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クソゲー配信で、大人気Vtuberになってもいいんですかっ!?  作者: 端桜了/とまとすぱげてぃ
第二章 なんで、クソゲーなんてやるんですか?
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ソシャゲプレイヤーの脳は、カプセルで出来ている

「ファッション・クソゲ女が、配信を始めたようですね」


 ボクと同じタイミングで、通知を受け取った豚浪士ソーニャちゃんがつぶやく。


「どうしますか、あるじ殿?」

「とりあえず、ガチャ引きたい」


 お泊り会の夕食で飲んだ『灼熱・スプリンクラー』……ゲーマー御用達のエナジードリンクは、ファイナル・エンドとタイアップ企画を行っており、1本買うごとにガチャが引けてゲーム内アイテムが貰える。


 ボクは、数日前にも1本飲み干しており、計2枚の景品引き換え用IDコードを持っていた。


「でしたら、一度、住宅領域(ハウジング・エリア)にまで行きましょうか。アレは、自宅や路上に置ける家具が当たるガチャなので」

「頭悪いくらいに、インフレしたガチャ武器とか貰えないの?」

「頭おかしいくらいに、デフレしたエナジードリンクが飲めますよ」


 灼熱・スプリンクラーが不味すぎて、叩き売られてるだけですよね?(特典なしであれば、1本5円くらいで買える)


「では、主殿、行きましょ――」

「ごめん」


 歩き出した豚浪士トンローシは、立ち止まったままのボクへと振り返る。その場で立ち尽くしていたボクは、涙を流しながら微笑んだ。


「ボクは、ココまでだ」

「ど、どういう意――ぁあ!? 首から下げてる戦士クソの証ぃ!! なぜ、そんな呪物をぶら下げて、我が物顔で生きてられるんですかっ!? 首を吊るロープがなかったんですかっ!? 舌を噛み切れば良かったのに!!」


 RPGではおなじみの『戦士』に転職しただけで、熱心な自殺教唆を受けられるのはファイナル・エンドだけ♡






【大戦死のお守り】

 効果:極稀に、死を免れる

 重量:99999

 説明:たったひとりで、モンスターを万単位で葬り去った大戦士が身に付けていたお守り。戦士たちの誇りの証であり、戦士である限りは、コレを外すことは出来ない。






 そう、ボクは、御心・ファッキン・妖華に騙されて、戦士とかいうクソ職へと転職してしまった。


 外すことの出来ない職業専用装備『大戦死のお守り』……その余りある重量で、地球自縛テラ・ボンデージを喰らっていた。


「ごめん、ガチャの前に転職して来ても良い?」

「無理です」


 ボクは、微笑したまま首を傾げた。


「ファイナル・エンドには、職業レベルが存在しています。転職した後は、最低でも、職業レベルが5になるまでは転職不可能できない」

「なら、レベルを上げ――」

都市領域シティ・エリアの外は、主殿を敵視している妖華・ファンと畜生集団ミナト・ファンがうようよしていてお祭り騒ぎです。

 基本的に、モンスター出現ポップする領域エリアは、PVP領域エリア……つまり、主殿を○したい連中の溜まり場。

 主殿はレベル5、一度でもレベル5に達したプレイヤーにはデスペナルティが付与されるので、死ねば死ぬほどレベルがマイナスになる」


 豚浪士トンローシは、冷や汗を流しながら顔を上げる。


「私の予想では、10時間レベル上げをした後の主殿のレベルは……-100、いや、-200はかたい」

「どれだけの殺意をめれば、そこまで楽々レベルが下げられるんだよ♡ 小数点以下の速度で死に続けてるだろ♡」


 笑いかけると、豚浪士トンローシもニコリと笑った。


「ミナト・ファンの掲示板では、主殿のレベルを効率的に下げる方法論を大学教授やらが考案し、既に検証も開始されていますからね」

「愛憎の入り乱れ方が、歴史に残るレベル♡

 それじゃあ、ボク、御心・ファッキン・妖華の件の片が付くまで戦士クソのままってこと!? 常に配信耐久を強いられる視聴者リスナーの身にもなってみ――アイツらの楽しそうな笑顔が目に浮かんじゃぅうん!!」


 考え込んでいた豚浪士トンローシは、ふと顔を上げる。


「とりあえず、旅行鞄ハンデでいきましょう」

「は? なにが?」

「戦士の運び方のひとつです。主殿のように戦士ゴミになる初心者ビギナーが大半なので、大いなる先達者(クソゲ・スターター)たちは、戦士をモノとして扱うことを考え出しました。

