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逃亡

 同盟のためにと準備が始まった。

 あまりにも急なことで王城内はあわただしくあった。

 俺は城内で新たなメニュー開発に勤しみながら料理人長にあらゆるメニューの伝授を施していくのも忘れなかった。


「まぁ、このくらいの品数があると国民も喜ぶかと思います」

「何から何までさすがです勇者様。そのような知識を一体どこで得ているのですか?」

「いやー、あはは。ただ前に経験していたことを役立てているだけですよ。じゃあ、あとは任せます。僕はあと数時間後には出はらわないといけませんので」

「わかりました」


 俺は調理場を後にして廊下を歩き進むと運よく会いたかった人物の一人に出くわすことができた。


「ミレイさん!」

「っ! 勇者殿」

「あの、ミレイさんにお願い事がありまして」

「もしや、この後のユキナ様の護衛とかの話ですか?」

「ありゃ、わかってましたか」

「なんとなくは。彼女を置いて行くつもりなんですよね?」

「ええ、危険なたびになるし敵国に行くわけですからもしも彼女を連れ添っていけば彼女に何が起こるかわかりません。特に女性ですから」

「あなたは優しい人です。でも、時にそのやさしさも傷つけることになりますよ」

「え」

「護衛の件は大丈夫です。だけど、ライブ行事のお引き継ぎはお引き受けできません」

「な、なんで!?」

「それはしっかりと本人と話すべきかと存じます。では、私はまだ忙しいのでこれで」


 そう言われてそのまま俺は呆けたまま彼女の背中を見送ってしまう。

 慌てて呼び止めようとしたがミレイさんの何か思うあの表情に呼び止めることを躊躇した。


「雪菜を探すか」


 俺はそう決意をすると城を慌てるように飛び出した。


 *******


 私は今日も一人で出来上がったばかりのステージで民間人へと歌を届けていた。

 彼らは各々、盛り上がって作業を行い続ける者もいれば歌を聞きながらあのオタクの彼のようにブレードを振っている人たちであふれていた。

 今日も大盛況である。

 周囲を観察して人が一気に多いのが一目で把握できた。

 民間人の中にはしっかりと傭兵や冒険者までもが混じっている。

 この国の変化だ。

 今まで民間人との境界を保っていた彼らは歌や彼の計画でそれを通り超えて民間人と接して共に食事して共に私の歌を歌いながら楽しんでいる。

 時に真面目に作業にも取り組んでいた。

 国の変化を見て思うのはいつだって彼の顔だ。

 そんな彼はもう、この国から離れてしまう。

 つい数時間前に言われたことを思い出す。


『え、この国から離れて他国に同盟って本気だったんですか?』

『本気も何も最初からそのつもり意外になかった。だから、この後のこの国での活動はすべて雪菜に任せたい』

『ちょっと待ってよそれって』

『王女、同盟したいので何か行く際に必要なものをそろえてもらえるとたすかります』

『急すぎますわよ。それにドリュウも用意できていませんわ!』

『ああ、なんかそのような生物の話がありましたね』

『ありましたねって言うかそれがないと国を渡れませんわよ!』


 その後の言葉を言う前に彼は王女と同盟の話を進めてしまった。

 私はあまりにもショックで同時に腹が立った。


『えっと、雪菜さんごめんなさい話を切って。何か言いましたか?』


 彼が後から聞いてきて私はおもわず苛立ちでそっぽを向いてしまった。

 今に思うとあの行動が最後になってしまうかもしれないのに。


「本当に馬鹿よ私」

「雪菜さーん!」


 呼び掛ける声がしてステージ上から降りた私は振り返ると彼が走ってこちらに向かってきていた。


(え、なんで彼が来ているの?)


 私は何か渦巻く感情が思わず彼からの逃亡という形が身体を動かしてしまう。


「え、ちょっと!」


 一心不乱に足を動かした。


(今はまともにカイムと話せないわよ!)

 

前回の更新からだいぶ日時が会いまして申し訳ございません。

本作品は、作者の都合もありまして本日から週1更新とさせていただきたく思っております。申し訳ございません。


次の更新は来週のどこかでの予定をしていますが都合により少々遅くなることがあります。

その際はご理解をお願いします。


また、少しでも本作品を楽しんでいただけましたらブックマークなどをよろしくお願いします。


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