく間違いなしだね。職人さんたちも腕がいいから間に合いそうだね。

『特にあの男、周りから変人といわれているけど、彼のおかげで色がついた花火が開発できましたからね。』

ある晴れた昼下がり、王都郊外の騎士訓練所で花火の打ち上げ場所の下見と試し打ちをする一団の中に私たちはいた。空砲をあげても、爆発音があっても誰も気にしない場所である。伯爵が国王へ事前に説明したところ、当日まで内密にするようにと指示があったそうだ。他の貴族に何をしているか聞かれた時の窓口として現場にいるものの、誰も来ないので木陰でゆったりピクニック気分である。リコリスの提案で私の意識が表に出てお昼を食べていた時であった。

「ごきげんよう、スノーフレーク伯爵令嬢。いい天気ですがこちらで何を?」

急に現れたのはキリカ・アネモネ侯爵令嬢。流石は侯爵令嬢、仕草一つとっても気品があって優雅である。対するこちらは伯爵令嬢、の皮被ったしがない一般人、体にしみついているカテーシーをするものの、もうすでに余裕がない。リコリスに代わりたいのに、うまくいかない上に、用意していた文言が頭からすっぽり抜けてしまった。

「あ、の、イノシシを追い払う策を試しておりまして。」

「まぁ、イノシシ…!?」

「は、はい。イノシ、いや森の獣は普段しない音に敏感ですから、空砲で追い払おうと思いまして。」

「あなたの領では火薬があるのでしょうから、銃で倒せばよいのではなくて?」

「1匹ならともかく、複数となると難しい上に畑作地に兵士を常駐させるのも現実的ではありません。音で驚かせば近寄らなくなりますし、空砲ならば領民でもなんとかできるんじゃないかと思いまして。ハイ。」

「そうでしたの…。わたくし所用を思い出しまして、失礼させていただきますわ。」

「あっ、ごっごきげんよう。」

―ひえ~。びっくりしたよう。高位貴族コワイ。

『まだ気を抜いてはいけないわ!馬車が動いていないのだから。』

「あっ、そうそう、リコリス様。」

「は、はいっ!なんでしょうキリカ様。」

「殿下は建国記念パーティであなたに何かする腹積もりですわ。お気をつけて。」

キリカ様は穏やかな笑顔と不穏な一言を置いて、侯爵家の馬車で走り去っていった。





そうして、建国記念のパーティ当日。国王に献上する花火も準備万端。

あとはあの王子のことだけだが…

『今日のパーティは参加者も多いし、さすがにあの王子も下手なことはしないでしょう。』

―そう思いたいけど、キリカ様の忠告もあったことだし、用心するに越したことはないよ。


そうして父親である伯爵のエスコートで会場内に入ると、途端に聞こえるヒソヒソ声。またリコリスや伯爵家を揶揄する内容が聞こえるが、リコリスは堂々と歩いている。彼女も大人になったなあと思っていたら、


「リコリス・スノーフレーク伯爵令嬢!貴様の悪辣な態度にはうんざりだ!」

―うわぁ…ソルダート王子の騒ぎが始まった。リコ、頑張って。

「殿下、このような佳き日に騒ぐのはマナー違反でしてよ。それに悪辣とはいったい何のことですの?」

「なんだと!私の愛しい人をいじめておいてなんて態度だ!貴様とは婚約破棄だ!」

「婚約破棄ですか…。私は誰にも何もしていないというのに、」

「私は真実の愛を見つけたんだ!それに彼女の方が身分も評判も貴様より上、これから王太子になる私にぴったりだからな。“爆薬花”などもう必要な…」

「いったい何の騒ぎだ!」

―お、国王様が来た。

「父…いや国王陛下!私はリコリス嬢と婚約を破棄し、新たに王太子妃として侯爵令嬢のキリカ・アネモネ嬢を迎えたいのです。彼女と私は真実の愛で結ばれる運命だったにも拘らず、リコリス嬢の妨害にあっていたのです!その上、リコリス嬢は彼女をいじめております。」

