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#30 心のゆくえ


 時間は少し遡る。

 

 ユリとカレンは事の元凶である百合野李夢の元へと足を急がせていた。

 

 なぜ急いでいるのか、それは追っ手に道を妨害されているからだ。

 

 ユリたちの話に耳をかそうとせず、百合野の黒服たちは襲いかかってくる。

 

 『全てはリム様の為に。』

 

 無機質に感情がなく、呟く言葉。洗脳されているというのが伝わってくる。

 

 「大地さんが言ってた通りね!」

 

 「本当に操られているみたいですね……」

 

 息を切らしながら、家屋の上を走り抜けていく。

 

 常人の人間の動きでは無いが、霊力はそれを可能とする。

 

 人間が本来発揮できない力を一時的に引き出させることができるのだ。

 

 霊力は根源的な記憶を呼び起こす力でもある。

 

 古の時代身につけていた動物的な動きを引き出しているのかもしれない。

 

 幾重にも連なる世界の魂をその身に宿しているのかもしれない。

 

 どちらにせよ、人間離れした力ということだ。

 

 それだけ彼女たち『霊能者』と呼ばれるものたちは異次元の存在なのだ。

 

 「こんなに屋根ドタドタしていいんですかね?」

 

 「この辺の土地は、そういうのに理解ある人たちよ!大丈夫!」

 

 「全てはリム様の……」

 

 「しつこいヤツらね……!これでも喰らいなさい!!!『憑依・ヤマタノオロチ!!水流魂!!』」

 

 ユリはいくら離しても追いかけてくる黒服の男たちに霊力の塊をぶつけていく。

 

 ひとり、また1人と屋根から落ちていく。

 

 腐っても霊能者だ。死にはしないはずだ。

 

 「や、やりすぎでは?」

 

 あまりの威力に目を丸くし、驚くカレン。しかし、敵の手が止まったのも事実。肩で息をしながら膝に手を付き、男たちを見下ろす。

 

 その姿勢が胸を強調するようになってしまい、傍らにたつユリに嫌味たらしくぷるんと弾ける。

 

 「あんたもやりなさいよ!馬鹿みたいに乳揺らしてる暇があるならさ!」

 

 「す、好きで揺らしてるわけじゃ……ないですよっ!!!見ないでください!ユリさまはどっちも行けそうで怖いです!」

 

 「どっちも行けます……よっと!!!」

 

 言い争いを続けながら着実に男たちを振り払っていく。

 

 だが、いくら振り払ってもゾンビのように湧いてくる。

 

 「……っ!キリがない!!!」

 

 ユリが苦痛の声を漏らす。刹那。

 

 「……さっさと行け。」

 

 「こーいうのはお姉さんたちに任せなさいな。」

 

 「行ってこい、諸々のことは大地の隠蔽でやり過ごせるさ。」

 

 「お、お父さん!?それにモモコさんにカイさん!」

 

 目の前に三名の人影が現れ、一瞬で時間を作る。

 

 ユリとカレンは呆気に取られ、様々な疑問が浮かぶ。

 

 怪我はどうしたのか、この数を相手にするのか、終わりはいつなのか。

 

 不安と焦り、本当に成功するのか、ここが最後の逃げるチャンスなのではないか。

 

 色んな感情が先行する。

 

 「一週間だ。それ以上は待たない。……やれるか?」

 

 ジンは低い声で呟く。

 

 「全ては…!!」

 

 その隙を見て、男が刀を振りかざすが、いとも容易く受け止め片手で刀を粉砕する。

 

 瞳は鋭くこちらを捉えたままだ。

 

 「…!はい、必ず!!!」

 

 その眼光に気圧され意識を取り戻す。

 

 意志を強く持ち、自分に言い聞かせるように発声する。

 

 「……絶対、帰ってこいよ。」

 

 ジンはユリに背を向け、小さな声で呟く。

 

 恐らく聞こえていないであろうその声に、モモコとカイは顔を見合せて呆れ顔を披露するのであった。

 

 ーーーーーーー。

 

 「来るのは久しぶりね……。リリさんに挨拶しに来た時かしら。」

 