 戦士ゴミを片手掴みで運ぶ『旅行鞄ハンデ』、数人で担ぎ上げる『神輿わっしょい』、幾人かで受け渡す『ゴミリレー』、大勢で投げ渡しを連続で行う高難易度テクニック『当選確実ロシアン・トウシンジサツ』あたりが一般的ポピュラーですね」


 どこの世界で一般的なのか言ってみろ(A.ファイナル・エンド)。


「では、主殿、涅槃仏の格好になってもらえますか?」

「もう嫌だぁ!! 涅槃仏なんて言葉ワードが、MMO世界で当然のように使われて、相手に伝わると思い込んでるその意識が嫌だぁ!!」


 地面に横たわったボクは、肘をついて手のひらで頭を支える。ゆっくりと目を閉じて、リラックスした体勢で待ち受ける。


「…………」

「すごい喚いてた癖に、秒で順応するのこわぁ……」


 豚浪士トンローシは、ボクの頭と肘の間に出来た隙間に自分の手を通し、くるりと戦士ボクを反転させて持ち上げる。

 

 その途端、ボクの頭の後ろから、七色の後光が差し始める。


「こうすると、持ち上げているプレイヤーは、戦士の重力の影響を受けなくなるんですよ」

「どういうソースコード書いてたら、涅槃仏で重量0とかいう発想に陥るのか言ってみろや!! ゲーミングPCみてぇな後光差してんじゃねぇぞクソがっ!!」


 そのまま、ボクは、住宅領域ハウジング・エリアへと連れて行かれる(道中、ボクみたいに、真顔で運ばれている七色遊戯戦士(ゲーミングPC)とたくさんすれ違った)。


 住宅領域ハウジング・エリアでは、ファイナル・エンドとは思えないくらいに平和な光景が広がっている。


 あいも変わらず、個性的な家々が立ち並ぶ中に、巨大なガチャガチャがそびえ立っていた。なぜか、周囲には人影が一切ないのが恐ろしい。


 早速、IDコードを読み込ませると、ガチャガチャのレバーが自動的に回される。


「なんか、こういうの幼心に戻ってワクワ――」


 ガコドゴォッ!!


 凄まじい勢いで射出されたカプセルによって、ボクの上半身が消し飛ばされて、目の前の景色が真っ暗になる。


「…………」


 死亡演出が終了して、住宅領域ハウジング・エリアで復帰する。






 プレイヤー名:ミナト

 レベル:4

 職業:戦士 LV1

 所持金:800ルクス

 HP(体力):110

 MP(魔力):8

 STR(筋力):6(+5)

 DEX(器用さ):10

 VIT(耐久):0(+5)

 AGI(敏捷):25

 INT(賢さ):0

 LUC(運):15


 スキル

 ☆荒事専門

 ジャストガード

 突進 LV1


 装備

 左:粗野な大剣

 右:粗野な大剣

 胴:幻影の革鎧

 腕:黒鱗手袋ブラックスケイル

 足:薬液帯革ポーションベルト

 アクセサリー:☆大戦死のお守り






 当然のように、デスペナルティを喰らってレベルが下がっていた。


「主殿……」


 驚愕の面持ちで、豚浪士トンローシはボクを見つめる。


「なぜ、避けなかっ――」


 ガコドゴォッ!!


 再射出されたカプセルで、豚浪士トンローシは跡形もなく消え失せる。


「…………」

「どうした♡ 避けないのか♡」


 二枚のIDコードを読み込ませた結果、ボクが手に入れたのは、RとLの巨大スピーカーだった。






【スピーカー(大) R&L】

 説明:好きな音楽を周囲に流すことが出来る。音量調節機能搭載。他の人の迷惑にならないように音量を絞って使ってね。






「さて、主殿、御心・ファッキン・妖華についてはどうしますか……ヤツは、公式Vtuber、配信中は無敵プロテクトがかかりますし、都市領域シティ・エリアから動かさなければ、殺すことすらも出来ませんよ」

「安心して♡」


 ガチャを引いて満足したボクは、妖華の配信を眺めながら微笑む。


殺人方程式アイディアが溢れてとまらないから♡」


 御心・ファッキン・妖華は、ゆっくりと、住宅領域(ハウジング・エリア)にまで向かってきていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人を物とする逆転の発送(発想)流石です! 私も可愛い女の子に運ばれるなら戦死に転職します♥️ ソーニャちゃんミナト君に触って興奮しませんか?(頭)大丈夫ですか? [気になる点] ガチャは…
[一言] 七色遊戯戦士状態のミナトを「うっかり」ファッキンの上から落としてびっくりして「うっかり」七色遊戯戦士状態を解除しちゃったら、まあしゃーないですね ついでに翼をくださいとか大音量で流しましょう…
[一言] ゲーミングPCみたいな後光のとこは吹いた笑 次も楽しみに待ってます。
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