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#23 嫉妬の心


 「はっじめまして!!!わたし、優の親友の『花蓮』でぇーす!よろしくぅ!」

 

 開口一番にカレンは元気よく声を上げた。

 

 ハジメとソラには事前に連絡しておいたが、それでも2人は呆気に取られている。

 

 なにか作業をしていたようだが、そのまま静止している。

 

 「ど、どうぞ。」

 

 さすがに外面を良くするハジメでも、切り替えられず、そのまま寮の中へと招き入れた。

 

 「お菓子と、飲み物とアイス買ってきたので、皆さんでどうぞ!」

 

 「「(優の友達にしては元気すぎるだろ)」」

 

 ソラもハジメも共に同じことを考えてしまう。

 

 「むぅ!」

 

 その心の声が優に伝わったのか頬を膨らませてご立腹だ。

 

 「あれ?なんか私浮いてる?」

 

 それぞれキャラが濃くなってきたところで、ハジメは準備していた昼ごはんを机に並べ出す。

 

 「暑いからな、冷やし中華的なものを用意した。スイカもあるぞ、ほれ、カレンさんもどうだ?」

 

 「えぇ!!いいんですか!さすが優の彼氏は違うなあ!」

 

 飛び上がるように喜ぶカレン。

 

 「キャッキャとうるさい女ね。」

 

 だるそうに溜息をつき、ソラも食卓につく。

 

 「ごめんなさい、とつぜん呼んでしまって。」

 

 ソラとハジメに向けて突然の来訪をお詫びする。

 

 通常こういうことはカレンが言うべきである。

 

 しかし、ハジメが並べていく色彩豊かに盛られた卵やきゅうり、鶏肉などの具材に目がいってしまっている。

 

 何よりもシンプルなスープに浮かぶ金色の麺が光り輝き、食欲をそそる。

 

 「なんて、美味しそうなんだ!!!」

 

 興奮しているカレンも食卓につき、満開の笑みを浮かべる。

 

 「気にすんな、ご飯は大勢で食べた方が美味い。それにグータラ女と2人よりはマシだ。」

 

 「あんたが美味いもんばっか作るから仕方なく食べてあげてるのよ。感謝しなさい。」

 

 「誰も期待してないツンデレやめろ。」

 

 「ふふ、ありがとうございます。じゃ、食べますか!」

 

 ーーーーーー。

 

 きゅうりのシャキシャキとした食感。口に広がるあまじょっぱいスープ、それに絡みつくようにみずみずしい引き締まった麺。

 

 「な、なんだこれはっ!?おいしすぎる!!!」

 

 カレンは感動のあまり驚愕している。

 

 「はぁ、幸せ。」

 

 優はいつものように美味しいご飯の幸せを噛み締めている。

 

 「ふん、なかなか美味しいじゃない。いつでも作りなさい。私が食べてあげるから。」

 

 会話の間に飲み込んだり、口に入れたりしながらもソラは満足気に話す。

 

 「だから誰も期待してないツンデレやめろって。……美味しいなら良かったよ。」

 

 「ハジメさん、お金とれますよ、これ!!!」

 

 大絶賛のカレン。大量に盛り付けられた麺をどんどん消化していく。

 

 「……お金は貰ってんだよな。」

 

 ハジメはボソッと呟きながら美味しそうに食べる三人をみて微笑む。

 

 なんて平和なのだろうか。

 

 「そういえば、ハジメさんは食べないんですか?」

 

 優は不思議そうに聞いてみる。そういえば、ハジメはいつもご飯を作るが、食べているところは見ない気がする。

 

 一緒に出かけたりするが、食べている印象がわかない。

 

 「あ、ああ。そろそろいいのかもな。……そのうち、な。」

 

 「ん?あ、はい?」

 

 よく違う世界のものを食べると、その世界のものになると言う。

 

 ハジメはその辺を気にしているのだろうか。まあ、鬼であるため食べなくても生きていけるようだが。

 

 イメージ的にはお酒や肉を豪快に食らいつきそうなものであるが。

 

 ハジメは誤魔化してみせるとカレンが持ってきた差し入れを冷蔵庫へと運ぶ。

 

 「……なるほどな。」

 

 ハジメは持ってきたアイスを手に取り、なにか納得したようにしまい込む。

 

 目線は自然とカレンの方へとむく。

 

 「……今は放っておくぞ『幌先』。」

 

 遠くから訳も分からず、カレンを見つめるハジメ。

 

 少し優の心がザワつく。

 

 カレンは元気がよく体の女の子らしさもある。

 

 どちらかと言うと優は細身で華奢だ。

 

 胸も同年代の中ではある方だが、カレンの方が肉付きは良い。

 

 「(カレン可愛いからな……)」

 

 そんなことをおもい、カレンを見つめていると「どったの、私の胸見て。」と一言。

 

 「嫉妬してんのよ。あんたのそのお肉に。」

 

 ソラが何かを察したのか、会話に入る。

 

 「鶏肉なら、優の皿にもあるじゃない。」

 

 どうやらカレンには嫌味伝わってていないようだ。

 

 「優はおしりで勝負……いや負けてるな。」

 

