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気持ちの衝突

 謁見の交渉ができて早々に王女から部屋で待つようにと指示を受けた。

 部屋へと向かう道中の廊下で俺は雪菜に怒鳴られていた。


「まったく、信じられない。頭は私を信用していなかったの? 最初から計画の中にあったなんて」

「本当にすみません。この件はなるべくこの世の中の冒険者や傭兵の扱いを知るために行いたかったので誰にも話したくなかったんだ」

「こんなことが最初から作戦の中だったのは驚いたわよ。しかも、謁見って危険しかないのよ!」

「あー、あはは」

「何が可笑しいの!?」


 憧れで好きなアイドルに怒られるのも悪くはなかったが思いのほか騎士たちや城内に雇われてる下官の注目を集めていた。


「あの、このことについてここでこれ以上口論はまずいし一度俺の部屋へ行かない?」

「え……ちょっと、それって」

「うん?」


 一瞬彼女が顔を真っ赤にして戸惑う様子を見せた。

 俺はなんで動揺するのかわからずしばし考えてわかった。


「いやいや、飛躍しすぎ!? そんなこと全く思ってない!」


 彼女の勘違いの要因を察して全力否定するが彼女はより怒りを増した。


「え」


 彼女の平手打ちを受けて俺は尻餅をつくと彼女はどんどんと先へと進んでいく。


「た、雪菜どこに!」

 

 芸名を言いかけて言い直しながら慌てて追いかける。


「あなたの部屋に行くんでしょ!」


 ひりつく頬を抑えながら彼女の平手の意味が分からず困惑する。


「女ってわからない」


********


 慌てて彼女の後に続いて部屋へと戻った。

 自室へと戻って早々に雪菜はリビングのソファに腰を下ろす。

 俺は事務椅子に腰を下ろし彼女の後ろを窺う。


(ああ、後ろ姿もかわいいなぁ)


 なんてくだらない妄想をしていると、彼女が振り返る。


「ねえ」

「はい!」

「私たちが同じ境遇であることを理解してる?」

「ええ、もちろん」

「だったら、あなたが考える作戦に私は全力で答えたい。あなたは私のマネージャーでもあるんだよね?」

「そうですね」

「それなら、作戦の全容を説明できない?」

「えっと」


 俺は席を立って部屋のあらゆる箇所を確認した。


「なにしてんの?」

「盗聴魔法とか仕掛けられていないかと確認を……」

「注意深いわね」

「いや、もしもなんかあったらまずいし」

「はぁ、もういい。そこまでする必要があるくらいの作戦なのだったら聞かない」

「え……でも」

「ただ、お願い。私を信用しているなら私をのことを常にそばに居させて」


 俺はしばし、困惑してしばらく沈黙してしまう。

 彼女が席を立ち、部屋から出ていこうとした。

 その際に彼女の瞳に涙が浮かんでいたのを確認する。

 俺は思わずその手を掴んでいた。


「ごめんなさい! 今のは別に否定をしたわけじゃないんです!」

「離して。あなたはこの世界でうまくやればいい。私はたった一人で寂しく回りに振り回されながらいるしかない。帰る場所もなくって居場所もない。そんな私は……私は……」

「俺は決してあなたを見捨てるわけじゃない! 俺だってできるなら帰りたい! でも、帰る場所が見つからないならこの世界でもしもの可能性を考慮して長居できる環境も作るそういう話をしましたよね」

「……急に何でその話をして」

「俺はできるなら、あなたとこの世界で幸せに一緒にいたいと思ってる。同じ境遇者だからじゃないあなただから」


 俺の真摯な心で訴えた言葉に彼女が顔を真っ赤に染めた。

 戸惑うように俺の手を振り払いたじろいで壁際に下がっていく。

 近くの棚に激突し棚の上にあったものが落下した。

 それが雪菜の頭頂部へと迫る。


「あぶない!」


 おもわず彼女のほうへと走って押し倒した。

 割れる壷のようなもの。

 なぜ、そんなものがあるのかは謎だった。

 俺は安心したが手に妙な柔らかい感触を感じた。

 ゆっくりと手の先を見ると大好きなアイドルの胸を俺は揉みしだいている事実に気付いた。


「あ、いや、これは……」


 彼女はというと顔をゆでだこのように真っ赤にする。

 俺の股間へと強烈な衝撃と痛覚が走った。

 彼女の蹴りが入ったのだとわかった。


「っ~」


 タイミングがいいのか悪いのか部屋の扉が開かれて騎士団長が顔をのぞかせて倒れた俺と種村さんを見て首を傾げた。


「えっと、謁見の移動の迎えに来たのですがどうかなされたのですか?」

「いいえ、ちょっとした事故があっただけ。気にしないで」


 この時の俺は涙を浮かべながら何も答えられなかった。


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