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第一話 魔王消滅と奴隷少女

 「トビー・ロダン! パーティから抜けてもらおうか!!」


 唐突に勇者ビル・スランプに追放宣言されてキョトンとするが、他のメンバーも賛成だったらしく冷たい視線を俺に向けて来る。


「魔王城も目と鼻の先なのにか?」


「あのさ、あんた今迄何もしてないじゃない!」


「そうよ! 国からパーティに加入させる様に言われたけど、ここまで役に立たない奴を魔王との最終決戦に連れて行ける訳無いでしょ!」


 女格闘家のメリーと女魔法使いのベリルも俺が何もしてないと思っているらしいが誤解だ。 実際はビル達の勝てない敵との強さを【反転】のスキルで入れ替え確実に勝利に導いて来たのに。


「そんな事言われてもな、俺が居ないと魔王倒せないぞ? それでも良いのか?」


「はぁ〜お前な……近くで何見てきたんだよ、俺等の強さが分からないとはな。」



「私なんて霊体の魔物を倒せる拳を持つのよ?」


「アタシも魔法無効化する魔物を幾度となく倒してきたんだから、アンタなんて必要無いの分かる?」


「分かったよ、そこまで言うなら俺は自由にさせてもらうよ。」



 正直仲間意識も無かったし、別に良いかとその場を後にすると今居る位置と母国の一部の位置を反転させ帰還する。


「帰った来たな、さーてとスローライフでも満喫するか。」


 俺は母国ライアット王国へと帰り子供の頃を懐かしむ、そうアレは五歳の時にギフトで【反転】のスキルを授かり立派な冒険者になる為に腕立て伏せ、腹筋、スクワットや長距離を走ったり泳いだりしたが成果が出るどころか日に日に足は遅くなり、泳ぎは浅瀬で溺れる程に身体が弱っていった。


 だが、ある日冒険者の夢を諦め努力を怠る様になり今迄生きて気付いた。 楽をする事で逆に筋肉が付き、頭も良くなり努力した事で太っていた身体も痩せた細マッチョになり顔立ちも整い、周囲の女性から婚約を迫られる程になった。


 一方、ビル達は魔王城へと足を踏み込み禍々しい気配を感じ取るが魔物が周囲に見当たらない事に違和感を覚える。


「ねえ変じゃない?」


「ああ、気配は感じるのに魔物が見当たらないな。」


「霊体の魔物が居るんじゃないのメリー。」


「いいえ、居ないわね。」


「周囲を警戒しつつ、玉座まで行くぞ!」


 玉座まで着くが魔王すら姿の無く不気味なくらい気配だけが辺りを漂いビルは拍子抜けする。


「何だあ? 魔王すら居ないじゃねーかよ、まさか最初から居なかったんじゃねーのか?」


「まさか、滅ぼされた国だって在るのに魔王の存在がデマな訳無いでしょ。」


「だとすると考えられるのは一つね。」


「そうか! 魔王の奴は俺等の強さに恐れ慄き気配だけ残して逃げ出したんだな!!」


「そうね、もう魔王の脅威も去った事だし報告に行きましょ。」


「晴れてアタシ達は英雄ね!」


 と、見当違いな解釈をする勇者パーティーだが実はトビーがビル達には勝てない魔物がウジャウジャ居るのを感じ取っており存在自体を反転させ気配だけが残り現世で生きては居るが何も出来ない状態にしていたのである。


「そういや、ビル達に魔王の存在自体消したって言ってないけど終わった事だしな。 あ、魔王討伐した時に俺が居ないと報酬受け取れないの言ってねえや、もう俺は無関係だし別にいいか。」


 魔王討伐時の報酬の件を伝えるのを忘れていたが関係が無くなっているので、先ずは世界中を旅行する事に決めた。


「何処に行こうかな、そうだ! 食う物も反転出来るし思い切り不味いもんでも食いに行こう、確かカダラ村にクソ不味いけど時間内に完食出来たら豪華賞品が貰えるイベントやってたな。」


 不味い物を求めカダラ村へと向かった俺は道中、怪我をしている少女を見つける。


「うぅ…………」


「ん、大丈夫か? 酷い怪我だな、今反転させてやるからな。」


「な、何をしたの!? もう痛くない!!」


「反転させただけだよ、それより大丈夫か? 何かあったのか?」


 部位欠損していた四肢を反転のスキルで無くなった状態から復元する。 驚く少女の前に奴隷商人が現れると俺の後ろに隠れる。


「ヒッヒッヒ、困るな〜家の商品を勝手に盗るのは。」


「商品?」


「見えないのか、首輪が付いてるだろ? その娘は家の商品だからな〜ちゃんと買ってもらわないとね〜。」


「嘘だよ! さっき捨てたもん!! 手足の無い奴隷に使い道なんて無いって言って捨てたもん!!」


「聴き分けの悪い娘にはお仕置きが必要だね!」


「ひっ!!」


 怯える少女に奴隷商人は鞭を取り出し地面をバシンと叩く。


「おい、止めろ……。」


「何かな? 止めて欲しいならお買いあげする事だね!」


「どうやらテメェは俺が知ってる奴隷商人の中でも最低最悪の超弩級のクズの様だな……今直ぐ消えろ、最悪な目に遭う前にな。」


「ケッ、消えるのはアンタさ! 人の商品を盗む様な奴は死んで詫びな!!」


「反転」


 鞭を高らかに掲げる奴隷商人へギフト反転を使用すると相手は鞭と共に地べたへと倒れ込む。


「痛、何だ……何が起きた!? 起き上がれん!!」


「え…………?」


「お前確かこの娘を手足の無い状態で捨てたんだったな、だから今度はお前の手足を反転で消失させた。」


「な、何だと!?」


「そのまま、この娘が辿る筈だった運命を貴様が背負いな! 悪いが拾って行くぞ、捨てられた物は拾った物の所有物になるからな。 さ、行こうか。」


「う、うん…………。」


「ま、待って! 待ってくれ、助けてくれ!! こんな状態じゃまともに歩けん、それに食料すら調達出来ないじゃないか!! このままでは死んでしまう!!」


「それを貴様は少女にさせようとしたんだ、せめてもの慈悲くらいは与えてやるよ。 反転」


「な、何をした? 何も変わらないが?」


「簡単な事さ、食べなくても怪我をしても死なない身体にしてやっただけ。 良かったな、死なない身体を手に入れられて。」


 俺は奴隷少女と共にカダラ村へと歩を進め、その際奴隷少女は何度か奴隷商人の方を振り返りながら俺に着いてくる。


(この娘は根が優しいんだな、あんなクズを心配するとはな。)

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