 大きく目の前に佇む建物。瓦が敷き詰められ、水が流れる音も聞こえてくる。

 

 昔ながらの豪邸と言ったところだろうか。

 

 「行きましょう……リム様の元へ。」

 

 カレンはそっと右手の甲を触れる。

 

 花のような紋章が浮かび上がり、白く光り輝く。

 

 「……それが幌先の紋章……。リムがいるって事ね。」

 

 「はい。そういうことになります。」

 

 「先を急ぎましょう。誰に遭遇しても危機的よ。」

 

 ーーーーーー。

 

 玄関の扉をガラガラという音とともに開く。

 

 横開きで鍵は施錠されていない。

 

 あたかも入れと言われているような意図を受ける。

 

 扉を開き中に入ると、明るく長い廊下が視界に入る。

 

 「奥です。……なんだか誘われているようで不気味です。」

 

 「そうね……。カレンのその紋章って不完全なのよね。」

 

 「はい、私はまだ契約者を見つけられていないですから。リム様が仮の契約者となってます。」

 

 2人は長い廊下を歩きながら幌先の紋章について話す。

 

 「仮の契約……。あなたが死んでもリムは死なないってことね。」

 

 「そうなります。……それにあの人はどこか死を求めているところがあるから……」

 

 カレンはユリが言おうとしている内容を掴むと、解説してくれる。

 

 幌先と百合野の繋がりは強い。

 

 どちらかが命を落とせば、繋がりを持っている契約者も命を落とす。

 

 だから幌先と百合野は敵対することが少ない。

 

 だが、契約は仮である。本来の契約者ではない。

 

 つまりはカレンが死ぬと困る、と言うふうにリムは容赦してくれないことを意味しているのだ。

 

 「今更だけどなんであんた婆さんに従ってる訳?まあ、それのおかげでここまで来れたんだけどさ。」

 

  「昔……鬼に襲われたんですよ。『強欲の鬼』っていう鬼に。……騙されて汚されて。でも絶望のふちの私を助けてくれて。……私の居場所となってくれたから……。」

 

 カレンは過去を振り返る。嫌な記憶だが、リムの温かさを唯一感じた瞬間だった。

 

 きっと、リムなら分かってくれる。そんな想いがカレンにはあるのかもしれない。

 

 「そう、案外悪いヤツじゃないのかもね。極端なだけで。」

 

 「そうですね。……何事もなく、帰りましょうね。」

 

 ーーーーーー。

 

 「来ると分かっていたよ。ユリ、そしてカレン。」

 

 白髪のご老人は畳の上で正座し、ニヤリと微笑む。

 

 紫色の着物が不気味さを演出しており、どこか近寄り難い。

 

 手招きをし、そこに座れと指さす。

 

 カレンとユリは緊張しつつも今回の宿敵と顔を合わせることに成功した。

 

 ーーーーーー。

 

 カレンとユリは空想のシナリオを汲み上げる。

 

 百合野の力に恐れをなし、鬼は全て常世に帰った。

 

 それを止めようと、優が壊れるまで力を使った。

 

 今は記憶も失い、力もない。

 

 ヒロとソラは優を助けようと力を使い切り、優の命を何とか食い止めた。

 

 どうしようもない状況に陥ったにも関わらず、百合野の人達は襲ってくる。

 

 だから、やめて欲しいと報告しに来た。

 

 そんな内容の筋書きだ。

 

 ーーーーー。

 

 「ふむ、実に良い筋書だな。こちらの要求を理解している、なによりそちらの状況を理解できないと知っておる。………さすがだ、カレン 。そして、お飾りの姫もこちらに連れてくることで現実味が湧く。素晴らしいな。」

 

 「くっ……」

 

 ユリは歯を食いしばる。こんな筋書きを求めている点、苦労してたどり着いたのにあっさりと見破られた後悔、どこかユリを見下すような発言、様々な感情がユリの中で渦巻く。

 

 「だが……そうだな。確かにこちらにそれを確かめるすべはない。……だが、それはそちらも同じだろ?その話が本当だと証明しろ。そう、奴らの元へ案内しろ。」

 

