表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クソゲー配信で、大人気Vtuberになってもいいんですかっ!?  作者: 端桜了/とまとすぱげてぃ
第二章 なんで、クソゲーなんてやるんですか?
14/141

都市国家 エフェンシア

 都市国家 エフェンシア――ファイナル・エンド世界で、最も巨大な都市領域シティ・エリアである。


 ファイナル・エンドは、蜂の巣状に領域エリアが分けられている。


 都市領域シティ・エリアは、プレイヤー同士の交流や買い物、装備の整備やハウジングといった諸々の要素を楽しむための領域エリアだ。モンスターの立ち入りは禁じられており、発生ポップすることもない。


 上空から俯瞰すれば、六角形を模している都市国家エフェンシアは、周囲を防壁で取り囲んでいる。六個の門が存在していて、プレイヤーは、そのいずれかの門から内部に入ることが出来る。


「いやいやいや……」


 領域地図エリア・マップを確認してみると――


「広すぎでしょ!! こんなクソゲーなのに、アクティブユーザー数が多いのは、コレが理由かっ!!」


 エフェンシアの内部は、内壁で六つの領域エリアに分割されており、そのそれぞれが異様な広さと特色をもっていた。


「ひ、人も多すぎる……しかも、全ての人の顔が安らかだ……なぜ、地獄でこんな顔ができるの……」


 第壱門(たのしい森方面から入れる)から入って直ぐに、時計塔がそびえている中央広場に出る。


 中央広場には、色とりどりの石畳が敷かれていて、煉瓦造りの建物が並び、水霊ウンディーネを象った像が置かれた噴水があった。


 設置されているベンチに座り込み、多種多様な格好をしたプレイヤーたちが、楽しげに談笑をしていた。制服ユニフォームを纏ったプレイヤーが、謎の空中戦を行っていて、青色の飛行機雲を残して消えていく。


「え、あれ、ミナトちゃん!? ミナトちゃんじゃない!?」

「うそー!! え、ホント!? 本物!?」


 街を行き交う人々に圧倒されていると、ボクのことを指して、黄色い声を上げる女性プレイヤーたちに取り囲まれる。


「え、すごーい、頭おかしいー!!」

「脳みそ、ちっちゃーい!!」

「正気とは思えなーい!!」


 褒めてるようで、褒めてないよねコレ?


 頭を撫でられたり、頬をもてあそばれたり、抱き締められたりと、ぬいぐるみ扱いされていたボクは急に手を引かれる。


あるじ殿、こちらへっ!!」


 凄まじい力――上へと、引っ張り込まれる。


 急にいざなわれたボクは、事態を把握できないまま、時計塔の頂上へと引っ張り上げられる。


 建物の壁を蹴り上げながら、ボクごと一気に上り詰めた人の正体は――愛らしい女の子だった。


 腰元まで、伸びている金色の髪の毛。


 紅玉のように艶めく瞳は、ボクのことを捉えたまま離さない。うっすらと笑みを浮かべる口元には、可愛らしい牙が生え出ている。全身を覆っている黒色のローブの背には、巨大な魔法陣が描かれていた。


「ご機嫌麗しゅう、姫。不躾ながら、貴女様をお助けに参りました」


 慇懃いんぎんに膝をついた彼女は、丁重に頭を下げる。


「……いや、誰?」


 謎の少女は、笑う。


豚浪士トンローシで――」


 ボクは、木剣を引き抜いた。


「近寄るな……♡」

「いやいやいや! 主殿、どうかお待ちを! 私は、ただ、この儚き想いをもって、貴女を助けに来ただけで! もちろん! もちろん、この想いは不要と言うのであれば、今直ぐにでも立ち去ります!!」


 豚浪士トンローシ……ボクの配信の常連で『ぶひぃ!! ぶひぃ!!(素振り)』というコメントと共に、スパチャを投げては消える魔人やべーやつだ。


 正直言って、人の配信に素振りに来ているような魔人やべーやつとは、関わり合いをもちたくない。


おぼえてはおりませんか……初心者戦争ビギナーズ・ウォーで、共に戦った時のことを」

「あっ」


 ボクは、思い出す。


 手頃なところにいたプレイヤーを盾にして、経験者ゴミどもの猛攻を防いだことを……その時に、嬉々として、ボクの盾になっていたプレイヤーがいた。


「そうです! 貴女に殺された盾です!!」

「日本昔話風に言うな♡」

「姫、いや、主殿、このエフェンシアは、なかなかに広大な領域エリア。ひとりで要点を捉えて、回り切るのはほぼ不可能。

 ココは、どうか、私をお使いください」


 ボクが考え込んでいると、コメントが目の前に表示される。


『お前が殺した盾なんだから責任とれよ』


 この放送を途中から視始めた人は、なに言ってるのかわかんないだろコレ。


「いやいや♡ みんな、よく考えてよぉ♡ みんなのアイドル、ミナトちゃんが、こんな豚野郎と行動していいの♡ 間違いなく、現実リアルでの容姿は、金髪美少女じゃなくて薄汚いおっさんだぞ♡」

『そっちのほうが良い』

『たすかる』

『JPGでください』

現実リアルコラボ、待ってます!!』

「死ね……(心からの願い)」


 なぜ、視聴者リスナーは、ボクの破滅を心から願っているのだろうか。コイツら、味方のフリした敵だろ。


「どうやら、話は決まったようで」

「決まっとらんわ!! こんな、畜生共の指示を聞いて、お前なんかとコラボできるか!! 

 豚骨の匂いがするんだよ、お前はよォ!!」

「い、いや、豚骨の匂いどころか、花の香りがすると評判で……そこまで、不安なら、一度、現実リアルでお目に……」

「かかりません♡」


 ボクは、ログアウトした。






 着替えてから、蒼色のウィッグをかぶり、街にまで足を運んだ。


 結局のところ、現実リアルに逃げれば、どんな魔人やべーやつでも手出しはできないのだ。まさか、現実リアルに現実逃避することになるとは、さすがの僕でも思いもしなかった。


豚浪士トンローシが消えてから、配信再開するかぁ……」


 ため息を吐いて、街を歩いていると――服の裾を引っ張られる。


 振り向くと、美少女が立っていた。


 有名なお嬢様学校の制服(初等科)に身を包んだ少女は、茶色のベレー帽をかぶっており、ヴァイオリンのケースを抱えていた。


 腰元まで、するりと落ちている金髪……長いまつ毛まで金色で、二文字で形容するのであれば『天使』という語句が浮かぶ。小柄な体躯と美しさが相乗を生み、繊細な小動物のような印象を受けた。


「…………」


 指先で、僕の服裾をつまんだ彼女は、顔を伏せたまま微動だにしない。


「えっと、あの……どうしたの? 迷子かな?」


 髪の隙間から、真っ赤に染まった顔が視えた。


「……です」

「え?」

「わ、私」


 彼女は、真っ赤な顔で、うつむいたままささやいた。


豚浪士トンローシ……です……」


 僕は、ぱちぱちとまばたきをしてから、天を仰いだ。


 深呼吸。


 そして、叫ぶ。


「はぁん!?」


 びくりと身じろぎをして、彼女は、恥ずかしそうに唇を噛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リアルに逃げれば大丈夫。 キャラそっくりのウィッグ&女装で家から出歩くんじゃないよ。 いや、既に家バレてたのかもしれんけど。
なんでやねん!!
[一言] 「リアルに逃げれば、どんな魔人(やべーやつ)でも手出しはできないのだ」 爆速フラグ回収乙。 …よく考えたらやばいおっさんとかじゃなくて良かったね… (短期間連投するくらいならひとつ前の米…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