 ソラがフォローしようとするが、途中で辞める。

 

 「はいはい。どうせ私は魅力ありませんよーだ。」

 

 「何怒ってんの!可愛い顔が台無しだよ!」

 

 隣に座っているカレンが優の頬を引っ張り伸ばしたりする。

 

 「やめ、やめなさい!バカレン!!!」

 

 優は対抗するようにカレンの胸をめちゃくちゃにする。

 

 「ちょ!どこ触ってんの!」

 

 「お肉邪魔でしょ!わたしが食べてあげる!」

 

 「食べ物じゃないってば!」

 

 「なによ、めちゃ仲良いいじゃない。」

 

 ソラはクスッと笑いながら、見つめる。

 

 ソラと優も長い付き合いだが、こういう茶番みたいなやり取りはあまりしない。

 

 「いつもより、弾けてんな。」

 

 いつもと違う表情を見せる優に暖かい視線を送るハジメ。

 

 ーーーーー。

 

 「あー!遊んだ!遊んだ!」

 

 食事を終え、テーブルゲームや対戦ゲームで盛り上がると疲れたようにソラはソファに寝転がる。

 

 「楽しかったね!」

 

 優も満足気だ。

 

 「でしょ、私来てよかったでしょ?」

 

 「まあね、そういうことにしとく。」

 

 「ところであんた急になんで来たくなったのよ。突然過ぎて驚いたわよ。」

 

 ソラはようやくカレンに慣れたようで、だいぶフランクに話せるようになっていた。

 

 初めは緊張か警戒か様子を伺う様子が見られた。優を見守るその視線に初対面のカレンも気がついていた。

 

 「なんでって、寮楽しそうだなって優から話聞いて思って。私もあんまり友達いないからさ!」

 

 「そういえば、気がついたら色々カレンには話すようになってたね。仲良くなったのもいつかわかんないや。」

 

 「何それ、こわ。ま、悪いやつじゃないみたいだけど。」

 

 「えぇ。ちょっと!そこは覚えててよ!あと怖くないよ!」

 

 談笑が続いていく。

 

 ハジメは片付けや掃除をしながら、会話を楽しむ女性陣の邪魔にならないようにしていた。

 

 「俺は、そろそろ部屋で事務仕事あるから。一旦抜けるぞ。」

 

 「あ、はい。ご苦労様です。また、後で話せますよね?」

 

 優はハジメの元に歩み寄り、女の子らしい仕草を見せる。

 

 耳に髪の毛をそっとかけ、軽く上目遣いだ。

 

 「え、ああ。」

 

 ハジメはその可愛らしい仕草に弱く、目線を外してしまう。

 

 ほのかに顔が紅潮しているのがわかる。

 

 「絶対ですからね!」

 

 優はイタズラな笑みを浮かべて、2人の所へと戻る。

 

 ーーーーー。

 

 ハジメはそっとその場を後にした。

 

 リビングの扉を開き、玄関へと向かう。

 

 「っ!?」

 

 刹那、背中に殺気を感じ振り返るハジメ。

 

 「……なんか用か。」

 

 そこに居たのは紛れもないカレンだ。だが、先刻とは様子が違う。後ろめたさが残っている。

 

 「いえ、ありがとう、そう伝えたかっただけです。」

 

 「そうか、早めに帰るんだな。気が済んだら帰れよ。」

 

 「わかってて、席を外すのは人が悪いですね。あなたが残ればそれで良かったのでは?」

 

 「あの程度の言霊、笑える。アイツらに効くと思ってんのか?」

 

 「ええ、効きませんでしたよ。少しのリラックス程度。だから……」

 

 カレンの中で躊躇いが生まれる。こんなやり方、望んでいない。

 

 『悪意を引き出せ。』

 

 「……。」

 

 カレンは辛そうに顔を背ける。頭に浮かぶ命令の言葉。逃げたい。

 

 「……お前はお前でいいと思うぞ。」

 

 ハジメは何かを察したのか頭をそっと撫でる。

 

 「やめて、馴れ馴れしくしないで。どういう意味よ?」

 

 不意に頭を撫でたくなった手をカレンは弾く。

 

 一瞬心を許しそうになった自分に苛立つ。

 

 「本当は優と普通に仲良くしてたいんじゃないのか?」

 

 ハジメは奥底にあるカレンの心を読み解く。

 

 「そのつもりでしたよ。でも……あなた達はやりすぎたんですよ。私には止められない。」

 

 「なら、好きにしろよ。俺は何もしない。」

 

 「あなたそれでも優の彼氏ですか?ふざけないでくださいよ。」

 

 「悪意のないお前に脅されてもな。今日のところは問題ないって思ってる。それじゃあな。優大学行ってから楽しそうなんだ。今日も楽しそうだった。仲良くしてやってくれよ。」

 

 ハジメはその場を去ろうとする。どうしようもなく人を信じきった優しい顔。優と重なる。

 

 「ッ!!」

 

 カレンは過去を思い出さずにいらない。どうしようもなく優に嫉妬しまう自分の心の弱さを。

 

 贅沢すぎる。

 ーーーー。

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