 「で、できません。彼らはもう普通の人間です。こちら側の人間と接触する訳には行きません。」

 

 ユリは焦りながら言葉を紡ぐ。バレていたとしても、あと一歩納得させればいいのだ。否定はできない筋書きのはずだ。

 

 「ふむ、確かにな。私も彼女たちを殺してしまうかもしれない。いい判断だ。……ならどうやって証明する?」

 

 「……っ。ありません。信じてもらうしか……。私はあなたの事を裏切ったことは一度もありません。その功績に免じて、信じていただきたい。……彼女たちにはもう普通に過ごして欲しい。それではダメですか?」

 

 カレンは必死に言葉を紡ぐ。次第に涙が湧いてきて、さも本当に優たちには力が無くなったかのような演出だ。

 

 だが、これはカレンの本心。

 

 『幸せになって欲しい』という強い思いの涙だ。

 

 「なら、信じてやろう。」

 

 リムは不敵に笑って見せた。

 

 カレンとユリは体に寒気が走る。

 

 怖い。こんなに呆気ないわけが無い。

 

 これからなにかとんでもないことが起きようとしている。

 

 そう、感じさせられるほど不気味な笑み。

 

 顔のシワが一切動かず、氷の瞳が死んだように二人を捕える。

 

 恐ろしい。

 

 何かの引き金を引いた。もう、戻れない。

 

 「……真実を伝えよう。それでもまだ、お前が私を裏切らなかったら……私はカレン、お前を信じよう。」

 

 「しん……じ……つ?」

 

 カレンは怯える。唇が震え、過去の記憶を遡っていく。

 

 過去にリムと接触したのは一度だけ。

 

 可能性がある真実、カレンの感情が大きく変わるのはたった一日の記憶だけ。

 

 そんなわけが無いと、否定してきたあの日だけ。

 

 「あの日、あの日だよ。……カレン。」

 

 「やめ、やめて……」

 

 カレンは耳を塞ぎたくなるのを必死に我慢して、辛い現実を聞こうとする。

 

 「お前が鬼に抱いた悪意、それが目覚めたあの日……」

 

 思い出される光景。

 

 不快な日々の再生。

 

 鬼への憎しみ。

 

 普通への嫉妬心。

 

 これまでのカレンを形作る全て。

 

 あの歪な鬼に襲われた。騙された。平穏を汚された。

 

 だから普通になれなかった。

 

 優への嫉妬も生まれた。

 

 あの鬼、『強欲の鬼』。

 

 「あの鬼はなあ。……『私の鬼なんだよ』。」

 

 リムは言葉をゆっくりと発する。

 

 目の前にあの日の鬼がリムの体から悪意の塊として、顕現する。

 

 そして顕られた強欲の鬼はあの日同じように、カレンの身体を舐めまわすように見つめる。

 

 「………お、に。」

 

 カレンは心の底から怒りが湧いてきた。

 

 全てはこいつのせいだった。

 

 「わた……しは、最初から自由……だった……?」

 

 『鬼を殺せ』

 

 『全ては鬼のせいだ』

 

 『真城優を……鬼を全て淘汰しろ』

 

 頭のテッペンからつま先まで、怒りと悪意全てに飲み込まれていく。

 

 「いい表情だ。憎め、いかれ、苦しめ、求めよ『力を』。願え、己の中の欲望を!アッハハハハハ!!!!!」

 

 リムは歪な顔を鬼と共鳴させ、不快な声を浴びせる。

 

 「なに……が起きてるの?」

 

 状況を飲み込めず、ユリは混乱する。ふと、カレンを見つめると見たこともないような悪意が漏れ出ていた。

 

 なだめようとユリはカレンに手を触れる。

 

 「カレン!自分を保ちなさい!」

 

 何が起きているかわからない。だが、とにかくカレンを引き止めなければならないと思った。

 

 刹那。

 

 パチンと音がこだまし、ユリの手をはじき飛ばす。

 

 「……か、れん?」

 

 「……もう、どうでもいい」

 

 自分を気遣うユリの声にも嫉妬の心が渦巻く。

 

 どうして、自分だけが普通でいられないのか。

 

