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クソゲー配信で、大人気Vtuberになってもいいんですかっ!?  作者: 端桜了/とまとすぱげてぃ
第二章 なんで、クソゲーなんてやるんですか?
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親の顔より視たクソゲ

「わざとだね?」

「…………」

「わざとだねぇ!!」


 配信を止めた後――ボクが詰め寄ると、豚浪士ソーニャちゃんは、そっぽを向いて口笛を吹いた。


「おかしいとは思ってたんだよ! なんだか、煽ってんなぁコイツってさぁ!! 今まで、ボクの存在を把握していても、声はかけてこなかったのに、急に接触してくるのも疑問に思ったし!! 最初から、このコラボ配信でボクを怒らせて、御心みこころ・ファッキン・妖華あやかと敵対させるつもりだったんでしょ!!」

「さすがは、あるじ殿」


 苦笑して、彼女は、両手を広げる。


「その慧眼の通り、先程のコラボ配信は、あのファッション・クソゲ女を陥れるための初手。必要な過程プロセスですよ」

「あのね、豚浪士トンローシ、ボクは彼女と争うつもりなんてない。好きに言わせておけば良いんだよ。いちいち、他人の悪口なんか気にしてたら、9mmパラベラムが何発あっても足らないでしょ?」

「悪口くらいで、他人を撃ち殺すのが前提に立っているのはさておき」


 個性豊かな家屋に囲まれた空間エリアの中心で、豚浪士トンローシは、意味ありげな笑みを浮かべた。


「あの女は生かしておけません。今は路傍ろぼうの石でも、いずれは手枷足枷、目の上のたんこぶと成り得ましょう。

 現在いま、叩くべきです」

「アレだけのことやっておきながら、まともな軍師面してんじゃねぇぞ♡」


 ボクは、ため息を吐いて、彼女に背を向ける。


「申し訳ないけど、ボクは、そういう争い事は苦手なんだよ。給食で残ったデザート争奪戦には手出しせず、そっと、下剤を忍ばせるような奥ゆかしさなんだ」

「単純に、闘争心よりも殺意が上回っただけの話では?」

「ごめんね、ボクはパス♡ やりたければ、勝手にひとりでやってね~♡」


 後ろ手を振りながら歩き出すと、彼女は、ニヤリとほくそ笑む。


「貴女は、クソゲーから産まれた女性だ……言うなれば、クソサーの姫……呼吸するようにして、クソゲーをプレイし続ける人間……世間一般の神ゲーを物足りないと評して、クソゲーをクソクソ言いながら遊び続ける狂兵つわもの……宿命からは逃げられない……いずれ、貴女は、必ず産みの親(ファイナル・エンド)に戻ってくる……」

「言っていいことと悪いことの区別くらいつけようか? 誹謗中傷で訴えて、校内放送で『ソーニャ・スカトレフは、ファイナル・エンドをプレイしてます』って垂れ流すよ? 友人という友人が、根こそぎ、目の前からかき消えるからな?」


 愉しげに、豚浪士トンローシは笑い続ける。


「主殿、入れ替わりの激しかったファイナル・エンド公式Vtuberは、ココ数年間、一度も代替えが起きていないのですよ。

 その意味は、おわかりなのでは?」


 その不気味さに身震いしたボクは、早足でその場から退散した。





「おかしくない?」


 豚浪士トンローシと別れて、自分の能力値ステータスを視たボクは、思わず声を上げていた。






【レベル5】

 プレイヤー名:ミナト

 レベル:5

 職業:素人

 所持金:800ルクス

 HP(体力):1

 MP(魔力):8

 STR(筋力):6

 DEX(器用さ):10

 VIT(耐久):0

 AGI(敏捷):25

 INT(賢さ):0

 LUC(運):20


 スキル

 ☆なにが出るかな?

