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#22 夏のはじまり


 ギラギラと輝く太陽。家を出た時よりもさらに強くなっている。

 

 優は額に汗をうかべ、持参していた冷却スプレーをかける。

 

 ひんやりと首が冷えていくのがわかる。

 

 「ん、あぁ〜涼っしぃ〜」

 

 妙に艶っぽく声を出してしまったが、それほどまでに暑いのだ。

 

 「待ってよぉおおおおおお!!!」

 

 気持ちよさに浸っていると、カレンが足早にやってくる。

 

 「ぜぇ、ぜぇ。お、置いていくなんて……ひどいって……ぜぇ、ぜえ。」

 

 肩で呼吸をしながら、カレンは息を切らしている。

 

 よく見ると手には大きな袋をぶら下げており、中には大量のアイスと飲み物が見える。

 

 急いできたように演出しただけで、ゆっくり買い物をしてきたようだ。

 

 なにせ、今優がいる場所は大学の入口を少し出たところだ。

 

 大方学内で何か買ってきたのだろう。

 

 併設されているコンビニの袋だ。

 

 「玉緒先生と話してたじゃない。だから邪魔しないようにって……で、上手く話せたの?」

 

 「そりゃもうバッチリ!優みたいにテンパって早口になってたりしないよ!」

 

 「……ぐぬぬ。そうだね、私はかなり緊張してたかも。」

 

 「優はいつもだけどね。」

 

 「え?」

 「え?」

 

 二人は顔を見合せてそのまま帰路に着く。

 

 「ところでそのアイス食べないの?溶けるよ?」

 

 「大丈夫!持ってきた保冷剤ぶち込んであるから!」

 

 「え?家で食べるの?」

 

 「ううん。優の家。」

 

 「はい?」

 

 「ん?」

 

 「私の家寮だけど。」

 

 「うん、知ってるよ?だから人数分のアイス。」

 

 「えぇぇ。」

 

 露骨に嫌そう顔を浮かべる優。

 

 対称的に笑みを浮かべ期待する眼差しのカレン。

 

 「はい、わかりましたよ。」

 

 「イヤッフゥううう!!!!」

 

 根負けし、優は折れてみせる。

 

 カレンは大歓喜のようで飛び上がり声を上げていた。

 

 ーーーーーー。

 

 「あ〜。シンゴの家は涼しいわ〜」

 

 ユリは天野のベッドに横になり、クーラーを全開にして浴びている。

 

 「あの、なにしてんの。ユリ。出掛けないの?」

 

 天野は髪を整え、左耳にイヤリングをし、黒の薄いジャケットと白いシャツを合わせたコーデで玄関に立っている。

 

 「だって、暑いんだもん。」

 

 「もう2時間もそれじゃないか。家でては戻ってきて。せっかくお洒落したのに。」

 

 天野は残念そうにユリの隣に座る。

 

 ユリも右耳にイヤリングをしており、天野と同じ装飾がなされている。

 

 ユリはフリフリのスカートに白いロングシャツを来ており所々透けるようなデザインで色気を感じさせる。

 

 ユリと天野は現在高校二年。

 

 2人とも1年の頃から生徒会役員をこなし、現在も役員のメンバーだ。

 

 学内でも一緒。学外でもこうして一緒にいる。

 

 だが、明確に付き合っている訳では無い。

 

 誰がどうみたって、交際しているのだ。

 

 ちなみに天野もユリも裏の妖怪関連のことでお金を得ている。そのため、天野は一人暮らし、ユリは寮ぐらしとなっている。

 

 天野の場合は両親が早い段階で病死しているため多額の財産を持っていると言うのもあるが。

 

 「ユリ、さすがに無防備過ぎない?僕も男の子なんだけど?」

 

 天野は横になっているユリの顔を横に手を付き、顔を近づける。

 

 「シンゴなら、いいよ?」

 

 ユリはイタズラな笑みを向ける。どうせ手出できないでしょ?と言いたげだ。

 

 「………っ。」

 

 天野は視線を逸らし、ユリから離れる。

 

 「意気地無し。」

 

 ユリは起き上がり、そっと後ろから天野に抱きつく。

 

 「いいって言ってるじゃない。」

 

 「………。良くないよ、こういうのは。」

 

 天野はユリのことが大切すぎて手を出せないのだ。

 

 二人は奇妙な関係を続けている。

 

 両思いであるはずなのに、二人は進めずにいた。

 

 ユリは後ろから天野の顔を触り、自分の方へと向かせ、強引に唇を重ねる。

 

 「……これぐらいいいでしょ?私は待ってられない。」

 

 ユリは顔を真っ赤に染め、もう一度横になる。

 

 勢いのまま布団を被り、蹲る。

 

 天野は放心状態で、頬を思いっきり叩く。

 

 「……痛い。」

 

 「あーもう!暑いってば!!!」

 

 ユリは大きく叫ぶのであった。

 

 そう、真夏はこれから始まるのだ。

 

 日常と混乱と運命が加速するアツイ夏は、今幕を開けようとしていた。

 

 淡い恋の行方も残された出会いの意味も、これから先の未来も、この夏が激動であることの前触れに過ぎないのであった。

 

 ーーーーーー。

 

 「はい、ここです。」

 

 「ここ、ねえ。」

 

 カレンは鋭い眼光を寮へと向ける。

 

 「今日は5人ほど居ないけど。」

 

 「ああ、うん。いいのいいの。ハジメっていう人とソラっていう人に会いたいだけだから。」

 

 「ふーん?そう、まあいいけど。」

 

 優はなにも気に止めることなく、カレンを寮へと迎え入れるのであった。

 

 

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