 ずっと信じ続けてきた心の支えが無くなった。

 

 自分はなんのために、何を撃つために、ここまで汚れてきたのだろう。

 

 そう、カレンは絶望していた。

 

 

 辿り着いた答えは『身を任せる』こと。

 

 これからは瞳に映る全てが『嫉妬』だ。

 

 自分以外が、羨ましいのだ。

 

 渇望はどこまでも体を犯す。

 

 

 失った、束縛した、暗闇。

 

 心に渦巻く複雑な感情はもう止まらない。

 

 だって、どうしていいのわからないから。

 

 だから。自由に暴れるぐらいいいじゃない。

 

 「なに、どういう……いや、待って。あなたその角……!?」

 

 『その身を闇に落とせ、顕現せよ、嫉妬の鬼』

 

 響き渡るリムの声、絶望するカレンの涙は悲しくも全身を闇に覆い隠す。

 

 大粒の涙が床に落ちた時、カレンはもうそこにはいなかった。

 

 凶悪に伸びた二本の耳と額から伸びる一本のツノ。

 

 伸びきった爪、鱗のような肌。

 

 カレンの複雑な感情を体現するかのように、その姿は歪んでいた。

 

 そう、今ここに『嫉妬の鬼』が顕現したのである。

 

 「どうだ、なんとも美しいだろう?これが私の中にあった欲望を鬼に変える力。さて、ユリ。君はどんな花を咲かせてくれるのかなあ?」

 

 「くそっ!!!老いぼれババアっ!!!!カレンに、カレンに何をしたぁあああああっ!」

 

 ユリは怒りのまま拳をリムに向けて放つ。

 

 交渉は決裂。隙を見て逃げるしかない。

 

 「甘いよ、ユリ。君たちの敗因は私の能力への対策をしないで、向かってきたこと。考えは悪くなかったのにね。」

 

 ユリの拳をいとも容易く、受け止める。

 

 リムは1歩もその場から動いていない。

 

 「カレンはね!あんたに救われたのよ!……鬼に襲われ、助けてもらった!居場所をくれたって!!!それなのに、その元凶があんただったなんて!!酷すぎる!!!あんたの野望のために、カレンは全てを捧げたのよ!あの子の時間を返しなさいよ!!!」

 

 宿命によって時間を大切なものを失うのはユリも同じだ。

 

 だが、その過程で自ら選択したか、答えがひとつしか用意されていなかったか、それは大きな違いだ。

 

 カレンは鬼を憎むことで、リムに縋ることで今日まで歩んでこられたのだ。

 

 優と出会ったことで、ようやく自分が求めていた景色を手に入れられたのに。

 

 まだ、カレンは答えの途中にいたのだ。

 

 それを横から『自作自演に溺れていただけ』と言われたのなら、心が壊れるのは仕方がないことだ。

 

 苦しんだ葛藤に意味はなかったのだ。

 

 これほどの絶望はなく、自我を失った。

 

 ユリは全力の怒りをリムにぶつけるが、届くことは無い。

 

 不敵に笑い、リムは歪な笑顔を浮かべる。

 

 「そう、それが狙いだからね。その絶望がカレンを鬼に変えたのさ。私はずっとカレンの嫉妬の心を育て続けたのさ。……だが、決め手はお前と真城優の存在だったみたいだがね。……さ、終わりだよ。娘っ子。」

 

 「あぁああああああっ!!!!」

 

 ユリの怒りも虚しく、リムに腹部を貫かれる。

 

 「お前やカレンとは繋がりが薄いからね。……直接会うしかなかった。引っかかってくれてありがとうね。」

 

 「なに……を……」

 

 「お前の血は捉えた。……さあ、目覚めよ。純粋に欲を欲する『傲慢』を!」

 

 「やめ、やめて!……いや!?こないでぇえええっ!!!」

 

 リムの瞳は紅く煌めき、ユリの全身に百合野の紋章が紅く刻まれていく。

 

 そして、ユリの中の『負の感情』が目を覚ましたのであった。

 

 そう、ユリもまたその肉体を『傲慢の鬼』へと堕とした。

 

 ーーーーーーー。

 

 幼い頃の記憶。

 