 ジャストガード


 装備

 左:なし

 右:木製の短剣

 胴:革のシャツ

 腕:革の腕甲

 足:革のズボン

 アクセサリー:なし






 ヤドカリをぶち殺して得た経験値(EXP)によって、レベル1からレベル5に上がっているのはめでたい。確かに、おめでたい。こんなクソゲーで、レベル5まで成長しているボクは、現実世界でならレベル9999999くらいはある。


 だが――


「なんで、HPが1のままなの……?」


 ボクのHPは、1のままだった。


「どうして、賢さ(INT)が0のままなの……?」


 相変わらず、チンパンジー扱いだった。


「上がってるの(LUCK)だけじゃねぇかっ!! どこをどうレベルアップしたら、(LUCK)しか上がらねぇんだよっ!! クソゲーをプレイすればするほど上がるのは不運(BAD LUCK)だろうがっ!! 常識を知れや、このクソゲーがっ!!」


 さすがに、おかしいと感じたボクは、能力値ステータスを注意深く観察してみる。


 そして、スキル欄に原因ソレを見つけた。






【☆なにがでるかな?】


レベルアップ時に得た能力値ポイントを、能力値ステータスに自動的に振り分ける。

(大人おとなひと一緒いっしょんでね)






「…………」


 ボクは、震える手を押さえつけながら深呼――


「死ねやこのクソゲーがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!! 初期職に、クソみてぇなスキルこびりつけて、満足しきってんじゃえぇぞカスボケがよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 我慢できずに、雄叫びを上げながら、壁に拳を叩きつける。


 周囲にいた人たちが、びくりと反応を示して、ひそひそ話をしながら立ち去っていった。


 ――大人おとなひと一緒いっしょんでね


 ボクは、ココまで、ふざけた注意書きを視たことがない。


 ――大人おとなひと一緒いっしょんでね


 この一文だけで、圧倒的なクソ力を感じられる。


 果てのない憤怒を超えた先にあるのは、絶望に等しい脱力感だった。敵わない。ボクは、今、この注意書きをせようと思った開発者に対し、雲上の神の如き畏怖と恐れを感じている。


 はじめてだよ。


 ボクは、今、はじめて神を信じて――殺そうとしている。


 脳の血管がブチ切れそうになる感覚を覚えるのは、初めてこのクソゲーにログインしてから何度目のことなのだろうか? そろそろ、死亡保険ファイナル・エンドが必要になってきた。


 ――大人おとなひと一緒いっしょんでね


 この注意書きからして、能力値のランダム振り分けは、MMORPGに不慣れな子供に対しての配慮らしい。全世界の子供たちの脳を破壊することが、このクソゲーの本懐であると聞かされても納得する。


 たぶん、クリスマスに親がファイナル・エンドを買ってきたことで、発生している不慮の事故が全世界に存在している筈だ。間違いない。このゲームは、殺人に用いられている。少なくとも、人間ボクの心は殺した。


「…………」


 言葉が、出てこない。


 時間を返せ。森を燃やして、ヤドカリを虐殺した楽しい一時を返せ。頭の中で、諸葛亮孔明が『罠です(笑)』とか笑っとるわ。


 思わず、ボクは、その場に座り込む。


「あの~!」


 呆然と座り込んでいると、急に声をかけられた。


 顔を上げると、見覚えのある姿。


「あ、やっぱり!」


 特徴的なピンク色の髪とツインテール――


「ミナトちゃんじゃん! やっほ~!」


 チャンネル登録者数120万人、ファイナル・エンド公式Vtuber……御心・ファッキン・妖華がボクの前に立っていた。

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― 新着の感想 ―
未成年者にしか付かないスキルがバグで付いたのか、最初から心理テストでマズイ結果が出てたのか。 あ、これクソゲーだったわ。
[良い点] 死亡保険(ファイナルエンド) ミナトのツッコミに毎回笑います [気になる点] 先生、ステータスのVIT(耐久)が見当たりません!
[良い点] うわぁ [気になる点] うひぃ [一言] うひゃあ ところで…クソゲーから逃げようとか考えてないよな?クソゲーから逃げるなよ? …頭ファイナルエンドだし逃げないか。 ところで…なーにの…
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