四の五の抜かさず脱げやゴラァ!!
プレイヤー名:ドルフィン
レベル:28
職業:戦士
所持金:12800ルクス
HP(体力):515
MP(魔力):170
STR(筋力):35(+5)
DEX(器用さ):22
VIT(耐久):65(+5)
AGI(敏捷):25
INT(賢さ):24
LUC(運):20
スキル
☆揉め事専門
突進 LV4
透明盾 LV4
連打激 LV3
鍛冶職人 LV3
スローイングファイト LV1
暴走の法 LV1
装備
左:大戦死の長剣
右:大戦死の盾
胴:大戦死の鎧
腕:大戦死の腕甲
足:大戦死の脚甲
アクセサリー:☆大戦死のお守り
ボクは、赤髪のプレイヤーのステータスを視てニヤリと笑う。
「打って出よう」
「は!?」
意表を突かれた彼は、口をあんぐりと開ける。
ボクは、改めてTIPSを視て、各スキルの能力を把握する。完璧な策を思いついて、笑みを浮かべざるを得なかった。
「い、言っておくが、オレはあんたよりは強いとは思うが、ビギ狩りをしてるようなプレイヤー共を相手にできるほどの戦力はないぞ。打って出たところで、返り討ちに遭うのが関の山だ」
なんだこの装備。『大戦死』って、絶対に誤字でしょ。正しくは『大戦士』じゃないんですかね。大戦死のお守りって、自殺願望の具現化だろ。
「安心してよ、ドルフィンくん。はなから、君に期待なんてしてないから。人助けに邁進するその姿勢、このクソゲーに向いてないからもうやめなさい」
「たしかに、向いていないかも。
あんたに言われると、なんだか納得するよ」
クソゲー玄人みたいな取り扱いやめて。
「ドルフィンくんの強さは関係ない。使うのは、このスキルだけだよ」
「……『突進』?」
近くにいた初心者が、叫びながら突進していき、両脚を吹き飛ばされる。転がってきた上半身、虚ろな瞳と目が合って、ドルフィンくんは身震いする。
「おいおい、ああなりたいのか?」
「お目々を開けて、スキル説明を視てみろ♡」
【突進】
習得条件:戦士レベル5
リキャストタイム:10秒
効果時間:対象にぶつかるまで
最大レベル:10
説明:対象にぶつかるまで、移動速度が200%UP状態で直線上に進み続ける。突進時には、透明盾が自動発動される。
「いやいやいや! 無理だって! 透明盾は、自分のHP✕120%の不可視の盾を張るスキルだ! その程度の盾を張ったところで、あの人数の長弓の射手に数秒で剥がされる!」
「それは問題ない。ボクに策がある。問題なのは、移動速度の方だ。
このゲームにおける移動速度は、AGI(敏捷)が関係していると考えて相違ないか?」
「相違ないが……なにするつもりだ?」
無言で、ボクは、装備を外す。革のシャツが地面に落ちた瞬間、自身のAGIが上昇して、ほくそ笑む。
「……脱げ」
「は!?」
ボクは、ドルフィンくんの鎧に手をかける。
「脱ぐんだ、今直ぐ!! 早くしてっ!!」
「なんなの!? なに、その迫真の声音!? こわいこわいこわい!!」
唐突に迫ったせいで、警戒させてしまったらしい。北風と太陽、無理矢理にではなく、搦め手で脱衣を迫ることにした。
「必要なの……お願い、ボクのために脱いで……」
潤む瞳で彼を見上げて、萌え声で訴えかける。
頬を染めて、うっと呻いた彼だったが、もじもじとしながらつぶやく。
「いや……でも……」
「良いから、四の五の抜かさず脱げやゴラァ!!」
ボクは、興奮で震える指で、ドルフィンくんの鎧に手をかける。
ガチャガチャと音を立てながら、ドルフィンくんは抵抗をして、ボクは体重をかけて彼のことを押し倒す。
「この下に詰まってんだろうが!! ぎっしり、詰まってんだろうがっ!! 引き締まった身が、たっぷり、詰まってんだろうがよォ!!」
「いやぁあああああああああああああああああああああ!! やめてぇええええええええええええええええええええ!!」
大量の大文字コメントが、ボクの視界を埋め尽くす。
『美少女が、ガチムチの男を襲ってる……』
『こ の 世 の 終 わ り』
『早く!! 早く、脱がして頂戴!! この男の筋肉が視たいわ!!(お嬢様)』
『悲鳴が、野太すぎる。もっと、カワイイ声上げて』
『上半身の鎧だけ脱がしてもらえませんか? 友人が危篤で、どうしても必要なんです。お願いします』
しかし、ドルフィンくんばっかり注目されて癪だな。このKAWAIIミナトちゃんのサービスシーンも魅せてあげますか。
「……ちらっ」
ボクが、インナーの肩紐をズラすと、多くのコメントが寄せられる。
『は?(マジ切れ)』
『そういうの、いいから……(ため息)』
『サボってないで、とっとと脱がせろよ』
『ファイナル・エンドから逃げるな』
視聴者、○してぇ~!(笑顔)
仕方ないので、リクエストに応じて、ドルフィンくんを脱がし終える。ものの見事に、半裸になった彼は、鍛え上げられた胸筋を恥ずかしそうに両手で隠して、視聴者からの人気を上げていた。
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! きたぁああああああああああああああああ!!』
『何カップですか?』
『This is Only One』
『えぇ乳、しとるやんけ……』
『ミナトちゃん、退いて。視えないから』
なんで、ボクの視聴者、狂人しかいないの……?
気を取り直して、ボクは、ドルフィンくんに向き直る。
「さて」
インナー姿のボクは、半裸のドルフィンくんに、熱い目線を送る。
「やろっか!」
「なにを!?」
大量のスパチャ(リクエスト)が飛んできて、ボクはにんまりと笑った。