 そんなものは曖昧でいつか消えていくものだと思った。

 

 でも私は深い海の底に落ちていった。

 

 冷たく暗い。

 

 記憶がいくつも存在している。

 

 憎しみが流れていく。

 

 どうせなら、美しい魚と戯れたいものだ。

 

 あぁ、また沈んでいく。

 

 体の感覚なんてものはない。

 

 何も感じない。

 

 芽生えた感情は形をなし、私の元から消えていく。

 

 傲慢、怠惰、嫉妬、色欲、暴食。

 

 私の中で今でも燻っているのは、強欲。

 

 全てを手に入れたいとそう思っている。

 

 なんて滑稽なのだろう。

 

 あれ?大罪って、もうひとつなかったっけ?

 

 まあ、いいか。

 

 そんなふとした疑問なんて過去の憎しみによって消えていく。

 

 私じゃない。

 

 私のものでは無い。

 

 でもあっては行けない。

 

 『鬼を全て消そう。』

 

 『最後には私が罪を全て背負えばいい。』

 

 そのためには、どうしてもお前たちが邪魔なんだ。

 

 悪く思わないでくれ。

 

 これが世界のためなんだ。

 

 また終焉を迎えることがないように、一族を守るために。

 

 もう後戻りはできないから。

 

 ーーーーー。

 

 「……迎えが近いな。こんな夢を見るなんて。」

 

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 

 「揃ったか。私を含めてこれで六人…。いや、六鬼と言った方がいいか?」

 

 リムはひとりで話し続ける。

 

 もう目の前の人達に意識はない。

 

 鈴蘭、カレン、リリ、カイナ、ユリ。

 

 全員百合野と幌先の血を持つものたちだ。

 

 それぞれは現在肉体の中に大罪の鬼を使役している。

 

 「あとは待つだけだな。『全鬼戦争』とでも命名しておこうか。……さ、お前たち配置につけ。私は最上階で待つ。」

 

 『全てはリム様のために。』

 

 リムはそっと呟くと重たい腰を上げ、ゆっくりとその場を後にした。

 

 残された面々は瞳に光をともすことなく、ただ『命令』に従うだけだ。

 

 ーーーーーーー。

 

 「ウダウダ考えても仕方ねえだろ。さっさと行くぞ、俺たちはぶつかって悪意を乗り越えてきたんだ。……そうだろ、真城優。」

 

 テルと座敷は琴上家に面々を集め、全員を鼓舞する。

 

 シンプルで当たり前。

 

 そしてなにより生意気だ。

 

 だが、難しく考えるよりずっーと楽だ。

 

 全員がゆっくりと立ち上がる。

 

 心の在り方に従う。

 

 これこそが『生きている』って感じがするでは無いか。

 

 「そうだね、いつも進んできた。私たちにはこれしかない。……でも、私たちには『これ』がある…だよね?」

 

 「難しい問題提起に振り回されて、受け入れて、進んで、戻って、立ち向かって。時には負けて、間違えて。正義でも悪意でも。これが俺たちだな。」

 

 優とハジメはにっこりと微笑む。

 

 「ったく!若いねえ。おっしゃ!オジサンは乗っかるぜ!」

 

 カイは満開の笑みで優とハジメの肩を掴む。

 

 「はしゃがないの。……ほら行くわよ。」

 

 軽くカイにチョップするモモコ。

 

 2人は一足先に向かうようだ。

 

 「……アマノ。ユリを頼む。」

 

 「そっちこそ、鈴蘭離したらダメだよ。」

 

 「ふっ。餓鬼に言われたくねえよ。」

 

 「そうだね。僕もおとうさんには言われたくないな。」

 

 「お前次言ったら、ぶっ殺すからな。……まだ、認めてやんねえ。」

 

 ジンと天野はお互いに目を合わせずにすれ違っていく。

 

 「ほら、いくよ!みんな!」

 

 ソラが全員にひと声かける。

 

 ヒロ、ソラ、タケル、モミジがハジメと優を優しく迎え入れ、テルと天野、座敷、大地が遅れてついて行く。

 

 最終決戦が今始まろうとしていた。

 

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