「キリカ嬢の方が上の身分なのだが…その証拠は?」

「キリカが震えながら泣いていたんだ!証拠などそれで充分!」

「…はぁ。キリカ嬢、今の話はほんとかね」

ソルダート王子との話しで心底あきれたような表情をした国王は後ろにいたキリカ様に話しかけた。




「いえ、本当ではありませんわ。やはりソルダート殿下は勘違いなさっていたのね。」

キリカ様は優雅にカテーシーをするとすごいことを言い放った。

「まず、わたくしはいじめなど受けておりませんし、私の愛しい方はあなたではありません。王子のおひとりとして敬意を払っていたにすぎませんわ」

「なんだと!あれほど愛しい人と言っていたではないか!」

ソルダート王子の叫びに、キリカ様は扇子で口元を隠し、優美なほほえみで、

「あれはアネモネ領で領地経営の勉強をしているわたくしの婚約者の自慢をしていたのですよ。殿下は私の話をよく聞いていませんでしたけど。泣いていたのは領地で起こった害獣による農作物被害で婚約者が本日のパーティに来られなくなったからですわ」

―それって花火開発中に来た時のこと!?イノシシ被害ほんとにあったのか!

「だがあの時、確かにリコリスが…といっていたではないか!」

「それは、リコリス様から空砲が害獣除けに効果があると聞いたからですわ。もっと早く助言をいただけばと後悔して…」

「そんな…馬鹿な…」

「そもそもお前は真実の愛だと喚いていたが、キリカ嬢は我が頼んでお前の素質を見極めてもらっていたのだ。しかし、しょうもない勘違いを起こし、不貞を働こうとし、さらにはよく調べもせずに冤罪をかけるわ、勝手に王太子を名乗るわ。そのような者が王位につけば、即座に国が傾くだろう。よってソルダート、お前の王位継承権をはく奪する。」

「そっ、そんな!わたしはあなたにとって唯一の子ですよ!?他に誰が継承権を持つというのですか!」

「我の弟である公爵にお前と同い年の子息がいたであろう。彼もまた王子教育をされておる上、我の出した課題も難なく合格している。お前は課題を聞く以前の問題だったがな。」

国王様がそういった後、うなだれたままのソルダートは近衛兵によって会場から連れ出された。ずしんと暗くなりそうな空気感の中、国王様がパンパンっと手をたたいた。

「せっかくの祝いの日に集まってもらったのによくない空気にしてしまったな。ここらで気分を変えるために、スノーフレーク領で新たに開発された祝砲を上げようと思う。リコリス嬢、準備は良いかね?」

―おっ、とうとう出番だね!

リコリスが会場のすみにいたニシさんに目配せすると彼女はスッといなくなる。

「それではこちら側のテラスの方にご注目ください。」

リコリスがそう言ったタイミングで、1発目の花火があがる。大きな音とともに黄金色の花が夜空いっぱいに咲く。2発3発とあがるうちに初めは音にびくびくしていた貴族たちもため息のような歓声を上げていた。最後の花火は青色で、少々いびつにはなったものの、きれいな色だった。まだ2色だけだが、これから職人たちが試行錯誤して他の色も生まれるだろう。10発だけの花火だったが効果は抜群。先程の通夜のような空気が晴れ、興奮したようなざわめきが起こっていた。リコリスを見る目も会場に入ってきた時とは大違いである。

―とうとう“爆薬花”の意味が変わるわ。人の命を奪うものだった火薬は人の心を奪う、いや人を魅了する素敵なものになった。頑張ったね、リコリス。

『ユキ?どうしたの?そんなお別れみたいな感じ…』

―私そろそろ自分の世界に帰るよ。大丈夫、あなたはもう前のあなたじゃない。もし間違えても正そうとしてくれる仲間もいる。それに、またきっと会える気がするんだ。

『そうですか…。しばらく2人で1つのような状態だったので寂しくなりますわ。』

―そうね…。でも私、自分の世界でやるべきこととやりたいことがあるんだ。あなたに勇気をもらったおかげよ。ありがとう!お元気で……。




目を覚ますと日は高く昇っていた。スマホを見ると日曜日の昼だった。

私は一つ伸びをすると、ベッド脇にある机でやるべき事の為にペンを執った。リコリスに偉そうに言ったが、私が今直面している職場環境の問題とそう違いはない。彼女が変われたんだから私も一歩踏み出さなきゃ!そして、書き上げた辞表をみてすっきりした気分で今晩のご飯を買いに行った。明日が楽しみなのは久しぶりだった。


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